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悪役令嬢の十五年戦争  ~転生先は戦前の日本?! このままじゃあ破滅フラグを回避しても駄目じゃない!!~  作者: 扶桑かつみ
物語本編

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507 「最後の夢枕?(2)」

「随分とお考えですのね。それとも、もう聞きたい事がないのかしら?」


「……あるけど、何を優先しようかと。聞けなかったら困ることが、あるかもしれないからね」


 彼女とのゲーム、私が破滅するかどうかを賭けたゲームで、彼女と話せる最後の機会だと思うと、どうしても考えがうまくまとまらない。

 そして彼女、私の体の主にして、私がゲーム『黄昏の一族』の悪役令嬢だと仮定している彼女は、そんな私の内心を見透かしてくる。

 ただ悪意があるというより、面白がっている感じがする。


「確かにそうですわね。けれど、考え過ぎても時間は減っていきますわよ」


「分かってる。じゃあ、あの女の力ってどう覚醒するの? 今の所、普通の人なんだけど?」


「覚醒、なのかしら? けれど、わたくしも最初は、取るに足らない女だと思っておりましたわ。ですけれどね、年を経ると余計な知識を蓄えますの」


「やっぱり、共産主義とか社会主義?」


「それは屋敷に入れない場合ですわね。あと、女性運動にも熱心でしたわね」


「へーっ。それで、屋敷にいる場合は違うの? 先代の夢見の巫女の事を調べるとか?」


「それは確か、一族の誰かが教えた筈。玄二さんが当主ですから、玄二さんでなければ玄太郎あたりでしょうね」


「それで、あなたがいると日本が不幸になるから、日本から追放するの? おとぎ話じゃあるまいに、なんでそうなるの? あなたの浪費癖が過ぎただけじゃないの?」


「し、失礼な! わたくし、淑女として、鳳の女として必要な事以外は、一切しておりませんわ」


 疑問共々ちょっと煽ってみると、見事に煽られてくれる。

 私の知る彼女らしいけど、こんな性格だから罠にでも陥れられたんじゃないかとすら思えてしまう。


「あっそ。まあ、財産を浪費したかどうかは周りが決めるもので、あなたに言っても仕方ないわよね。それで、その余計な知識で、あなたは悪役認定されたわけ?」


「ええ、恐らく」


 言葉の歯切れが悪い。オカルト的な事で追放されたら、納得がいかないのは当然だろう。そして私も、何か合理的な理由があるんじゃないかと、長年考えていた。


「ねえ、もしかしてだけど、勝次郎くんの家との姻戚関係を結ぶ事自体が、向こうの家の都合で悪くなったから、破棄するため適当な理由をでっち上げたって可能性はない?」


「もしそうなら、巫女がどうこうという与太話より、納得のいく理由でしてね」


「うん。で、婚約解消の見返りとして、一族か財閥とは三菱か山崎家が最低限の保障を約束する、みたいな裏取引があったとか」


「つまりわたくしは、互いの家の路線変更の人身御供にされたと?」


「結果的にはね」


「……ですが、それはないでしょう」


「なんで?」


「2周目、3周目で、わたくしは勝次郎と結婚しておりますわ。子供も授かりました。一族と財閥も、私の知る限り存続しております。

 それに2周目でのあの女は、外からわたくし達を非難してきただけで、一族の事には一切関わってもおりませんもの」


「なるほどね。けど、お話じゃないんだから、何か理由があると思うんだけどなあ。それに私も、そんな理由で追放されたくないし。あっ、そうだ、『闇の巫女』が理由で追放されたら私の負け?」


「破滅が条件ですから負けですわね。ですけど今は、『闇の巫女』と『光の巫女』の話は、一族の大人達は意に介していない様子でしたわね」


「けど、あなたの時は気にするどころか、追放理由でしょう。なんで? そこが分からないんだけど」


「わたくしも存じませんわ。ご自身で、理由をお探しになって下さる」


「……嘘はない?」


「ええ。この件で嘘偽り一切ございません」


 言い切られてしまった。

 彼女にとっても理不尽な理由だっただろうから、今の言葉に偽りはないと思いたい。


「ハァ、この件はいいわ。じゃあ次ね」


「ええどうぞ。いつ時間が尽きるか、分かりませんわよ」


「それじゃあ単刀直入に聞くけど、私がハルトさんと結婚して、子供産んで、家庭築いても問題ない? 幸せになっていいの? 勝次郎くんと結ばれなくて大丈夫? 勝次郎くんと瑤子ちゃんが結ばれてオーケー? 一族の他の男子と結ばれなくてオーケー? あと、私の同世代って、あなたの時はどうなったの?」


「一度に色々聞かないで下さいます。順にお答えしますけれど」


「あー、はい。御免なさいね。それで?」


「何度も申し上げている通り、お好きになさって下さいな。誰と結ばれようが、乳繰り合おうが、全てあなたの人生でしてよ」


(まだ乳繰り合うまではいってないけどね)


