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107.打ち合わせ1回目


僕にとって超新星爆発並みの衝撃をもたらしたあのDMが送られてきて2日経った。


あの後、悠にサポートされながらなんとか依頼を承るという旨の返信をして、今日担当の方と通話にて大まかなイメージを共有することになっている。


正直、2日経っても5分5分でまだ夢なんじゃないかと思っている。


だって、今ノリに乗ってるあのフロムヒアだよ?リリカ様にVすことして認知されたことはあっても運営から公式で瀬良リツに依頼が来るとは思ってもみないことだよ...。



しみじみと感慨に浸っていると打ち合わせの時間になったため、チャットで断りがあった後あちらから通話がかかってきた。



『もしもし。こちらフロムヒアの佐井です。聞こえておりますでしょうか?』


「あ、大丈夫です」


通話をかけてきたのは佐井というDMをくれた採用担当の方だった。勝手に男性のイメージだったけど声を聞く限り真面目そうな女性のようだ。



『改めまして、今回はご依頼承っていただいてありがとうございます』


「いえいえ。自分もフロムヒアさんに関わる機会をいただいてとても感謝しております」


社会経験のない僕からしたらこの受け答えが適切なのかはわからないが当たり障りのないことを言っておけば大丈夫だろう。



『では早速なのですが、まずは制作費用についてお聞きしたいのですが...』


「あ、はい。キャラデザとモデリングで5万円ですね」


『モデリング込みで5万...相当安いんですね』


僕の言葉に佐井さんは少し驚いたように言葉を返した。僕のリスナーもだけどやはりこういう反応が返ってくるのか。



「はは...正直相場がわからなくて。あ、費用の前に確認しておきたいことがあるんですけどいいですか?」


『はい、なんでしょう?』


そういえば一つ確認しておかなければならないことがある。

僕は叡知民のみんなにフロムヒアに受かったらタダでモデルを提供するって約束したんだった。正直、よく考えてみればモデルの制作費用は運営持ちなのだが義理は通しておきたい。



「その...僕に依頼をしてくれた子っていうのは、僕のリスナーなんでしょうか?」


『あぁ!確かあの子瀬良先生の配信をよく見ていると言っていました。それが何か...?』


やっぱり依頼してきたのは叡知民だったのか!あの配信を見ていたうちの800人が応募したと言っても今を時めくフロムヒアの何千倍という倍率をよく潜り抜けてきたものだ。



「いえ、僕の配信でリスナーが受かったらタダでモデルを提供すると約束したもので」


『タダですか...』


佐井さんの声が渋る。まぁ確かに運営としては依頼をしている以上制作費用を払わないというのはこちらがよくても会社の信用問題に関わってくるからなぁ。



「はい、やっぱり厳しいでしょうか?」


『そうですね...。他の方に払って瀬良先生にだけ払わないというのもあれですし』


言っていることはよくわかる。でも約束した以上僕も何らかの形でそれを果たしたいのだが...。



うーん...。


あ、それならこういうのはどうだろうか。



「あの、こういうのって聞いていいのかわからないんですけど、新衣装って運営持ちなんですか?」


『新衣装ですか?例外はありますけど基本的にはライバーさんが払うことにはなっていますね』


やはり。ユメセカイかどこかの配信で新衣装は個人でイラストレーターさんに依頼を出して運営には許可をもらうだけだと聞いたことがあった。



「であれば新衣装を依頼するときはそれを無償で提供するということでどうでしょうか?」


『こちらとしては問題ありませんが...本当にいいんですか?』


「はい、僕としても依頼してくれたことが嬉しいので」


『そういうことであれば』


なんとか納得してもらえたようだ。まぁ、まだデビューもしていないのに新衣装の話なんて早すぎるかもしれないけど。



『では次の話に移ろうと思うのですが大丈夫ですか?』


「はい、大丈夫です」


『では次になんですが、キャラデザについての詳細についてお送りしましたのでご確認いただけますか?』


「わかりました」



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【設定】

名前:シュヴァルツヴァルト・ゾル・アブグランド

本名:黒森玲音(くろもりれのん)

年齢:5世紀(15歳) 高校1年生

身長:160.5cm

体重:43.5kg

誕生日:2月29日

出身:ゾルアーク帝国(北海道)

一人称:我


【キャラデザ】

『髪』

・黒髪ショートヘア

・青のメッシュ


『顔』

・ツリ目気味

・オッドアイ(眼帯の下は青)

・八重歯

・ピアスあり

・十字のデザインの眼帯


『身体』

・ブレザーの制服(黒基調)

・ワイシャツ(水色)

・ネクタイ(赤)

・指貫グローブ(外すと魔法陣)

・チョーカー

・ショートブーツ


【紹介】

黒森玲音(くろもりれのん)は左目に邪神を宿した魔王の生まれ変わりである。かつて大陸の1/3を占めるゾルアーク帝国を支配するもロクレギス王国からやってきた勇者に破れて深い眠りについた。

