【中里雪菜視点】ゆきはとYuki
終わったー!!
今日はVゲージに移籍して、初めての復帰配信だった。
日中に個別で復帰配信をして、20時から配信でLiveゲージ。
初めて生で歌を歌うので緊張しっぱなしだったけど、この日の為にかなり練習してきたつもりだ。
とはいえ慣れてないので、私はまりんさんと歌う曲とリンカさんと歌う2曲だけ。
後は最後に全員で歌うが、それはもう一人の声がフォーカスされないから大丈夫だろう…。
そんな配信ライブも最後全員で歌って無事終了して、私はヘッドホンを外した。
今日は全員のアバターを動かしながら出し入れする為に、Liveゲージはスタジオからの配信になっていた。
自分の番になったらレコーディングルームみたいなところに入って歌う感じだ。
中にはアバターを人によって変えて配信画面に載せるためのエンジニアの人がいて、その人が全てやってくれるので、私達は歌うだけ。
「ゆきはちゃんおつかれ~」
「あ、まりんさんお疲れ様です!」
「いやー、Vゲージさん流石老舗だけあって、すごいスタジオ借りるね…」
「そ、そうなんですね」
「しかも小平さんもいるしびっくりしちゃった」
「あ、そう言えば、まりんさんは最初の担当小平さんだった言ってましたね!」
「そうそう! いやーでも、とりあえず皆復帰できてよかったねー」
まりんさんが皆に向かってそう言うと、皆口々に感想を言いつつ頷いた。
暫くみんなで雑談した後、解散になったので、電車に乗りながらSNSを見ると、Liveゲージがトレンド入りしていた。
緊張したけど、皆喜んでくれたみたいで頑張って本当によかった。
直人くん達も、何もないところからここまで準備するのきっと大変だったろうな…。
私がそんなことを思って家に帰り部屋に入ってしばらくすると、部屋がノックされたので返事をすると彩春が部屋に入ってきた。
「おねーちゃん良かったよー!」
「ありがとねー。すっごい疲れたよ~」
「お疲れ様! でも視聴者さんもすごい喜んでくれてたみたいでよかったじゃん!」
「うん、そうだねぇ。直人くん達はもっと大変だったと思うけど…」
「あぁ…確かに茜が、兄貴は忙殺されてるって言ってたわ(笑)」
「でもさ、すごいよね直人くん。ちゃんとここまで作り上げられるなんて」
「そりゃ頭いいからねー茜のお兄ちゃんー」
「頭いい人に対する謎理論は卒業しても変わらないんだね(笑)」
「卒業しても頭いい人は頭いいままだからね! ところでおねーちゃんさ、明日撮影でしょ?」
「うん、そうだね。明日はwiwiの撮影でりのあちゃんと一緒だよ」
「私と茜も着いて行ってもいい?」
「いいんじゃないかな? 同行者連れてきてる人もいるみたいだし。どうしたの?」
「いや、仕草とかポーズとか勉強したいんだよね!」
「へぇ?」
「いやさ、私達のチャンネル、やっぱり撮る時間があんまりなくてやっぱりショートの動画が多くなってるからさ、勉強したほうがいいかも? って茜と話しててさー」
「あぁなるほどね。一応聞いてみるよ。少し待ってて」
私はそう言うとスマホで、凜香さんと太田さんと華蓮ちゃんがいるグループLimeに連絡した。
『雪菜:明日の撮影に妹とその友達がついて行きたいと言っているのですが、いいでしょうか?』
暫くすると、
『華蓮:問題なし!(スタンプ)
と華蓮ちゃんから帰ってきた。
なんか本当新鮮。
ナチュラルに華蓮ちゃんがマネージャーさんなこの感じ…。
『雪菜:ありがとう!』
『華蓮:Liveゲージ良かったよ! お疲れ様!』
『雪菜:すごい緊張したけどね(笑)』
私はそうメッセージを送ると、私のベッドでゴロゴロしている彩春に、
「大丈夫だって」
「いえーい! 茜に伝えとくねー!」
「あ、華蓮ちゃんもいると思うけど、りのあちゃんと私のマネージャーさんだからあんまりはっちゃけちゃだめだよ?」
「わかってるー! でもいいなぁ本当。皆大集合でぇ」
「そうだね…。でもあかねいろチャンネルも調子いいみたいじゃない?」
「まぁね! リアルJK強し!!! んじゃ明日よろしくねー!」
そう言って彩春は部屋を出ていった。
明日はモデルのYukiとして、りのあちゃんと一緒にwiwiの撮影だ。
まだまだ慣れてはいないけど、りのあちゃんが一緒の時は色々と教えてもらえるし、りのあちゃんを見てるとなんか緊張もとれてくるからすごくありがたい。
あれだけ顔出しは嫌だったのに、いざやってみると別になんてことなかった。
りのあちゃんとギャップが凄いあって、雑誌の中でメリハリがついていいらしい。
こんな腕の角度しなくない??
