この1年
申し訳ありません。
1話飛ばしてしまいましたので、新しく前話投稿しておりますのでそちらもご覧いただけますと幸いです。
ゆきはさんのゴースティング対策をしてもう2週間程経った。
それ以降ゆきはさんの配信は平和で、平和にOPEXのランク配信ができている。
俺は煽った翌日にランク配信をしたが、その時はゴースティングチーターが来た。
少し相手してあげたが、流石に普通に負けた。
ただ、俺は元々がっつりランクをあげに行っているわけではないので、すぐさまカジュアルに変えてしまい、saitouはこの前の感じを想定していたのならば肩透かしだろう。
それ以降も何回か来たが同じ対応なので、最近では来なくなった。
ゆきはさんの所に戻るわけにもいかないだろうから、しばらく休憩かな?
最近毎日配信ではなくなったが、それでもアークのチャンネルは登録者が20万人を超えた。
結果的に定期的にゆきはさんとコラボ配信しているからだろうなぁ。
そんなことを思いながら俺は幼馴染チャンネルを開いた。
開設してまだ1月ぐらいなのだが、既に登録者が19万人いる…。
なぜだ…。
毎回華蓮さんにあの手この手で仕掛けられるドッキリ撮影にも慣れてしまい、遂に幼馴染チャンネルのことを話すときは、アークとRinoと呼び合うようになってしまった。
Rinoチャンネルにテストの点数の取り方動画も公開し、そちらも好評のようだ。
ちょっと期間が足りず全教科は網羅できなかったのだが。
しかし、やはり点数は取れるので、再生数は落ちることなく長い期間伸びていく。
ついにはRinoチャンネルのアークのテスト対策を解説する動画まで出てきた。
そしてRinoチャンネルもそれに引っ張られて、既に登録者は10万人に迫る勢いだ。
週に5本ぐらいの動画をRinoチャンネルは公開しており、編集もかなりうまくなってきたので、動画としての完成度もどんどんあがってる。
企画に困るだろうと思っていたのだが、視聴者さんが色んな化粧品や洋服ブランドのことを取り上げて欲しいとコメントするので、企画案には現状全く困っていないようだ。
俺自身はと言うと、学校はもちろん行っていないので、Rinoチャンネルのことと幼馴染チャンネルのことをやるとき以外は、ほぼすべての時間をプログラムにつぎ込んでいる。
動画圧縮のプログラムを作ろうとはしているのだが、まだまだ勉強不足の分野が多いので、プログラム半分勉強半分と言う感じだが。
しかし、この1年を振り返ってみると、白風あげはさんにOPEXを教えてからは、本当に色々あった。
それこそ、これまでの陰キャ生活で通らなかったイベントを、この1年ですべて回収したのではないかと思うぐらい、イベントに次ぐイベントだった。
直人は予定通り、慶都大の経済学部に合格し、雪菜さんは日向ゆきはに専念する。
莉乃愛は多分モデル兼動画配信者を続けるのだろう。
華蓮さん学校どうするんだろう…。
このままいけば、華蓮さんの生活費ぐらいならRinoチャンネルと幼馴染チャンネルでねん出できてしまいそうだけど…。
そんなことを思っていると夕飯のスケジューラーが立ち上がったので、俺は夕飯に向かった。
ダイニングテーブルに座ってスマホをいじっていると莉乃愛も来た。
そして俺の横の定位置に座ると、
「あっくん卒業式の日来てよ!」
と、話しかけてきた。
「え? りのあの学校に?」
「そう」
「いや、俺違う学校だから…」
「えーーー! 高校最後だから、ほらアニメであるような卒業証書もって写真撮ろうよ!」
「それはうちの親と…」
「えーーーーーーーーーー!! ダメ!」
「ダメって…」
「あ、雪菜の学校も同じ日だから、雪菜のところも行こうっと! 雪菜に言っとかなきゃ!」
と言ってスマホをいじりだした。
そしてメッセージを送り終わったのか、莉乃愛はこちら見ると、
「あっくん! 卒業式約束ね!!」
と莉乃愛が人差し指を立てて言った。
これはまた断れないやつか……事前に教えてもらえただけまだいいか…。
そんなことを思いつつ夕飯を食べて部屋に戻った。
なんか俺の納得ハードルこの1年でめちゃくちゃ下がってないか……。
今日はゆきはさんとまりんさんと、マリンスノーの箱舟の限定再結成配信である。