という設定の中二病を患った何の力も持っていない普通の高校1年生。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




送られてきたPDFファイルにざっと目を通す。デザインの要望は『黒髪ショートカット』に『眼帯』をしていて『十字架などのアクセサリーがあしらわれた女子制服』か...。


これって...。


一番下の備考欄には「中二病」と書かれているのを目ざとく見つける。



「中二病キャラですか」


『はい。もともとは魔王の生まれ変わりという設定そのままだったのですが、中二病ということにしておいた方が面白いかと思いまして』


「ほう...」


確かに魔王の生まれ変わりというVライバーはいても中二病キャラのVライバーは真新しくていいと思う。しかし、それって後々キャラブレしたときに困らないんだろうか。


そんな僕の言外の間を読み取って佐井さんは答えた。



『本人も中二病だった時があったらしくて。それを黒歴史ではなくて開き直って演技として活かそうということらしいんですよ』


「なるほど...」


本人の実体験だったのか。

それにしても黒歴史として封印するのではなくて演技のこやしにするとは...逆転の発想だな。



「あの...今回の応募って本人に合わせたキャラデザをするということでしたよね」


『はい、キャラクターと本人のギャップを減らすためにそういうコンセプトを取り入れてます』


「そうでしたら出来れば本人の声が聞きたいんですけど、音声データとかあります?」


本人とキャラクターの性格的なギャップをなくすというのも大事だが、それ以上に本人の声質がそのキャラデザに合っているかも大事だ。

まぁ...めちゃくちゃ可愛らしい見た目の幼女系Vライバーの声がゴリゴリの低音お姉さんというのもギャップがあって面白いけど。



『あ、すみません!音声データを送り忘れておりました。今送ります』


「あぁ、はい」


『1次審査の応募動画送りました』


「はい、確認しました。ちょっと聞いてみます」


そう言って佐井さんから送られてきたファイルを開く。



『よくぞここまでたどり着いたな、ロクレギスの勇者よ!我が名はシュヴァルツヴァルト・ゾル・アブグランド。この世界に混沌を齎す者...』


おぉ...僕が言うのもなんだが、女性にしては結構かっこいい低音系だ。それに聞く限り彼女なりの世界観がなんとなく固まっているらしい。



『さぁこの長きに渡る闘いに決着をつけよう!全力でかかってくるがいい!!』


実体験ということもあってなんだか気持ちがこもってるなぁ。



『くっ...ここまでか。しかし、勇者よ。ここで終わりだと勘違いしていないか?』


しばらく間が空いてまた音声が再開した。どうやら勇者に倒された後らしい。



『クハハハハハ!!我が消滅すれば右目に封印されし邪神が解き放たれる!せいぜい奮闘することだな!!!』


そう言って音声は終わった。魔王の捨て台詞としては120点をあげてもいい熱演ぶりだ。

音声を聞く限り、彼女はかなりロールプレイが上手いタイプらしいな。最近のVライバーはRPというより声質や話の面白さを重視する傾向になるので初期のVライバーっぽくて僕は好きだ。



「なるほど...かなり低めのお声なんですね」


『そうですね。かわいい系よりは凛々しい系にしてもらえると』


「了解しました」


送られてきた詳細設定を改めて確認する。キャラデザの指定だけでなくキャラクター本人の設定なども細かく書かれているので一から描くよりは断然描きやすそうだ。



「じゃあとりあえず来週までに何枚かラフを描いておくので次はそれを見て修正していくってことでいいでしょうか?」


『そう...ですね。こちらとして早い方が嬉しいのですが、瀬良先生の予定的に大丈夫なんでしょうか...?』


「あぁ、冬コミならスケジュールを組んでやっているので大丈夫です」


まぁ正直言うとぎっちぎちのスケジュールになんとかねじ込むため1ミリも支障がないと言えばウソになる。でもラフを描き出すだけなら平日にちょっと睡眠時間を削って無理をすれば行けそうだし、なにより僕の命を削ってでもこの仕事はやり遂げる。



『でしたらありがたいです。では、来週もこの時間ということで』


「はい、お疲れ様です」


『お疲れ様ですー』


・・・。



「はぁ...」


先に通話から落ちて深くため息をついた。

正直、画面越しの会話とはいえやっぱり初対面の人と長時間話しをするのはコミュ障にとってキツすぎる。後半なんてちょっと声震えながら話してたもん。



「今の時間は...」


部屋に置いてある時計を覗くと現在の時刻は午後6時を少し過ぎたところ。



「さてと」


ちゃちゃっとお風呂と晩ご飯を済ませて今週も夜に作業配信しようかな。

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[気になる点] セラリツの生き急いでる感は異常 お義父さん 貴方が何とかするんですよ
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