みたいなのもあるんだけど、これがポージングと言うものなんだろう…。
前回初めてwiwiに乗った時は、お父さんとお母さんが再び喜んでいた。
やっぱり親世代はバーチャル配信者よりモデルの方がなじみがあるもんね。
でも、稼ぎはバーチャル配信者の方が凄いんだけど…。
このままYukiで動画配信もやろうかな…。
というかゆきはとYukiどうしようかな。
なんか、視聴者さんに隠し事してるみたいなの嫌なんだよね…。
学校行事の話とかを普通にしてしまうので、ヒヤヒヤするとか言われることもあるんだけど、なんか嘘偽りなく向き合いたいって気持ちがあるから、そのスタンスはバーチャル配信を始めてからずっと持ち続けてきた。
中身はYukiだよって言ってしまう?
んー…。
明日華蓮ちゃんに相談してみようかな…。
私はそんなことを思いながらお風呂に入り、今日は復活の日だからと『【雑談】Liveゲージ振り返り配信』と言うタイトルで1時間ほど配信をした。
次の日、茜ちゃんが家に来て、彩春もいれて三人で撮影現場のスタジオに向かった。
「あ、雪菜おつー!」
「りのあちゃんお疲れさまー!」
「菅谷先輩お久しぶりでーす!」
「おぉ! 彩華ちゃんと茜ちゃん久しぶり! あかねいろチャンネル見たよー!」
「あー! ありがとうございます! 私達もRinoチャンネルみてますよー」
「ありがとー!」
そうやって話していると、スタジオの奥から華蓮ちゃんが出てきた。
「おー! 彩春ちゃんに茜ちゃん!」
「三好先輩お疲れ様です!」
「今日見学するんでしょー?」
「はい!」
「んじゃこっちねー! 雪菜はりのあと一緒ねー」
「ありがとう!」
そう言うと華蓮ちゃんは二人を連れて、スタジオの端のスペースでどこらへんで見てていいかを説明しだした。
服を用意されたものに着替えて、私はりのあちゃんと並んでヘアメイクされる。
「華蓮ちゃんって本当凄いねー」
「まぁなんか慣れ感すごいよねー」
「本当…太田さんも妹みたいだし仕事覚えるのが早いって褒めてたよ?」
「あはは(笑) 言うて感覚だと思うけどね華蓮」
「そんな感じするね(笑)」
そしてそれが終ると二人でスタジオに入り、言われた通りの場所で言われた通りに動いたり表情を作ったりしながら撮影される。
りのあちゃんって凄いんだよ。
撮りますよー! ってなると一気に雰囲気が変わるの。
間近で見てるから、いつもその変化にドキッとしちゃう。
私も、折角加えてもらってるんだからと思って、りのあちゃんの真似をしてなんとなく頭を真っ白にしてカメラだけ意識するようにしている。
「はーい! 今日はこれで大丈夫でーす! お疲れ様―」
「「お疲れ様です(でーす!)」」
撮影が終わり、編集さんがそう言ったのを聞いて、ふぅと気を抜いた。
「Yukiちゃん、本当2回目とは思えない程いい感じだね!」
「隣にいいモデルがいますからね!」
「えーまじ? なんか照れるなぁ(笑)」
「Rinoちゃんの清楚バージョンのモデルの子だけあって、儚さが凄いね。なんでそんな白いの?!」
「外に出てないからですかね…?(笑)」
そんなことを話していると、奥から凜香さんと華蓮ちゃんと茜ちゃんと彩春がやってきた。
「二人ともよかったわよー!」
「よかったです!」
「バッチリ!」
すると編集さんが、
「八代さん本当に2人とも無料でいいんですかー?」
と聞いてきた。
私はこれまでモデルとしての仕事をしてきたわけじゃないから、いくらりのあちゃんがいるとはいえ、wiwiに載れるチャンスはそれほど多くない。
なので、私はボイトレの前後で姿勢やポージングの練習をいれてもらっていて、そこには凜香さんが来てくれている。
そこまでフォローしてくれていての撮影なのだが、ここは顔が売れることを優先すべきと、wiwiのモデル費用は無料にすると凜香さんから聞いた。
「いいですよー! Rinoちゃんはwiwiのお陰で今があるって感謝してますし、Yukiちゃんは逆にwiwiのお陰でメジャーになりましたからー」
「Rinoちゃんなんて、今や動画配信者としても女子高生から人気だから、wiwiに掲載した服やwiwiの本まで売れるんですよねぇ」
「それはよかったです! wiwiさんだけの特別ですから!」
「そういうことならこちらは嬉しいんですけどねー…」
と編集さんと凜香さんが大人な話をしだしたところで、華蓮ちゃんが、
「RinoもYukiもこの後ご飯いこーよ!」
「あぁ! いいね!」
「茜ちゃんと彩春ちゃんも行くー?」
「もちろんでーす!」
「Yukiも今日は大丈夫でしょ?」
「うん! いいね! 行こう行こう!」
「んじゃわたしと雪菜着替えてくるから待ってて―!」
「りょうかーい!」
私とりのあちゃんはそういって、スタイリングする部屋に行き、着てきた服に着替えて、その後4人で近くのパスタ屋さんに遅めのお昼ご飯を食べに行った。
なんかこういうの久しぶりかも。
楽しいな。
本当Vゲージに移籍できてよかった。
私はそんなことを思いながら、皆と動画配信のことについて話しながらパスタを食べた。




