表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/203

閑話【八代茜視点】あかねいろチャンネル

「いろはー、動画何撮るー?」




私は前の席に座る彩春に話しかけた。




「んー、やっぱり菅谷先輩のショート動画みたいなのがよくない?」


「やっぱそうだよねー。てか私達じゃ、長い尺の動画いっぱい撮るの多分無理だもんね」


「そうそう! とりあえずこれ踊ってみる?」


「どれどれ?」




そう言いながら私は彩春のスマホを見る。




彩春のお姉ちゃんの雪菜さんは昔からバーチャル配信者で、菅谷先輩と華蓮先輩も動画配信者。


ついでに菅谷先輩の幼馴染のあっくんさんも動画配信者。


菅谷先輩のチャンネルは始まったばかりだからこれからって感じだけど、全員こんなに動画配信者が多い中で、結構有名な人たちだ。



更についでに言うと、兄貴は動画配信者の事務所の社長になるらしい。



こんなに、うまくいきそうな雰囲気の状況の中で動画配信をやらないって選択肢はないでしょ!



と、彩春と話して動画配信を始めることにした。


スマホのカメラでもいいかなと思ったんだけど、やってみたら結構ブレがひどいので、彩春のお姉ちゃんに昔使ってたやつをもらってきてもらった。




「なになにー? 本当に動画配信やるの茜と彩春?」




クラスの女の子が話しかけてきた。


商店街のイベント以降、より一層クラス全員が仲良くなった感じがある。


思いっきり本気で準備した結果、暇な人なんてほとんど出ないぐらいやることが多くて、結果的に皆でやり切ったという感じだ。



打ち上げも、普通だったら来ないような暗めの子も来ていて、明るい子も「あのアニメ好きなんだよねー」みたいな感じで、皆素で話す感じがより強くなっていい雰囲気だ。




「そうなんだよねー!」


「どんなのやるの?」


「ショートがいいかなーって思ってるんだけどぉ」


「あれって儲かるの?」




首をかしげながらその子は聞いた。


すると彩春が、




「ショート系で稼ごうとすると菅谷先輩たちのチャンネルがある動画配信サイトじゃないから、めちゃくちゃバズらないといけないんだってー」


「そうなんだー」


「まぁバズってフォロワー増えれば、なんか企業が商品紹介して欲しいみたいなのは来るらしいけどー」




と彩春が言う。


動画サイトの収益構造は、兄貴に全て聞いてきた。


流石社長になると言うだけあって、あれやこれやと知っていて、特徴をわかりやすく教えてくれた。




「まぁでもさ、兄貴曰く、相当有名ならないと選べないから、正直いいと思わないものも勧めないといけなくなるかもって言われてるんだよねぇ」


「えー、なんか二人にそういうことやって欲しくないなー…ねぇみんな?」




その子がクラスの子達にそう聞くと、話を聞いていた子が何人か頷いた。




「だよねぇ。私もやりたくないからどうしようかなって」


「そうなんだよねぇ」




すると、商店街のイベントの時に案を出してくれた暗めの女の子が、




「げ、現代のスクールカーストってどうかな…?」


「現代のスクールカースト?」


「ほ、ほら、うちのクラスはさ、茜ちゃんと彩春ちゃんのお陰で、男女も明るいも暗いも、こんな私だって皆普通に接するじゃない…?」


「まぁそれは私達と言うか、皆結局それが良かったってだけの話だと思うんだよね。そうできない状況があるってだけで」


「そ、そうだね…。でもさ、やっぱりネットとか見るとさ、なんかこのクラスとは違う感じじゃない?」


「そうだねー。やっぱり1軍っているもんねー」


「そう…。それでね、大人の人たちもそう言う偏見持ってると思うんだけどさ、このクラスは進化系スクールカーストだと思うの…」


「進化系スクールカースト??」


「うん…。確かに茜ちゃんや彩春ちゃんは見た感じは1軍じゃない?」




そう言われて、立って自分達の服装を見る。




「そうなのかな?」


「それで私は3軍じゃない? ちょっと横に行ってもいい?」


「あ、うん?」




