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アークは特別

『湯月くん、今日ディスボで話せるタイミングありますか?』




そう雪菜さんから連絡がきた。




『いつでも大丈夫ですよ』

『それじゃあ22時ぐらいでも大丈夫ですか?』

『はい、ではその時間にチャンネル行きますね』

『よろしくお願いします!』




なんだろ? マリンスノーの箱舟関連かな?




俺はそんな事を思いつつも、さっき相談された莉乃愛のお父さんのことについて考え出した。


ずっと連絡がなかったのに、今更連絡があるってのは何かあるだろう。


タイミングで言えば、RinoのSNS、Rinoチャンネル、卒業が引っ掛かりそうなイベントだ。


2週間以上無視しているのに、追加で連絡がこないのなら、とりあえずはこのまま無視してもいいかもしれないけど、どうせいずれどこかで莉乃愛は向き合わなきゃいけないことなんだよな…。


それだったら、俺やうちの親父が近くにいる今の方がいい。


ただ、ノコノコ出ていって後手に回るのは避けたい。


よからぬことが起こる可能性が高いとわかっているなら先手を打ちたい。


せめて何かがあるなら、その何かが何なのか少しでもわかれば…。


後で莉乃愛に聞かないと…。




そんなことを思いつつ、SNSを見たりしていると、夕飯のスケジューラーが立ち上がり、夕飯を食べて2時間ほど配信をして俺は雪菜さんと話す時間を待った。




「アークさんお疲れ様です!」


「お疲れ様ですー」


「遅い時間にすいません…」


「いえいえ、俺みたいな人種にとっては、これからがゴールデンタイムみたいなもんですから…」


「あはは(笑) でも私も学校なくなって少し遅くなっちゃいました」


「配信とかしているとそうなりますよねー」


「そうなんですよー。まぁ視聴者さんもこの時間多いので、問題はないんですけどね!」


「そうですよね」


「それでですね、ちょっと相談というか意見を聞いてみたいと思うことがあって…」


「はい、大丈夫ですよ!」




そう言うと、ゆきはさんはナナイロの新しく追加で担当になったという南さんの話をした。


一通り聞いて、




「なるほどですね。記念ボイスですか。確かに皆さん出されてますよね」


「そうなんです…。それはわかってて、やらなきゃなぁとも思ってるんですが、なんかもう少し私の意見聞いてくれてもいいんじゃないかと思って…」


「それは確かにそうですねぇ。でも太田さんは何も言ってないんですか?」


「はい、今LIMEみても何も言ってくれてないです」


「うーん、ゆきはさんのことをよく知る人なら、強引に押しても意味ないどころか逆効果だとわかると思うんですけどねー」


「今まではこんなことなかったんですけど…」


「んー、その南さんが来てから、そういう話が多くなったと」


「はい、そうなんです…」


「案件や記念ボイス……。んーーーー、あ、その南さんって人のメールの署名とかってあったりしますか?」


「メールの署名ですか? んー、あ、グッズのやり取りで一回南さんが送ってきたものがあったので、それちょっと見てみます!」


「了解です」




そしてしばらくすると、




「ありました!」


「ちなみに署名の部署とか読み上げてもらえますか?」


「えっとですね、「マネジメント部」だけですね!」


「んーー……なるほど…」


「ちなみに太田さんの部署はどんな感じです?」


「えっとですねー……「マネジメント部 第1グループ」ですね!」


「なるほど…」




んー…わからない。


以前の荒らし騒ぎの時に、部署内に第1と第2があって第2は割と案件とかに積極的だって聞いていたので、第2の人なのかなと思ったのだが…。




「ちょっとわからないですね…」


「そうですよねー」


「もしかしたら以前お話で聞いたグループ2の人なのかなと思ったんですが…」


「あー、確かに案件に積極的だって言ってましたね」


「はい」


「でもわからないですね…。しかも、もしそうだとしてもなんでなんだろう…。私なんか悪いことしたかな……」


「そんなことないと思うんですけどね。もう40万人超えてるんですよ? 日向ゆきは」


「あ、はい、ありがとうございます!」


「でも、こればっかりはもう考えてもわからないですね…」


「そうですかぁ」


「なんで太田さんに聞いてみましょう」


「私もそうしたいんですけど、なんか担当の人が2人いるのに片方に個別で連絡するってどうなのかなと…」


「俺から所属の件でと太田さんを呼び出します!」


「な、なるほど」


「これなら太田さん個人に連絡することに何ら違和感がなく自然です!」


「でも、嘘じゃ…」


「嘘じゃありません! あー、でも俺直人の所に所属することになるんだった…」


「え? 直人くんの所?」


「あ、そうなんですよ。なんか親父さんに命令されて動画配信者の事務所の社長になることになったみたいで、アークを所属させてくれないかって」


「そ、そうなんだ……」


「あ、でも、ゆきはさんが大丈夫なら今まで通りで大丈夫ですよ? 直人ですし」


「私がと言うかナナイロが大丈夫かな…」


「まぁそれは確かに何かあるかもしれませんが、大きな事務所でもバーチャルでもないんで大丈夫だったりしないですかねぇ」


「ま、まぁアークさんはもしかしたら特別かもしれませんしね! と言うか今でも相当特別っぽいですが!」


「そうですよね…。goodさんからも言われました…ナナイロさんはガードが堅いのになぜお前だけって」


「私達は逆に安心なんですけどね!」


「まぁそっちのほうがいいですね(笑) あ、てかすいません、話が逸れました」


「いえ!」


「んー、でもまだ所属したわけじゃないし、どこかに所属する前にはひと声かけろって言われてたし、そういう理由ってことでいいですかね…」


「私はアークさんがいいならいいんですけど…」


「まぁ結果的には俺が所属する話ではなく、所属しているゆきはさんの件なんでいいですかね! そう言うことにしましょう!」


「なんか屁理屈みたいな…」


「嘘ではないですし、言われた通り所属する前に声かけた感じですし!」


「ま、まぁ…」


「なので、それで太田さんに連絡して、一緒に話聞きましょう!」


「あ、は、はい! わかりました!」


「じゃあ、今日は遅いので明日連絡しますので、またご連絡しますね!」


「了解です! アークさんいつもありがとう!」


「いえいえ、おかげさまで俺のチャンネルも、20万人超えですからお互い様です!」


「そうですかね…アークさん個人の力な気がしないでもないですが、でも、ありがとうございます!」


「そんなことないですよー。あ、太田さんには電話しようと思っていまして、そのままスケジュール調整したいので、近々のゆきはさんのダメなタイミングを送っておいてもらえると嬉しいです!」


「了解!」


「それじゃあまた連絡しますねー」




そう言うと俺はディスボを抜けて、とりあえず太田さんに連絡するのは明日なのでと、今日は全然できていなかったプログラムを少し触って、のめりこむ前に寝た。

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