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48.第一印象は3秒で決まる


「はい、じゃあ今日はここまで。来週テストだからちゃんと勉強しとけよ」


疲れ切っていて静かだった教室は4限終了の鐘とともに生気を取り戻しざわざわと騒ぎ出す。私もおなかがすきすぎてもうちょっとで情けない音が鳴りそうなところだった。



「律月ちゃーん!」


「今行くよ」


いつもの通り桜花がリッキーを迎えに来たようだ。リッキーが途中でちらっと私に目配せして来たのでこちらも手を振って返すと少し微笑んで教室を出ていった。やっぱりリッキーは小動物みたいでかわいい。



リッキーのことを考えながらぼっーとしていると友達のエリが弁当を持って近づいてきた。



「また変な顔してる」


「え?!」


私そんなに気持ち悪い顔してたかな...。もしかしたらリッキーを見てると無意識でニヤニヤしちゃうのかも。



「悠は瀬川さんとお弁当食べないの?」


「私がいないとエリが寂しいかなーと思ってね!」


「それはありがたいね」


エリは中学校からの友達だしかなり気のおけない関係だ。それにリッキーも私より桜花の前のほうが気楽のようだしね。ま、いずれ一緒に食べられたらいいなとは思うけど。



「で、瀬川さんいつになったら紹介してくれるのよ?」


エリは机に身を乗り出して私に顔を近づける。私は反射的に体をのけ反らせる。



「いつって、そんなこと言われても...」


私に気を許してくれてはいるんだろうけど、まだ私だって彼女の素のままの姿で接したことがない。それにエリは中身はとても友達思いで優しい子なのだが...まぁ、いかんせん私よりも外見が派手だ。リッキーもエリを見るときにちょっとビビっているし。



「楽しみにしてるのになぁ。私だって瀬川さんに抱きつきたいのに」


「抱き...!?そんなこと思ってたの!?」


思わず口に入っていた卵焼きを吹き出しそうになった。どうしたら思考したらそこに行き着くのよ?



「でも悠いっつも瀬川さんに抱きついてるじゃん」


「嘘...」


「ほんとよ」


まじで...。

リッキーに嫌われるような行動はしないようにそんなにベタベタしてないつもりだったんだけど、無意識でそんなことをしていたのか、気を付けて今度からは確認取ってから抱き着こ。


でもエリはそんなことも観察しているんだ。



ハッ!?


もしかして...。



「仕方ない...か」


「何、仕方ないって?瀬川さんに紹介してくれるの?」


しょうがないんだから!



「そんなに嫉妬しないで!エリにも抱きついてあげるから!!」


後ろに回り込み、ガバっと手を広げてエリに飛びかかる。



「いや、ちょッ!?弁当持ってるから!離れ...」


「エリのこともー好きだからー!」


そんな二股男が浮気バレたときの言い訳みたいなことを言っていると程なくして引き剥がされてしまった。



「あぁ...」


「いきなり飛びつくな!危ないでしょうが」


「でもエリ嫉妬してるのかなーと」


「してないわ!瀬川さん小動物みたいで可愛いからちょっと抱きまくらにしたいだけ」


「え、そっちのほうがやばくね?」


さらっと抱きまくらにされたぞ、リッキー...。



「あ、もう時間だわ」


「はやくたべないと!」


そんなことをしている間に昼休みが終わってしまった。鐘が鳴っているなか急いで弁当の残りをかきこむ。





「悠」


「ふぁい?」


弁当を口の中にパンパンに詰め込んでいると誰かが声をかけてきたのでそのまま返事した。見上げるとリッキーが不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。


喉に詰まりそうになりながらお茶と一緒に急いで口の中のものを飲み込んだ。



「どうしたの、リッキー?」


「えーっと...今週の日曜空いてるかなって」


うーん...。

頭の中の予定表をペラペラとめくって見るが特に予定はない。というかリッキーのためなら多少の用事はキャンセルするとも!



「予定ないよ」


「そっか。あの...もし大丈夫ならテストに向けて勉強会とか...しない?」


勉強会だと!

