おにぎり
一区切りついて、緊張感が抜けてしまったからか一気に眠くなってきた…。
そんなことを思いながら椅子でうとうとし出すと、勢いよく研究室のドアが開いた。
「あっくん!!!!!!!!!」
「り、りのあ、びっくりした…」
「これ着替え!!!」
莉乃愛はそういうと、トートバックを前に突き出した。
「あ、うん、ありがとう…」
「なんかわかったー?」
莉乃愛はそう聞きながら、トートバックを研究室のソファに置いた。
「あ、うん。少しだけね。これからもう少し情報集めないと」
「そっかー。頑張ってね! これ作ってきたのだよ! 何も食べてないでしょ??」
莉乃愛はそういうと、今度は自分のバックからタッパーらしきものを出してソファの前のテーブルに置いた。
「そういえばそうだった…」
そう言えば、昨日朝研究室に来てから、何も食べてないな。
言われてみれば確かに少しお腹すいたかも。
俺はそんなことを思って立ち上がり、莉乃愛の座るソファの向かいの席に座りタッパーを手に取る。
「お弁当なんてー? 作ったことないからー? 少しは大目に見てね??」
と斜め上の方を向きながら言う莉乃愛。
俺はそんな莉乃愛を見ながらタッパーを開ける。
「り、りのあ…。ありがとね?」
「うん!」
「で、でもこれは流石に食べきれないよ…?」
俺はタッパーから目線を莉乃愛に戻して言った。
いや、一面おにぎりって…。
一面ご飯でもないんだけど、タッパーにこれでもかって程にぎゅーぎゅーに敷き詰められたおにぎり…。
「えー! 頑張って作ったのに!」
「い、いや、それはありがとね…。でもこのご飯の量は俺の1週間分以上あるよきっと…」
「それはあっくんの食べる量が少ないんだよ!」
「と、とりあえず、いただきます…」
「召し上がれー! 具はねー、鮭と、たらこと、昆布があるから!」
どのおにぎりがどの具かなんて全くわからないので、とりあえず端の1つを取り出して俺は食べた。
んー…。
これは昆布か…。
「ありがとう。美味しいよ」
「え、まじー? わたしも一つ食べよーっと!」
そう言って莉乃愛は、俺がテーブルに置いたタッパーからおにぎりを一つ取り出して食べた。
「あ! これ鮭だー! わたし鮭好きなんだよねー!」
「り、りのあ朝ごはん食べてないの…?」
「え? 食べたよ?」
「…そ、そう…」
本当いつも思うけど、この細い体のどこにそんなに入るんだってぐらい食べるんだよな莉乃愛…。
そんなことを思いながら、二つ目のおにぎりを俺は手に取って食べた。
こんどはたらこだ…。
普通に美味しい。
すると研究室がノックされたので返事をすると直人が入ってきた。
「あ、りのあちゃん来てたんだ!」
「直人おっはー!」
「おお! これもしかしてりのあちゃんの手作り?!」
「そだよー!」
「一ついただきー!」
そう言うと直人はタッパーからおにぎりを取って食べた。
「うまい!! うまいよりのあちゃん!!!」
「まーじー? あっくんも美味しいって言ってくれたし、作ってきて良かった!」
「いやー、プレスリリースやら他の配信者の方々の調整で俺も今日は徹夜で食べてなかったから助かる!」
「直人も徹夜なんだ! わたしはがっつり寝た(笑)」
「あはは! それがいいよ!」
「今日は事務所で撮影することになったしー、顔色悪いわけにもいかないし!」
「りのあちゃん動画投稿頻度少し落ちてもいいよ?」
「落とさないよ! 今投稿頻度落ちたら、雪菜が気にしちゃうでしょ!」
「そ、そっか…」
直人が核心をつく莉乃愛の一言に沈黙した。
いや、本当、莉乃愛ってたまに核心をドンってついてくるんだよな…。
俺や直人がしょうがないと思えるようなときでも、これがベストじゃん?! みたいな感じで…。
「弁護士さん来てくれそう?」
俺は沈黙した直人にそう聞くと、
「あ、あぁ。多分1時間以内には来てくれる」
「監視カメラから解析した、犯人の推定画像見る?」
「あぁ、どこまでわかったんだ?」
おにぎりを食べ終えた俺はデスクに戻り、解析画像を表示して、ディスプレイを直人の方にくるっと回した。
「推定28歳~29歳。男性。身長167cmで体重82キロ。マスクとサングラスを取った感じの顔はこんな推定」
俺はそう言うともう一度クリックして、マスクとサングラスなしの画像を表示する。
いつの間にかディスプレイの目の前に直人と莉乃愛は移動していて、
「やべーな…。てかこのマスクなしのやつってどうやってつくったん?」
「んー斎藤教授の作ったapiがやってるんだけど、見えてる皮膚や筋肉から推定して、ネット上にある顔写真から近しいパーツを拾ってきて、画像加工ソフトでなんかそれっぽくつなぎ合わせた感じだね」
「いや、あっくん怖すぎでしょ…」
「俺ってか斎藤教授だと思うけど…」
「いずれにせよ、やべーよ…。解析してくれって俺が言っておきながら、まじで怖くなったわ…」
「と、とりあえず、ビル前からいなくなった後、大通りを右に行ったと考えられるから、ここら辺で歩道が映ってる監視カメラの映像を見たいんだよね」
俺はそう言いながらマップ上でカーソルを動かす。
「なるほどな…。とりあえず、俺と小平さんで目星つけてくるわ」
「了解」
「弁護士来たら連絡するわ。斎藤教授は大学?」
「あ、いや。シャワー浴びて戻ってくるって。今日は大学休むって言ってた」
「そっか。まじで感謝だな。とりあえず行ってくるわ」
「わたしも凜香さんのところ行って撮影の準備しよー!」
そう言いながら2人は出ていった。
とりあえず俺は莉乃愛の持ってきてくれた着替えに着替えて、テーブルの上のタッパーからもう一つだけおにぎりを取り出してほうばる。
半分も残ってるけど…。
とりあえずこれは夜にでも食べようかな…。
今までにおにぎり3つも食べことあっただろうか…。
こんなにご飯をいっぱい食べたのは物心ついてからない気がする。
これは鮭だな。
俺はおにぎりをモグモグしながら、斎藤教授が担当した部分のソースコードを読み勉強しだした。




