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悪い想定

盛り上がりはしたものの、ゆきはさん大丈夫かなと不安になる、第二回大会の翌日、俺はいつも通り起きて、研究室に向かった。


きっと太田さんや華蓮さんが対策を考えているだろう。


そんなことを思いながら電車を降りてエンゲージのオフィスに向かうと、ビルの玄関前が騒然としていた。


パトカーなんかも止まってる…。




え? 何事?




俺はそんな人だかりを避けて脇の方からオフィスに入ろうとすると、奥から太田さんが出てきて、




「アークさん!! 危ないかもしれないから早く入っちゃって!!」


「えぇ……?」




俺は太田さんに連れられて小走りでビルの中に入った。


そのまま研究室に連れていかれて、




「えっとね、ゆきは宛と言うかYuki宛の脅迫状みたいな物が今朝届いてたというか、ビルのドアに挟まってたの」


「まじすか?????」


「うん。アークさんはゆきはさんと結構関係強いから、今日は研究室で大人しくしてて下さいね。帰るときも必ず誰かに声かけて。エンゲージの送迎車で送りますから」


「は、はい…」




太田さんはそれだけいうと、足早に研究室を出ていった。




えぇ。


まじ?


それ流石にやばくない?




俺はなんだかそわそわした気持ちのまま、デスクに座りパソコンを起動した。


その後も、プログラムをやったり資料を見たりしているのだが、なんだか身が入らない。



雪菜さん大丈夫かな…?


連絡してみようかな…?



そんなことを思っているとノックされたので返事をすると華蓮さんが入ってきた。




「あっくん! 大変なことになった!!」


「み、みたいだね…」


「とりあえず雪菜は特に何もなくて大丈夫!」


「そ、そっか…。それならよかったよ…」


「ただちょっと、あっくんとRinoはYukiと動画で関りがあるから厳重体制になります!」


「そ、そうなんだ…」


「とりあえず…」




華蓮さんがそこまで話すと、研究室のドアが勢いよく開けられて太田さんが入ってきた。




「華蓮ちゃんヤバイ!!!!!! 今すぐ来て!!!!」


「え????」


「とにかく! アークさんは研究室から出ちゃダメ!」


「は、はい…」




太田さんは華蓮さんを連れて研究室から出ていった。


なんだろ…。


気になるけど…。


ただ、ここは事務所の人に任せるしかないよな。




俺は再び身が入らないながらもプログラムをやり始めた。



そしてそのまま夜を迎え、俺は帰るタイミングを見失い、もうこのまま徹夜でいいかもと気持ちもプログラムに向いてきたころに華蓮さんが再びやってきた。




「あっくんごめん! 遅くなった!」


「あ、うん…」


「雪菜がコンビニに行く為に外に出たら、すれ違った男の人に「Yukiをやめろ」ってボソッと言われたらしくて、雪菜の家に急遽警備会社いれたり監視カメラつけたりで忙しかった!!」


