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【中里雪菜視点】1周年に向けて

ナナイロ所属の配信者の、動画配信が荒れた問題を横から颯爽と現れた湯月くんが解決してくれた。


一応元社員が関与しているということだったけど、私は内情を知っている。


太田さんからは、「これ以上不安を与えてしまうと申し訳ないから、こういった内容の発表になっちゃって少しごめんね」と言われた。


私としては、配信が落ち着いたことがなにより嬉しいし、恐らく他の配信者の方々もそうだろう。


私達は会社に所属しているというより、リスナーさんと共にあるって感じだもん。




結果的にあれ以降、誰も一度も配信が荒れていない。


他の配信者の方々も私の耐久配信がいいきっかけになったようで、一気に元に戻った。




そして私も普通に戻ったかと思ったら、今度はゴースティングだ。


目的は結局最後までわからなかったけど、これも湯月くんに解決してもらってしまった…。


見事湯月くんの作戦通り、私からアークさんにターゲットを変えたようで、アークさんの配信を少しゴースティングされたみたいだが、アークさんが私の時みたいに相手にしないので、肩透かしをくらってしまったのだろう。


湯月くんからはプログラムがやりたかったから気にしないでいいと言われているが、少なからずアークさんの配信に迷惑をかけたことは事実なので、本当に申し訳ない…。



ただ、湯月くんに何とかすると言われるとどうしても最後の最後で甘えてしまう。


こんなんじゃダメだ…。


自分の事なんだから自分でもっとなんとかしなくちゃ。








そんな湯月くんというかアークさんと一緒に行った200キル耐久配信中に突発的にマリンスノーの箱舟が再結成した。


まりんさんからメッセージをもらって、本当に突発だった為誰も告知等ができておらず、見逃した方も多かったようで、配信動画のアーカイブには『もう1回再結成配信してほしい!』みたいなコメントが多く届いた。




まりんさんの動画もそうだったようで、まりんさんからも提案され、アークさんにお願いし、限定再結成配信を行った。



配信中に、まりんさんがダメージ勝負しようと言ってきたときは、まりんさん絶対狙ってるな! と思った。


ただ、運よく私は勝つことができ、逆にまりんさんの萌え声を聞くことができた。


可愛かったなぁ。



まぁ結局そのあともう一回になって私が負けて、まりんさんがなぜか言って欲しいらしい「お兄ちゃん」を言うことになってしまったのだが…。




そうしてマリンスノーの箱舟の再結成配信も終えて、日々の動画配信活動を送っていると、太田さんから連絡がきた。




『ゆきはさん、今日どこかで少し打ち合わせの時間あるー?』

『20時から配信なので、それまででしたらいつでも大丈夫ですよ!』

『あ、じゃあ15時で! URL送っておくねー!』

『了解しました!』




配信が荒れたお詫びとして、ナナイロがお金を出して、荒れた配信者のグッズを原価で販売することになり、今それを作っているところなのでその件だろうか。


ちなみに私はハンドタオルにした。


そして、太田さんに言われた時間になったので、送られてきたオンライン会議にログインすると、太田さんの他に知らない人がもう一人いた。




「あ、ゆきはさんお疲れ様ですー!」


「お疲れ様です!」


「今日はそんな大した話じゃないんだけど、実は私の他にもう1人ゆきはさんの担当が追加になったのでその人を紹介します!」


「あ、そうなんですね!」


「こちら一緒に映ってる、南裕子さん。 まだ他の配信者の担当をやったことはないんだけど、私と一緒にやっていく感じです!」


「南ですー。よろしくお願いします!」


「これからは2人で対応していくので、ゆきはさんもそのつもりでよろしくお願いします!」


「あ、はい! 了解しました!」




と、私が返事をすると、南さんが話し始めた。




「あ、ちなみにゆきはさん、ゲーム系以外の案件は対応できますかね?」


「ゲーム系以外の案件?」


「例えば何か商品の販売促進とか」


「んー、やったことないのでわかりませんが、物によりますかね?」


「ちなみに記念ボイスは出せますか?」


「えっと…私は声優とかじゃないのでちょっとまだ心の準備ができておらずでして…」


「あーあー! ゆきはさん大丈夫! そこら辺は聞いてるから! 南さんも一気にそんなに色々聞かないで!」




と太田さんが助け船を出してくれた。




「あ、すいません」


「はい! まぁ今日は顔合わせだからこれぐらいで! 今後もよろしくねゆきはさん!」


「あ、はい! よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします」





そういうとオンライン会議が閉じられた。


とりあえず、まだ担当している人がいないって言ってたし、太田さんが新人さんを教育しているのだろうか? と思いつつ、私は特に気にすることもなく日向ゆきはのSNSに配信予定を投稿した。




