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【中里雪菜視点】#ゆきは救助隊

いつも通りの時間に目を覚ました。


今日は元々ボイトレに行って、その後美容室に行って、夜配信をしようと思ってた。



どうしたらいいのかな…。




枕元で充電していたスマホを手に取ると、太田さんと華蓮ちゃんとのグループLimeにメッセージが来ていた。




『太田:とりあえず、連絡できるようになったら連絡ください!』




私はそのメッセージを読んだ後、ベッドから身体を起こしてグループLimeに通話をかけた。




「あ、ゆきはさんおはようございます!」

「お、おはようございます! すいません、少し遅くなりました!」

「いえいえ!」

「ゆきはおっはー!」

「あ、華蓮ちゃんもおはよ」

「ゆきはさん今大丈夫ですか?」

「はい」

「とりあえず、問題が解決するまでは、外出する際は私達マネジメントの誰かが必ず一緒に行動することになりました」

「ご迷惑おかけしてすいません…」

「いえいえ! それで、今日なんだけどボイトレの予定あったじゃない?」

「はい、どうしたらいいですか?」

「もうすぐプレスリリースが発表されるので、今日は外出はやめておこうということになりました」

「そうですか…」

「不便だけどごめんね?」

「あ、いえ」

「それで、夕方頃に配信が不定期がなることを配信してもらえないかな?」

「わ、わかりました…」

「明日以降は私達付きだけど、外出できるように調整するから少しだけ待ってね」

「はい…」

「今アークさんと斎藤教授が必死に解析してるからきっと大丈夫だから!」




太田さんがそう言った言葉を聞いて、なんだか少し安心した。


昨日夜皆と話した後、きっと湯月くんは何かをお願いされたのだろう。



また助けてもらってる…。


本当に申し訳ない。


でも湯月くんが助けてくれようとしてると思うと、不思議と安心できる。




「そ、そうだったんですね…」

「はい! なので、きっと少しの辛抱だと思うから!」

「わ、わかりました! そうしたら今日は外出しないようにしますね」

「はい、それでお願いしますね。ボイトレは私から連絡しておくから! 本当、コンビニに行くだけだとしても、今は全部私達に教えてね?」

「はい、了解しました!」

「あ、今回プレスで配信者の個人名は出してないから夕方の配信では問題があってみたいな感じでお願いできる?」

「はい、了解です」

「それじゃあまた何かあったら連絡するから! よろしくお願いしますね!」




そう言われるとスマホの通話が切れた。


ふーっと息を吐きつつ、スマホをベッドに置いて私は仰向けに横になる。




皆が私の事で動いてくれている。


本当に申し訳ない。


大会の人にもなんだか迷惑をかけちゃったし…。




そんな事を思いながら私は首から下げているネックレスをつまみ上げた。



湯月くん…。


本当いつも助けてくれる。


今何をしてくれているのかは私にはわからないけど、きっとまた斜め上な方法なんだろうな。


えぇ? そんな選択肢ある?! みたいな感じなんだろうな。




そう思うと、なんだか少し可笑しくなってふふふと私は笑った。





湯月くんにも皆にも頑張ってもらってるんだし、私が頑張らないわけにはいかない!




頬をぱちんと叩いて私はパソコンを起動する。


そして、16時から『日向ゆきはよりお知らせがございます』というリマインダーを設定した。



プレスリリースも同じぐらいのタイミングで発表されたようだ。


内容としては、所属配信者への脅迫があり、現在然るべき機関と調査解決に向けて動いているというような内容だ。



リマインダーをSNSにも投稿すると、すぐに多くのコメントが付いた。




『やっぱりゆきはちゃんだったか』

『まじで許せん』

『警察動かないんじゃ』




きっと大会を見てくれていた人たちもいるだろうから、直ぐに私の事だとみんな察したようだ。



とりあえず、予約していた美容室にキャンセルの連絡をして、私はメインクラフトの素材集めを始めた。


何かやっていた方が気がまぎれる。


ボーっとしてると、あのすれ違った時のことを思いだして、悪いことばっかり考えてしまう。




まさか自分の娘がこんな事件に巻き込まれる等思っていなかった両親は、ものすごく心配して最初はバーチャル配信者やめた方がいいんじゃないかとも言い出したが、そこは直人くんと直人くんのお父さんが昨晩電話で丁寧に話してくれてなんとかなった。


