陥りやすい罠
家に帰り、俺は明日のエンゲージでの打合せに向けて考え出した。
ってか、莉乃愛の家族はどいつもこいつも変な方向に行っちゃうし、しかも莉乃愛のことなんだと思ってんだ…。
と思うと、莉乃愛がこの家に来た時のことを思い出して、またイライラしてきた。
本当菅谷家は、お母さんで保たれてたんだな…。
直人の親父さんが車の中で弁護士を呼ぶと話していたので、今回は直人の親父さんに任せよう…。
とりあえず、何かあるかもしれない何かの可能性がわかったので、俺は莉乃愛の部屋に向かった。
部屋をノックすると、中から「はーい」と聞こえたので、部屋に入ると莉乃愛が話しかけてきた。
「あっくん今日遅かったねー」
「あ、うん、ちょっと用事があって」
「そうなんだね! ご飯は?」
「あ、この後食べるけど、ちょっといい?」
「いいけど、どしたの?」
「今日さ、りのあのお母さんの仕事のことを知ってるかもしれない人に会ってきたの」
「お母さんの仕事?」
「そう、舞台関連の会社の人」
「よく見つけられたねそんな人。あっくん超能力者?」
「あ、いや、普通にネットで調べたらりのあのお母さんの名前を見つけられたからそこからたどってね…」
「ネットこわ…」
「ま、まぁ、それは置いといて…それでお母さんの話聞いて、お父さんが何してるとか知らないかも聞いてきたの。むしろ聞きたかったのはそっちだったんだけどね」
「へーーー! どうせまともじゃないんでしょ?」
「詳しいことは分からなかったんだけど、1年ぐらい前に会ったことがある人は、まともじゃなさそうな人達と一緒にいたって」
「本当、あの人ダメだわー。ってか菅谷家の男子全員ダメじゃん」
「それは俺からはなんとも言えないんだけどさ、でも、このまま何も対策せずに会うのはまずいと思うんだよね」
「んー、確かになぁー。兄貴の時みたいになるの嫌だしなぁ」
と顎に手を置きベットにあぐらかきながら、莉乃愛が悩みだした。
「会わなきゃいいのか!」
と、莉乃愛が閃いたように言った。
「あ、いや、今回はそれでなんとかなるかもしれないけど、一応りのあの父親ってことにはなっちゃってるから、いずれは何かあり得ると思うんだよ」
「もーーー!!!! わたしの家はここなのにーーー」
「それでね、今だったら俺や俺の親父が近くにいるから、解決するなら今の方がいいかと思ってるの」
「え? 今? どういうこと? あっくんいなくなるの?」
「あ、いや、そう言う意味じゃなくて! りのあもいつかは一人で何かすることになるかもしれないじゃん??」
「……ひどい…帝都にいるって言ったのに………」
というと、莉乃愛は下を向いてしまった。
えーーーーーーーー、ちょっと待って!
俺が伝えたいことと全く別のところで引っかかってる!!