それから数日経つが、南さんと言う新しい担当の方は、やたらと案件のことや記念ボイスのことをお話ししてくる。


正直記念ボイスはいつかは通らなきゃいけないものだとは思っているが、そこまで力説されると逆に引いてしまう。



まぁそう言う話になるたびに太田さんが助け舟を出してくれているのだが、これはなんなのだろうか…。


そしてさらに数日後、私と太田さんと南さんのグループラインに、連絡がきた。




『南:1周年までもうすぐだと思いますので、時間がありませんからこのスケジュールでお願いします』




というメッセージと共に送られてきたのは記念ボイスの録音スケジュールだ。




『南:セリフもこちらで考えておきましたのでご覧ください。希望があれば伺います』




と、セリフ集も送られてきた。


いつもならここら辺で太田さんが助け舟を出してくれるのだが、今日はなにも反応がない。




『えっと、ちょっと検討します』

『検討していただくほど時間がないのでなる早でお願いします』

『わかりました』




そうメッセージを送ったものの、これは困った。


1周年記念ボイスは、登録者数の多い女性のバーチャル配信者ならほとんどやっているし、私もやらないといけないなぁとは思っていたけど、なんかこう釈然としない…。


もう少し私の意見とか聞いてくれてもいいんじゃないだろうか…。


太田さんも反応してくれないし……。


と、なんだか悶々と悩んでると、部屋のドアがノックされた。




「どうぞー」




と言うと、彩春が部屋に入ってきた。




「おねーちゃーん! って、どしたの? なんかあった? ほっぺた伸びちゃうよ?」




と彩春が言うので、私は自分の今を見つめなおすと、スマホ片手にテーブルに肘をつき、その手でほっぺたを押さえてる。


そして、かなりの体重がその手にのってしまっており、ほっぺたがむにゅーっとなってる。




「あ、ご、ごめん」




そう言って私はスマホをテーブルに置き彩春の方を向き話しかけた。




「どうしたのー?」


「おねーちゃんが昔使ってた、カメラとかってまだあるー?」


「あーうんあるよ?」


「頂戴!」


「別にいいけど、どうするの?」


「茜と動画投稿やろうと思って!」


「あ、そ、そうなんだ」


「茜も私も部活あるから毎日とかは無理だけど、ちょいちょいやって自分たちでお金を稼ごうと思って!」


「そ、そっか…稼げるまで大変だよ…?」


「ふっふっふ、最悪困ったら茜のお兄ちゃんに相談する!」


「あぁなるほど…どうやるかとか全然わからないけど直人くんなら解決してくれそうだね」


「そっ! だから頂戴!」


「あーうん、わかったよ。後で部屋持ってくね!」


「ありがとねー! んでお姉ちゃんは大丈夫なの?」


「あーうん、ちょっと悩み事があって」


「そういう時は、アークさんでしょ! 困ったときの秘密道具アーク!」


「そんな漫画みたいな…(笑) まぁでも、ちょっと聞いてみる(笑)」


「そうそう! アークさん頭いいし、お姉ちゃんのこともよく知ってるし、業界にも詳しいし!」


「そうだね、ありがと!」


「んじゃグループLIMEよろしくねー! あ、それ卒業式の時の写真?」




と、私のデスクの脇の棚の上のコルクボードに貼ってある写真を見ながら言った。




「そ、そう。皆で撮ったんだ」


「いいなー! 私も菅谷先輩についていけばよかったーー!」


「きっとまた撮る機会あるよ」


「そだね! じゃあ!」




と言うと、彩春は部屋を出ていった。


私のデスクの横のコルクボードには、日向ゆきはの壁紙を印刷したものや、これまでの皆との写真を貼っている。


こんな気兼ねなく話せる友達ができてよかった。



私はそう思いながらスマホに湯月くんとのツーショットを表示した。


湯月くんとのツーショット写真は、ちょっと飾ると恥ずかしいから、スマホで私が見るだけ。




そして私は、湯月くんに南さんのことを相談しようと思いLimeでメッセージを送った。




『湯月くん、今日ディスボで話せるタイミングありますか?』





はぁ…。


私って本当ダメだなぁ…。


あんなに甘えちゃダメだってこの前思ってたのに、問題に直面すると結局直ぐ湯月くんの意見を聞きたくなる。


きっと莉乃愛ちゃんもこんな感じなんだろうなぁ。




私はそんなことを思いつつメッセージの返事を待った。

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