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142.メタノヴァ4日目

【メタノヴァ4日目】お金がありません【陽月リツ】

27,734人が視聴中

 ↑2万 ↓ □

【瀬良リツ】チャンネル登録者数78.8万人






『受付で金属探知機っていうの買った?』


「うん、買ったよ」


『おっけー、じゃああとはそれ使って一攫千金だ!』


「あ...ありがとう」


『うん、じゃあねー!』


〇【軽いなw】

〇【ありがとー】

〇【困った時のゆうちゃん】

〇【助かった】

〇【ありがとう!】


僕は今、一人で街はずれの海岸にやってきていた。

というのも、ゆうちゃんを見つけたらすぐ帰るつもりだったのでそれほど手持ちを持っていなかったのだ。そろそろ旅費が尽きそうだったため、ゆうちゃんに相談して「宝探し」というお金稼ぎの方法を教えてもらった。



「ここら辺で金属探知機使えばいいんだよね」


〇【なんかあるかなー】

〇【一攫千金!!】

〇【宝!!】

〇【誰もおらんね】

〇【人いない】


宝探しはマップ上のどこでも出来るのだがこの海岸が一番いいお宝が埋まっているらしい。なんでもゆうちゃんは伝説のトレジャーハンターとかいう人に教えてもらったらしいけど...いっちゃなんだけどとんでもなく肩書が胡散臭いな。



「お...これ、反応してる?」


〇【おぉ!】

〇【いきなり?】

〇【うおおお】

〇【きちゃ】

〇【宝!!】


金属探知機を携えて海岸をうろうろしているとあるポイントで機械が反応した。

いきなりお宝が見つかったかもしれない。



「えっと...空き缶、ですね」


〇【草】

〇【まぁまぁ】

〇【最初はこんなもんよ】

〇【まあ】

〇【ゴ、ミ】


慎重に掘り起こすと錆びてぺちゃんこになっていた空き缶が砂の中から出てきた。

まぁ...そう簡単じゃないよね。



「空き缶もスクラップとして買い取りはしてるみたいなのでちゃんと持ち帰りましょう」


〇【えらい】

〇【えらい】

〇【そうだね】

〇【うん】

〇【そうなんだ】


ゆうちゃんから送られてきた買取表では空き缶10個で1000円と交換してくれるらしいので全然悪くないと思う。



「金貨とかインゴットとかいろいろあるらしいので出来ればそれ見つけたいですよね」


〇【へぇ】

〇【そうなんだ!】

〇【高そう!】

〇【夢があるね】

〇【ほう】


金のインゴットは重さにもよるが一撃1000万円もありえるらしい...涎が止まらない。











「ふぅ...結構時間たったなぁ。そろそろやめるか」


〇【オツカレ】

〇【お疲れ様!】

〇【すっかり夕日が】

〇【夕日綺麗だなぁ】

〇【1時間くらいやってたね】


ふと顔をあげると周りが薄暗くなっており、水平線の向こう側に夕日が沈みこんでいた。



「やっぱりそう甘くはないですよね」


〇【まーね】

〇【そりゃそう】

〇【金貨ないか】

〇【流石にね】

〇【ドンマイ】


1時間砂浜を歩き回った僕の戦利品は銅貨5枚と空き缶30個、何かが刻印されている金属のプレート1枚だった。



「早速、近くの質屋に持って行きましょうか」


〇【いこー!】

〇【ゴー】

〇【いくらになるかな】

〇【どれくらいになるんかな】

〇【金属プレート高そう】


拾った物をカバンに詰め込んで乗ってきた自転車に乗り込む。街中にも買い取ってくれる質屋はあるみたいだけど、どこも値段は変わらないらしいので一番近いところで換金してしまおう。