ふふふ...とうとう私の頭の良さを見せつけるときが来たようだな。



「いいよ!」


そう私は二つ返事で返す。というか私の選択肢にはハイかオッケーしかない。



「よかった。場所はまだ決めてないけど、決まったら今日でも連絡するね」


「うん、わかった〜」


ほんわかしているとエリにつんつんと脇腹を突かれた。そちらに視線を送るとちらっとリッキーのことを見ている。

なるほど。私も紹介してほしいということか。



「あ、大丈夫ならエリも一緒でいいかな?」


「えっと...市倉さんも...ですか...あの」


わかりやすくリッキーの顔が青ざめていくのがわかった。

リッキーよ、そんなにギャルが怖いのかい?ほーれほーれギャルはコワくないよー。ギャルといっても同じ人間。みんな基本的に優しいよー。



「いや、私はその日予定あるからいいよ」


その様子を見てかエリはあっさりと引き下がった。ごめんね、あとからポテトおごってあげるからな。



「そうなんだ、残念。じゃあ、私だけ行くよ!」


「わかった。じゃあ...また」


安堵したような表情を浮かべてリッキーは自分の席に戻って行った。まぁ確かにエリはピアスもしてるし髪も染めてるけど、バリバリのおばあちゃんっ子だし何より自分より他人を優先する優しい子なのだ。

人間の第一印象を覆すのなら2時間話し合わないといけないみたいな話を聞いたことがあるし、私だって最初からこんなに話せたわけでもない。エリもいずれリッキーと仲良くなれる日がくるだろう。




「はぁ...」


横を向くとエリがうつむいてため息をついていた。



「どしたん?」


「私嫌われてるのかなぁ...」


「いやいやいや!そんなわけないって!」


やっぱりさっきリッキーにあんな顔をされたからとても落ち込んでいるようだ。まぁ、確かにリッキーは若干コミュ障なところはあるけどそれでも見た目だけで人を嫌いにはならないと思うよ。




そのあと何とかエリにリッキーはギャル恐怖症でただたんにビビっていただけだと説明してフォローしておいた。







「よっと!」


学校が終わり家に帰ってきた。教科書などが入ったリュックをそのまま部屋の隅っこに投げ捨て、制服のままベットにダイブする。ママはいつも着替えなさいっていうけどその手間が面倒くさい。



そのまま寝転がってぼーっとしているとスマホからラインの通知が来た。





<りつき    


〇(ありがとう)


              (いいってことよ!)


・・・・・・・・・ここから未読・・・・・・・・・

          (今日)


〇(日曜の勉強会の場所なんだけど)

〇(学校近くにある図書館でいいかな?)


                 (いいよー!)

             (時間はいつぐらい?)


〇(午後からの予定)

〇(13時ころに図書館前集合だけど大丈夫かな)


                 (大丈夫だよ)


〇(よかった)

〇(そういえば言ってなかったんだけど)

〇(私と悠のほかに二人いる)

〇(言い忘れてた。ごめん)



なんだって!私はてっきりリッキーと二人っきりだと思っていたのに...。しかし、二人とは誰の事なんだろう。



〇(私の幼馴染なんだけど)

〇(桜花と)

〇(3組の日下部総司って男子)



日下部総司!

彼の第一印象は私からリッキーを奪っていったいわば私のライバル。つまりは最悪だ!リッキーの幼馴染かなにかは知らないけどいつまでのそのポジションに甘んじられると思うなよ!リッキーの横に立つのはこの私だ!!



〇(大丈夫?)


            (おっけー!把握した!)


〇(よかった)

〇(じゃあ総司にも伝えておく)





待っておけよ、日下部総司!

必ずやあの時の恨み晴らしてやる!!

毎日投稿している作者さんをみると本当に尊敬します。物を書くというのはモチベーションというガソリンがなければ動かないものだと思っているのですが、私は燃費が悪いので1週間に1,2度が限度です。よければどうすればいいのか教えてほしいものです。

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