「まじ? 自宅までっていよいよ本格的にやばいじゃん」


「そうなんだよ!! だからこの後直人達と会議するから、ちょっと帰るのそれまで待ってて! りのあにはあたしから連絡してあるから!」


「あ、うん…」


「そういうことだから! あ、雪菜は全然無事だけど、しばらくは一人で外に出ちゃいけないことになってるから、暇があったら励ましてあげて!」


「了解…」




華蓮さんはそれだけ伝えてくれると、足早に研究室から出ていった。



朝、警察も来ていたし、これはもう事件だ。


Yukiと公表することによって起こりえる、最悪に近い事が起こった。


直接危害を加えられていないことだけがまだよかっただけだ。



元々想定はあった。


きっとそれは太田さんや華蓮さんもそうだろう。


しかし、雪菜さんの想いを大切にしたいから踏み切ったのだろう。


多くの視聴者さんもそれを受け入れてくれて、雪菜さんの想いも伝わって、いい方向に進んでいるかと思えた。


しかし、昨日の大会で不穏な空気が広がり、たった一人の起こした今回のことで、事態は一気に悪い方向に向かったと言っていいだろう。




俺はそんなことを思いつつ、雪菜さんが大丈夫かLimeでメッセージを送った。




『大丈夫ですか? 状況は聞きました』




するとすぐに返事が返ってきた。




『大丈夫ですよ! ただ家族にまで迷惑がかかっちゃってて…』

『そうですよね…。とりあえず雪菜さんが大丈夫ならいいのですが…』

『そうですね…。少しディスボで話しても大丈夫?』

『大丈夫ですよ』




俺は直ぐにイヤホンをつけて、ゆきはさんとのボイスチャンネルに入った。




「アークさんお疲れ様です…」


「ゆきはさん、今直人や華蓮さん達が会議してるみたいなんで心配しないでくださいね…?」


「う、うん…」


「とりあえず無事なのが良かったです」


「うん…でも……怖かった……」


「…そうですよね……」


「…どうしよう……ズッ…」


「そ、そうですね…」




かける言葉も見つからず、俺は暫くゆきはさんが鼻をすする音を聞いていた。




「はぁ…アークさんの声聞いたら、なんか少しだけ安心して涙出ちゃいました…ごめんなさい…」


「いえいえ…少しでも役に立てたのなら俺は全然いいんですけど…」


「配信どうしようかな…」


「恐らくそこら辺も直人達が話していると思いますから、その対応策を待ちましょう…」


「…そうだね……」




ダメだ。


こういう時に俺は役に立たない。


励ますってどうしたらいいんだ…。




「…ゆ、ゆきはさん…?」


「はい…」


「何か少しでも不安になったらいつでも連絡してくださいね! 24時間対応しますから!!」




俺がそう言うとゆきはさんは少し沈黙して、




「…ありがと…湯月くん…いつも本当にありがと」


「い、いえ…」


「頑張らなきゃね!! 私が決めたことだから!」


「はい! でも頑張り過ぎないでくださいね??」


「うん! あ、りのあちゃんからLimeで着信きた」


「あ、そしたら、Limeに切り替えて皆で話しますか?」


「あ、いいね! そしたらLimeに切り替えよう!」


「了解です!」




そしてディスボを抜けると、莉乃愛と雪菜さんのグループLimeが開かれ通話に応答した。




「ゆきなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!! 大丈夫???????」


「ふふふ、大丈夫だよ! 丁度アークさんと話してた時だったから、りのあちゃんもいれて皆で話そうってなって」


「あぁ、いいじゃん! 華蓮は今会議中だって言ってたから無理だねー」


「本当皆色々ありがとうだよ…」


「りのあは家?」


「そうだよー。とりあえず次連絡するまで外出禁止だってー」


「俺今研究室。そして同じく」


「え、そうなんだ…二人ともゴメン…」


「ぜーんぜんいいよ! むしろ雪菜が心配!! てか雪菜本当大丈夫???? 怪我とかしてない??????」


「う、うん。直接何かされたわけじゃないから…」


「しっかし! ゆるすまじ!!! あっくんなんとかならないの!」


「いやいや、これはもうプログラムとかでどうこうできる世界の話じゃないから…」


「だよねぇ…」


「でも、大丈夫だよ! 私も頑張らなきゃね!」


「んーでも、雪菜は普通に頑張ってるから、無理はしちゃだめだよ?」


「あ、うん…ありがと…」


「絶対だよ?」


「うん…」


「絶対に絶対に絶対だよ????」


「う、うん」


「絶対に絶対に絶対に…」


「りのあその絶対何回続くの……」




するとゆきはさんが「あはは」と笑った。




「あはは、ありがとねりのあちゃん。無理はしない! 頼るべきところは頼る!」


「そうそう!!」


「あ、いろはだ…。いろはもいれちゃおっか!」


「いいじゃんいいじゃん!」




そして暫くすると、




「菅谷先輩こんばんわー! アークさんも!」


「彩春ちゃんこんばんー! 今帰ってきたの?」


「動画撮ってて遅くなったんですけど、帰ってきたら監視カメラ付いてるし警備員立ってるしうちじゃないかと思いましたー!!!!!」


「えー…いろは連絡したじゃん…」


「ごめん! 電車の中もずっと茜と動画どうしようか話してたから見てなかった!」


「でも、それ確かにビビるわーー」


「あ、これお姉ちゃんを励ます会ですね??」


「そんな感じ??」


「参加しまーす!!!」


「あはは(笑)」


「そう言えばさー…」




こうしてそのまま、他愛もないことやこれまでの動画について4人で2時間ほどそのまま話した。


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