「相変わらず寛容ね。あなたの体なのに」


「今はあなたの体でしてよ。あ、ですけれど、あなたがお勝ちになったら、一つだけお願いできますかしら?」


「出来る事なら何でも」


「ある意味簡単ですわ。少しでも長生きして下さいな。次の周回のために力を貯めたいのですけれど、時間が長い方が良いみたいですので」


「へーっ、そういうのあるんだ。了解。100歳くらい生きられるよう、健康には注意するわね」


「ええ、わたくしの体ですし、大事にしてくださいな。それに、丈夫さには多少の自信がありましてよ。それで次の答えですけど、一族の他の者が何をしようと関心ございませんわ」


「勝次郎くんと瑤子ちゃん、このままだと結婚するのに?」


「勝次郎とは二度結婚しましたが、どちらもあまり親密ではありませんでした。ですから、嫉妬その他はございません。ただ二人とも、最初の時はあの女と親しくしたので、あまり快く思ってはおりません」


 何とも色々と複雑な感情がこもった返答になっていた。聞くんじゃなかったかもと、ちょっと悪い気もするほどに。

 だから素直に頭を下げた。


「言いにくい事聞いて御免なさい。他も、気にしているなら答えなくていいわよ」


「大丈夫でしてよ。勝次郎と2度も結婚する事で、色々と溜飲は下がりましたので」


「うん、マジごめん。聞くんじゃなかった」


「だから気になさらずに。それで、他の一族でしたっけ? けどこの質問、あなたに塩を送る答えになりませんこと?」


「そう? 現状だとみんなの将来は、だいたい定まった感じだけど」


「確かに。わたくしが3周したどれよりも、みなさん順調ですわね。龍一と玄太郎は勉強漬け、虎士郎は行きたい進路に進めず、瑤子は女学校で卒業でしたわね」


「龍一くんと玄太郎くんは、あんまり変わらないわね」


「どうかしら? 今と比べると、どちらも余裕がないように見えましたわね」


「そっか。財政状況、家族の状態、周辺環境、全然違うから当然かもね。あなただって、今くらいゆとりを持てる環境だったら、違ってたんじゃない?」


「どうでしょう? わたくしは、わたくしだと思いますわ。ですけれど、お金はあるに越した事ありませんものね。次はあなたを見習って、色々とさせて頂きますわ」


「どうぞご自由に。それであなたや周りのみんなが幸せなら、私は嬉しいわ。けど、とにかく4歳の時点で新薬の開発とアメリカへの投資を忘れずにね。あとは27年春までに憲政党内閣倒して鈴木を飲み込めば、それで後は何とかなる筈よ」


「どうもありがとう。と、社交辞令はさておき、他にご質問は?」


「取り敢えず聞かないといけないと思ったのは、あの女を書生で迎え入れたけど、問題ない?」


「外に置くよりは賢明だと思いますわよ。それに『あの女』、少し雰囲気が違うように見えますわね」


「……どう違うの?」


「どうされましたの? そんなに凄まれて」


「あ、いや、ほら、巫女とかいう割に、普通の人にしか見えないでしょう。不思議だから」


「巫女だろうと、人は人ではなくて? そうですわね、私の時と比べると穏やかで従順でしょうか。あなたに親近感も抱いておいでのようですし」


「まあ確かに。他には?」


「ゆくゆくは勝次郎を私から奪いますけれど、その勝次郎は瑤子と結ばれるのよね。婚約はまだしておりませんが」


「まあ、このまま行けば、結婚確定でしょう。あ、結婚といえば、虎三郎の他の兄弟姉妹については?」


「虎三郎の家の方とは、付き合いが殆ど御座いませんでしたから、特に何も。今は随分と賑やかなご様子ですけれど」


「まあね。ただ、念のため再度確認するけど、ハルトさんが私の婿養子になるのは問題ないのよね?」


「他の財閥の力を借りるための政略結婚に比べれば、百倍マシと言うやつですわね。早くお爺様や時田に、ひ孫の顔を見せてあげて下さいな」


「あー、うん。早ければ2年後くらいね。けど、その、いいの? あなたの産む子供と違う子供になるけど?」


「ああ、そういう事を聞きたかったのね。早く言ってくださる。といいましても、今はあなたの人生でしてよ。そして何度も申しますように、お好きになさって下さいな。どのみち、最後の決断以外に、わたくしは何も致しません」


 言い切った。自分の言葉には責任を持つ。こういうところは、ゲーム的には悪役としての矜持なんだろうけど、彼女の人となりそのものだと思わせる。

 だから私も笑顔を向ける事もできる。


「そうなのね。じゃあ、人生を謳歌させてもらうわね」


「はい。自身で人生を切り開かれたのなら、ご自由に。ただし」


「あー、はいはい。勝負に勝ってからね。それで、まだ質問いけそう?」


「ええ、大丈夫でしてよ。この先3年の事以外でしたら、大抵はお答え致しますわよ」


 彼女もまだ元気いっぱいらしく、夜はまだ続くようだ。


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