「えっと、そう言う意味じゃなくて、俺が近くにいない時に何か起こるかもしれないじゃん? ほら買い物に行った時とか!」
というと、莉乃愛は顔を上げて、
「そういうこと! なんだ、ややこしい!! いなくなるって言いたいのかと思ったじゃん!!!!」
と怒ってる。
目には少し涙が溜まっており、危なかった…。
「ご、ごめんね、だからね、一緒にいれるときに解決したほうがいいと思って」
「うん、確かに!」
「それで、明日エンゲージの弁護士さん達と話し合うことになったからりのあも来て?」
「明日撮影する予定だったんだよねぇ」
「あ、華蓮さんも一緒にって。ついでに所属の話もしようって」
「あぁ! んじゃ丁度いいか! 華蓮に連絡しておくね!」
「う、うん。後、一応親父に言っといたほうがいいかなと思って…」
「そっか! よーし! では行こうー!」
と莉乃愛は立ち上がり、リビングに向かっていった。
「お父さーん! あっくん早く―!」という声がリビングの方から聞こえる。
思い立ったら即行動ってこういうことを言うんだな…
と思いつつ、俺もリビングに向かった。
既に仕事から帰ってきてビールを飲んでる親父に、一通り状況を説明すると、
「まぁまず、あれだ、新。お前が賢いことは理解しているが、こういうのはまず俺とかお母さんに相談すべきだ。今回は運よく理解のある大人の人が一緒だったが、なんかあったらどうするんだ?」
確かに…。
頭で考えて論理的に順序だてて最短距離でと思っていたが、ある程度自分で進められてしまうが故に、そういう普通にやるべきことが抜けていた。
「…たしかに。ごめん…」
「今回は何も起こらなかったからいいけど、何か起こってからじゃ遅いから次回からは気を付けるように。しかも自分のことじゃないなら特に」
「わかった…」
「ま、無駄に賢いやつが陥りやすい罠だな~」
と、親父が少しにやつきながら言った。
くそ…ムカつく。
だが正しい…。
「あっくんでも怒られることあるんだね~」
と、ダイニングに座る莉乃愛が話した。
ぐ……でも、今回ばかりは親父が正しいから何も言えない…。
「しっかしあれだなー、りのあちゃんいる前であれだけど、家族をなんだと思ってるんだ…」
「まぁ俺もそれは思った」
「私の家族はここ!」
「そうよね~」
と莉乃愛と母さんは二人でダイニングに座ってニコニコしてる。
「しかし、エンゲージさんだっけ? そんな個人の話まで対応してくれるんだな」
「あーどうなんだろう? 俺とりのあが、エンゲージに所属するからかもしれない」
「はぁ?!」
「いや、だから、アークチャンネルとRinoチャンネルはエンゲージの子会社の動画配信者の事務所所属になることになったんだよ」
「あ、そうそう! そうなのお父さん!」
莉乃愛が親指を突き出しながらそう言った。
「お、お前…なんでそんな重大なことを…」
「だって俺もう成人だし」
「そういう話じゃなくだな…一応親なんだぞ?」
「まぁ別にそれは悪いことにはならないし、そのうち言えば良いかと思ってて忘れてた」
「お前…本当……誰に似たんだか……」
「「あなたでしょ!(お父さんでしょ!!)」」
と莉乃愛と母さんが笑いながら言った。
「まーとりあえず、新ちょっと来い」
というと、たばことスマホをもってベランダに出ていった。
なんだ?
と思って俺もベランダに出ると、
「金の問題になったら、うちで1億までなら出してやるからそのつもりで考えろ」
とタバコを吸いながら親父は言った。
はぁ?!
うちってそんなにお金あるの?!
「まじ? てかうちってそんなにお金あるの?」
「まぁ実際はもっとあるが、まぁそれぐらいならポンと出せる」
「そ、そう…」
「まぁ今の仕事の前にやってた会社を売ったお金だ」
「そうなんだね…」
「そう言うことだから戻っていいぞ…」
と親父が言うので俺は部屋に戻った。
すると莉乃愛が、
「なんだったのー?」
と首をかしげながら聞いてきた。
「ん、あー、えっと、ちゃんと相談しろって釘さされた感じ」
「そっか! あっくんが怒られてるのなんか新鮮だった!」
「新は小さい頃から、出来なきゃいけないことは大体できていたから、あんまり怒る機会無かったのよね~」
「お母さんは、そうじゃなくても怒ってなさそうだけど!」
「えぇ! お母さんも怒るわよ?! そりゃもう!」
と莉乃愛と母さんがニコニコしながら話だした。
そして暫くすると親父も戻ってきて、所属の条件や業界の話をして俺と莉乃愛は部屋に戻った。
莉乃愛、Rinoチャンネル華蓮さんと折半するんだなぁ。
幼馴染チャンネルは正直俺は無くてもいいぐらいだけど、1/3ずつか。
普通の動画配信者だとおかしいのかもしれないけど、なんか莉乃愛らしいな。
そんなことを思いつつその日は寝た。