前回は耐久配信時に突発的に再結成することになったが、その時にまた見たいという声が非常に多かったようで、今回ゆきはさんにお誘いいただき、今日だけ再結成と言う形になった。
まぁ、ゴースティング対策したときに、まりんさんと相談してるって言ってたしね。
「やっほー! まりんだよー! 皆お待たせしました! 今日はマリンスノーの箱舟限定再結成でーす!」
「こんゆきー! 日向ゆきはです! よろしくお願いしまーす!」
「こんばんは、アークです。よろしくお願いします」
『きたこれ』
『MSH WIN』
『ゆきはちゃんと出会えた大会!』
と、各々の配信コメントは大歓迎ムードだ。
そのまま、3人でOPEXの配信を行った。
「アークさんー」
「どうしましたかまりんさん?」
「次ダメージ勝負やろうよ」
「俺はいいですけど…」
「え…?!」
「負けたらーーー、萌え声かイケボ!」
「ちょ、ちょっとまりんさん! それは狙い撃ちですよ! 狙撃です!!」
「ちゃんとルールを考えてきたから!」
「なんですかー……?」
「全員武器無しパンチのみ!!」
『まりんちゃん天才か』
『これならアークも全然負ける』
『ゆきはちゃんこれならいけるよ!』
「な…なるほど! それだと確かに…!」
「まぁ俺はいいですよ…」
「よーし、それじゃあこれで行こう!」
そうして始まったパンチのみダメージ勝負は、なんとゆきはさんが1位で、まりんさんが最下位となった。
「ちょっとー!!! あれ卑怯でしょうー!! なんでわたしのところに敵3人いんのよーーーー」
「ま、まぁそれも含めて勝負なんで…」
「ふふふ、まりんさんになに言ってもらおうかなぁ?????」
「くそぉぉぉぉ! ゆきはちゃんの萌え声が聞きたかったのにーーーー!」
「絶対そうだと思いました(笑) でも私勝ちましたので!」
「くぅぅぅぅ!!」
「じゃあーーー、「大好き」でどうですか?」
「…いいよ! 何年配信者やってると! 余裕よ!!」
「えーじゃあ、まりんさんの「大好き」まで、3、2、1」
「大好き♡」
「えーめっちゃ可愛いーーーーーーーー!!!」
「や、やばい、思ってたより相当恥ずかしい……」
「可愛かったですよ」
「くそーーーー! もう一回!!!!」
「えーーーーー!」
そんなことを話しつつももう1回勝負することとなり、次はゆきはさんが最下位でまりんさんが1位だった。
ナナイロの女子に挟まれて安全ムーブする俺は再び2位。
「ふはは! じゃあゆきはちゃん「お兄ちゃん」で!」
「なっ!!!! なんかすでに恥ずかしいんですけどそれは!!!」
「言ってみてもらいたかったんだよね~~~」
「うぅ…ちょっと練習してきます……」
そして、
「では、ゆきはさんの「お兄ちゃん」まで、3、2、1」
「お……お兄ちゃんっ♡」
「やっばーーーーーーー! 私投げ銭していい???」
「恥ずかしすぎます…顔がめっちゃ熱いです……」
「可愛かったですよ…」
正直可愛かった…。
その後しばらく3人で配信して、マリンスノーの箱舟の限定結成配信は終わった。
配信後、ゆきはさんが少し話したいというので、ゆきはさんとのチャンネルに入ると、
「ゆきはさんどうしましたかー?」
「あ、アークさんありがとうございましたー」
「萌え声うまくなりましたね!」
「あれはうまくならなくていいです…」
「あはは」
「それでどうかされましたー?」
「あ、りのあちゃんから卒業式の日に一緒に来るって聞いて!」
「…なんて話の早い…」
「写真撮りましょうね!」
「は…はい……」
「でもいよいよ卒業か~と思って、アークさんどうするのかなって聞きたくて…」
「そうですねぇ、大学はいかないことに決めました」
「おお、そうなんですね!」
「1年やってみて必要そうだったら来年受験します」
「なるほどな~。プログラム? は楽しいですか?」
「そうですねぇ、俺の性に合ってますねあれは…」
「あはは、でもなんかイメージできます!」
「一応配信も続けるつもりではあります」
「じゃあこれからも教えてもらえますね!」
「もうゆきはさんが遠い存在になりかけていますが…」
「そんなことないですよ! 私は今でも中里雪菜です! これからもよろしくね湯月くん!」
「あ、は、はい…」
「じゃあ、卒業式楽しみにしてますねー!」
そう言うとゆきはさんはチャンネルを抜けた。
楽しみにされるようなもんじゃないと思うんだけど……。