しかも監視カメラを設置してくれて、警備員まで手配してくれた。


他の事務所だとどういう対応なのかはわからないが、ここまでやってくれているのは本当に感謝でしかない。




しかし、多くの視聴者さんは受け入れてくれたYukiだが、まぁそりゃ良く思わない人もいるだろうとは思ってたけど、せいぜい否定的なコメントをされて登録を外されるぐらいだと思っていた。


まさか直接行動何かしてくるなんて微塵も思ってなかった…。




yukiとして活動することの何が悪いんだろ…。


別にゆきはの配信頻度だって変わってないのに…。




あーダメだダメだ! やっぱり悪いことばっかり考えちゃう!


私はメインクラフトをやめて、OPEXを始めた。


こういう時は、他に考え事ができないOPEXの方がよさそうだ!




そうして配信外でランクマッチを行うと、試合の事で頭がいっぱいになって変な考えはなくなった。



そのまま3時間ほどOPEXをやって、夕方に配信だからと思って一旦ゲームを終了してSNSを見るとすごいことになっていた。



コメントもいっぱいきているのだが、視聴者さん達が誰がこんなことをやったんだと、コミュニティを作って情報交換しているらしい。




#ゆきは救助隊




のハッシュタグが付いてる投稿を見てみると、大会の配信アーカイブからアカウント名を引っ張り出してきて羅列していたり、そのアカウントで過去の配信のコメントがされていないかを調べてくれてるみたいだ。




皆ありがとう。


やっぱり私はこの視聴者さん達を大切にしたい。


もちろん今回の件を起こしたのも視聴者さんだけど、こうやって私の事をちゃんと受け入れてくれて応援してくれてる人達を大切にしていきたい。



そんな想いでいっぱいになり、なんだかうれしくなった。




そんなSNSの投稿を見たり、チャンネルのアクセス解析をみたりしていると、配信の時間になったので配信の準備をして、配信を始めた。





「こんゆきー! 日向ゆきはです! 皆さん急に申し訳ありません。今日は急遽大事なお知らせがあってリマインダー設定させていただきました」




『ゆきはちゃん大丈夫?』

『脅迫だけ? 何もされてない?』

『#ゆきは救助隊情報求む』




なんかそんなコメントを見ると、嬉しくて涙が出てきそうになる。




「だ、大丈夫ですよ! 本日プレスリリースも発表されましたが、少々問題が起こっておりまして…。なので、少し落ち着くまで配信が不定期になってしまいそうなんです…。本当ごめんなさい…」




『全然いいよ!』

『安全第一』

『てか、ファンかもしれないが迷惑かけるとかあり得ん』




「本当皆さんありがとうございます。私の配信は不定期にはなってしまいますが、今事務所の人たちが、一生懸命頑張ってくれているので少しだけ待っててくれると嬉しいです!」




『もちろんだよ!』

『心配しないで!』

『自分の事を考えて!』




「ただですね、日向ゆきはを辞めるつもりはないですし、Yukiの活動を辞めるつもりもありません! これだけは皆さんにお伝えさせていただきたいです」




『応援してるよ!』

『yukiの話はあまりしない方がいいのでは…』

『それでこそゆきはちゃん!』




「今日はそれだけお伝えしたくてこの場を設けさせていただきました。本当皆さんありがとうございます! 今回の件で、色々思うこともありますが、やっぱり私を支えてくれる皆さんあっての日向ゆきはですから、これからもどうぞよろしくお願いします!」




『とりあえず気を付けてね!』

『安全に』

『Vゲージ頼むぞ!』




「それでは短いですが、今日はこれだけお伝えすることになっているので、配信は終了させていただきますね。また配信できるときは、SNSでも告知しますので是非見てください! それではこれからもよろしくお願いします! とうっ!」




私はエンディングを流して、配信を終了させた。



バーチャル配信者人生で一番短い配信。


どうなっていくのかわからないこの先に不安を覚えながら、私はイヤホンを外し天井を見上げた。

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