「自転車遅いな...これちゃんと重量によって速度制限かかるんですね」


〇【すげぇ】

〇【リアルだ】

〇【ちゃんと再現してあるんだw】

〇【すご】

〇【おっそw】


銅貨と空き缶はそこまで重くないのだが金属プレートが重すぎる。



「近いんでいいですけど街中までは無理ですね。お金貯めて安い車でも買った方がいいのかなぁ」


〇【ね】

〇【お金がとにかく足りない】

〇【いくらくらいで買えるんだろう】

〇【相場感が分からんよね】

〇【そうだね】



「てか...僕、免許ないけど教習所とかあるんだろうか」


〇【それはそう】

〇【草】

〇【まぁ,,,感覚で】

〇【この街って教習所あるん?】

〇【確かに】


そんな話をしながら頑張って自転車を漕いで近場の質屋に到着した。



「ここか...店主がNPCなんで僕でも安心して入れますね」


〇【草】

〇【まぁね】

〇【プレイヤーだったら躊躇するもんね】

〇【安心安全のNPC】

〇【www】


僕のコミュニケーション能力であまり知らない人と関わりすぎるとキャパシティオーバーで膨張して爆発しちゃうからしょうがない。



「買取価格は...お!全部合わせて1万8千円ですね」


〇【おー!】

〇【いいね】

〇【結構稼げた】

〇【いいやん】

〇【いいねー】


銅貨5枚で5千円、空き缶30個で3千円、金属プレートが1万円という査定だ。用途不明の金属プレートが高く売れたのが謎ではある...アンティークとしての価値だろうか。