そう言ってその子は私の横に立った。


んー…。


まずスカート長さが違う。


そして、私はブレザーのボタンを開けていて、少しラフな感じで来ているのに対して、その子はきちっと着ている。




「皆もそう思わない?」




その子が小さい子でそう聞くと、話を聞いていた委員長が、




「まぁ間違いなく世の定義で言えば、八代と中里は1軍で、瀬宮は3軍だな」




と言った。




「まぁでもそんなん見た目だけじゃん?」




と私が言うと、その子は、




「そう、そこ! 大人の人もね、こういう見た目の違いで、なんか高校生を決めつけてるところがあると思うの…。でもさ、ジェンダーレスとかそういう時代のスクールカーストは違うと」


「違う?」


「確かに見た目でカースト的なものはあるけど、実はそんな1軍女子も3軍女子と楽しく話す共通の話題があったり、3軍女子も1軍男子と話せたりすると思うの」


「あー!! レゼロいいよねー!」




と、彩春が言った。




「そう…。昔はさ、アニメ見てる奴なんてみたいな感じだったみたいだけど、今だと彩春ちゃんがレゼロについて私と話すことも普通じゃない?」


「そうだね! なんならイラスト書いてもらったりしたしね(笑)」


「だから大人の人が思っているような、1軍と3軍の見た目の垣根はあっても、精神的な垣根は実はないってのが、うちのクラスの進化系スクールカーストかなって」




と、その子は最後の方少し恥ずかしそうに言った。




「なるほどねー!」


「だからさ、そう言う動画上げてみたらどうかな? きっとうちのクラスみたいにしたいって思ってるけどできてない高校生多いと思うんだよね…」


「なるほど?」


「うちのクラスはさ、幸いにして茜ちゃんと彩春ちゃんという、菅谷先輩が卒業した今絶対的な力を持つ二人がそうしてくれたからこうなってるけど、他の学校は違うと思うから…」


「そんな力ないよ?!」




私がそう言うと、委員長が、




「いや、あるぞ、お前ら二人は最早支配者だ」


「やめろ! なんか怖いやつみたいじゃん!」


「実際怖い」


「おまえー!」




委員長と私がそう話していると、その子は、




「私ね中学でいじめられてたから、高校怖かったの。でも今は凄く楽しいからさ…なんかそう思える子増えたらいいなって…1軍の子がアニメの話したっていいし、3軍の子も見た目1軍だからって避ける必要なんてないんだし、なんかそういうのよくない…?」




そう言った。


すると彩春が、




「いいね! 一回そう言うの撮ってみようよ! いつも案出してくれてありがとーー!!」




そう言ってその子にギュって抱き着いた。


確かに、外見を見ただけだと、1軍っぽい派手めな彩春が、3軍っぽい瀬宮さんに抱き着いてるってあまり想像できないかも。


菅谷先輩のクラスは商業科で全員1軍って感じだったから、あまりこういう場面がなかったけど、うちのクラスは普通科だから正直色んな人がいる。


世の中はこっちの方がメジャーだろう。


確かに。


そう思えば、このクラスの状況を使ってギャップを産み出していくのは、もしかしたら再生数稼げるかも?



私がそんなことを思っていると、




「しゃーねー。そしたら俺がざっくりした構成考えるわ」


「あー! あたしもあたしもー! なんか楽しそうー!」


「えー私達も動画出ちゃうじゃんどうしよー?(笑)」




クラスの子達が盛り上がりだした。


そして、私と彩春の動画チャンネルは、あかねいろチャンネルという名前で、私と彩春がメインで出てはいるものの、クラスの皆が案を出しながら動画を撮影していく、もはやクラス動画チャンネルみたいな感じになった。



「あー、顔映りたくないやつとかは俺に言ってくれな? まじでな? 後からやっぱり嫌だったとかなしだぜ?」




そんな感じでまとめだして、なんだかんだ乗り気の委員長を見ながら、私と彩春は瀬宮さんとどうしようか? みたいな感じで話し出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