「でもこの街物価高いからなぁ...。宿泊費、食費でほとんどなくなっちゃいますよね」


〇【そうなんだよねw】

〇【大体の食べ物千円からだもんね】

〇【まぁ1時間でこれだから】

〇【そうよね】

〇【貯金も残り少ないし】


大体1回の食事がフードとドリンク合わせて2千円くらいだから今金欠の僕にとっては食費もバカにならない。



「はぁ...やっぱりなにかバイトでもしなきゃいけないですかね」


〇【ほんとに嫌そうで草】

〇【草】

〇【それが一番確実ではある】

〇【草】

〇【草】


ぼんやりとそんなことを考えていると店の外からとてつもなく大きいバックパックを背負った女性が入ってきた。



「おや...こんなところに人がいるなんて珍しい」


「あ、どうも...こんにちは」


〇【リュックでっか】

〇【同業者?】

〇【女ァ!】

〇【急に声ちっちゃいw】

〇【お】


僕もこんなところに誰かが来るなんて思わず、まったく身構えていなかった。



「ここで換金ということはあの砂浜から来たのかい?」


「はい、人に教えてもらって初めて...」


〇【綺麗なお姉さんだ】

〇【お姉さん?】

〇【緊張中!】

〇【挙動がw】

〇【草】



「見ない顔だけど...もしかして新規の住民さんかな?」


「えっと...10日前くらいに来て、街に出たのは4日くらいですかね」


「なるほど!やることすべてが物珍しくて楽しい期間だな!」


〇【元気いいなw】

〇【たしかに】

〇【たくさんやることあるもんね】

〇【まあね】

〇【いうて2週間近くたってるのか】



「おっと、失礼。自己紹介がまだだったな。私の名前はクリストファー・コンキスタドール。トレジャーハントを生業としている。クリスと呼んでくれ」


「陽月リツ、です」


「陽月...あぁ、もしかすると噂のゆうちゃんのお兄さんか!」


「はは...」


〇【周知の事実で草】

〇【みんな知ってるやんw】

〇【もう知らない人いないんちゃうw】

〇【ゆうちゃんw】

〇【草】


会ったことすらないのに僕の知名度が高すぎる件について。



「あの...ゆうちゃんからあの場所を教えてもらったんですけど、もしかして伝説のトレジャーハンターさんって...」


「あー、おそらく私のことだろうな。その呼び方はすこし恥ずかしいけど...」


〇【そうなんだw】

〇【自称じゃなかったのかw】

〇【伝説のトレジャーハンターw】

〇【草】

〇【ゆうちゃんが言ってただけか】



「ところで何かいい物でも見つかったかい?」


「あー...銅貨5枚と金属のプレートが1枚ですね」


「なるほど...まぁ、最初にしては上々じゃないかな。あそこは他の箇所と比べると金貨が見つかる確率が高いから粘り強く探してみるといいさ」


〇【へぇ】

〇【あるんだ】

〇【そうなんだ】

〇【金貨見つけたいな】

〇【へー】



「あの...クリスさんはあの場所にいなかったみたいですけど...どこからいらっしゃったんですか?」


「ふむ...ここだけの話にしておけるかい?」


「え、あぁ、はい」


〇【なんだ】

〇【お】

〇【え?】

〇【なに?】

〇【え】


そういうとクリスさんは周りをキョロキョロと見渡して僕に近づいてきた。



「実はあの海岸の沖に存在する複数の沈没船を探索しにいっていたんだ。まだ私以外誰も見つけていないけどな」


「え...沈没船があるんですか?」


「あぁ。あの砂浜に埋まっている金貨類もそこからの漂流物だ」


〇【へー!】

〇【そうなんだ】

〇【ちゃんとトレジャーハンターじゃん】

〇【すっご】

〇【まじか】



「少し携帯を出してもらえるかな?」


「あ、はい...え?これは...」


「その沈没船が沈んでいる位置を共有した。もし興味があったら行ってみるといい」


〇【まじか!】

〇【えええええええええええええ】

〇【なんで?】

〇【いい人すぎる】

〇【まじか】


すごいありがたいのだが...まだ会って数分しかたっていない人間にどうしてこんなことまでしてくれるのだろうか。



「なんでそんな大事なこと教えてくれたんですか...?」


「あそこにある宝は私一人では有り余るし...最初のうちはお金に困るだろうからな」


〇【いい人や】

〇【ありがたい】

〇【いいな】

〇【めっちゃ優しい!!】

〇【クリスさんすこ】



「それに...私、実は密かにゆうちゃんを推していてな...。もしよかったらゆうちゃんにもよろしくと言っておいてくれ」


「は、はぁ」


〇【草】

〇【ゆうちゃん推し住民きちゃw】

〇【ゆうちゃん様様や】

〇【アイドルにでもなるんだろうかw】

〇【ゆうちゃんw】


顔が広いどころかまだ来たばかりのはずなのにファンまでいるって...ゆうちゃんがこの街を牛耳る日も遠くはないのかもしれないな。



「もしよかったら連絡先を交換してもいいかな?」


「あ、はい」


〇【連絡先GET!】

〇【おー!】

〇【連絡先増えた!】

〇【女しかいないw】

〇【やったー!】



「長話失礼した。もし困ったことがあれば連絡してくれ」


「ありがとうございます」


「では」


〇【またー!】

〇【ではまたー】

〇【ありがとう】

〇【クリスさん♡】

〇【ではまたー】


そういってクリスさんは店を出て行った。



「かっこいい人だなぁ...」


〇【ね】

〇【それにめっちゃ優しかった】

〇【ねー】

〇【かっこよかったね】

〇【頼りになるかんじだった】


新しく増えた連絡先を見つめながらそう呟いているとなぜか出て行ったクリスさんが気まずそうに店に戻ってきた。



「え...クリスさん?何かありました?」


「...かっこつけて出て行ったのはいいんだが...換金するのを忘れていてな」


「あぁ...」


〇【草】

〇【草】

〇【ポンじゃねーかw】

〇【かっこつけてたのかよw】

〇【草】


先ほどまでの威厳はどこかに消え去った赤面顔でクリスさんはそそくさと換金をして出て行った。



「面白い人だなぁ」


〇【草】

〇【かっこいい→面白い】

〇【面白い人になっちゃったw】

〇【草】

〇【おもろいw】


僕はそっとクリスさんの連絡先を【クリスさん(ポン属性お姉さん)】に編集しておいた。

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