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104.修学旅行2日目

修学旅行2日目。


本日は朝にホテルを出発して清水寺に全員で参拝して1時間ほど探索した後、ホテルには戻らずにその場で担任からの時間厳守という注意を長々と聞いて現地解散の運びとなった。



今日のこの後は京都市内の自由行動の予定だ。

もともとはクラス内の人とグループを組まなければならないのだが、そこらへんは教師陣も暗黙の了解として出発地点からある程度行ったところで他クラスの人と合流するという人が多いらしい。


かくいう僕も一応はクラスのグループにいるのだが早々に解散して悠と一緒に合流地点へ向かっていた。



「えーっと...あ、いたいた!おーい」


待ち合わせていた地点で友達を一緒に話していた桜花を見つけて悠が遠くから声をかける。悠が手を振るとあちらも気づいたらしくぶんぶんと手を振り返した。



「悠ちゃん、りっちゃんおはよう!!」


「おはよう」


「ごめーん、うちの担任話長くてさぁ。待たせちゃった?」


「全然!私も今来たところだからさ」


比較的僕と悠は同じクラスだから一緒にいることは多いんだけど、悠と桜花はもともとどちらもコミュ力が高いこともあって前よりも仲が良くなっている。



「あ、桜花借りてくねー」


「おかまいなくー」


一緒に待っていた桜花の友達に僕も一応会釈だけして駆け足で二人の後を追いかける。



「やっぱいつメンは気を使わないからいいよね」


「そうだね」


桜花の言葉に僕も心から賛同する。クラスのみんなも優しいから僕のことを仲間外れにするわけじゃないんだけど僕にコミュ力がないばっかりに気を使わせしまうのでありのままで接せられる面子だと気が楽だ。



「総ちゃんも来ればよかったんだけどねー」


「日下部くん...」


「悠、どうした?」


「いや、なんでもないよ!」


総司の名前が出た瞬間、なぜかいつも晴れやかな悠の顔5%ほど曇った気がしたが瞬きする間に元に戻ったのでなんでもないというなら気のせいなのだろう。



「総司は部活の連中と行くって言ってたからしゃーない」


「そっかぁ」


僕も一緒に回りたくはあったけど流石にパッと見ではあるが男1人に女3人のハーレム状態に見えなくもない図式には加わりたくはないだろう。



「最初どこいくんだっけ?」


「二条城ね」


「お城!」


今日のルートは基本的に僕が選んだ名所をもとに組み立てている。悠や桜花が行きたいところは修学旅行の日程に組み込まれているので僕に丸投げという形になった。



「お城とか登れるのかな?」


「二条城って天守閣あったっけ?」


「たしか江戸時代に焼失してるからなかったと思う」


「へぇー、りっちゃん詳しいね」


「事前にちょっと調べたからさ」


僕の権限で行く場所を選んだ以上下調べは万全である。聞かれてもいないのにペラペラ語るうんちくマンにはならないように気を付けるけど。









「門すごい大きかったねー!」


「あとで写真おくるよ」


僕たちは入城料を払い東大手門から城内に入って二の丸御殿に向かう。



「桜花、ここ通ってみて」


「ん?わっ!!めっちゃ音鳴る!」


「鴬張りってやつね」


悠の言葉に首を振って肯定する。



「へぇ面白いね!なんでこんな音するの?」


「たしか...夜間の侵入者を知らせるため、とかだったかな」


「リッキーかしこ!」


へへ...悪い気はしないな。



その後、橋を渡って元離宮や天守閣跡を見て回った。僕は一応下調べしていたとはいえもともとの知識は桜花と同じくらいなので古き良き木造建築を見て圧倒されていたのだが、悠はお寺とかお城とかそういう系に興味があるらしくめちゃくちゃ写真を撮りまくっていた。



二条城を見て回った後、僕たちは龍安寺へと向かった。龍安寺は悠が唯一行ってみたいとリクエストした場所でかの有名な枯山水が見たいということだった。



「わびさびだね」


「じゃぱにーずわびさび...」


「わさび?」


僕たちはぼーっと石庭を眺めながら黄昏ていた。15の石が同時には見られないというのは不完全を表しているという説があるらしい。

それはそれとしてバチバチのギャルがこの中で一番侘び寂びを理解しているというのが面白い。



次に向かうのは京都市内で龍安寺から真逆の方向にある伏見稲荷大社だ。伏見稲荷大社と言えばやはり千本鳥居。写真映えするスポットだしここは欠かせない。


現在の時刻は16時を少し回ったところ。移動時間がネックではあるがホテルへの集合時間は19時だが、表参道から本殿や千本鳥居をゆっくり見て回ったとしても1時間はかからないだろうから余裕だ。


稲荷山の山頂までの参拝ルートを巡るいわゆる「お山めぐり」だと2時間くらいはかかるらしいが、僕なら1時間、桜花なら30分もあれば走破できる自信がある。悠に体力がないので流石に実行はしないが。








「うわぁ...綺麗だね」


「そうだね!」


僕たちは伏見稲荷大社の千本鳥居の中をゆっくりと歩いていた。時間もちょうどいい感じに深まって夕焼けが鳥居の中に差し込んで幻想的な光景が広がっていた。



「写真とろ!」


「いいよ。桜花も並んで」


「ん!」


僕がスマホを取り出して構えようとすると悠に手を引かれた。



「ほら、リッキーも!」


「え、でも...」


「3人で撮らなきゃ意味ないっしょ?あ、すみませーん。写真撮ってもらってもいいですかー?」


悠は近くにいた老夫婦に頼んで自分のスマホを手渡した後、さらっと僕の背中に手を回してきたので内心めちゃくちゃドキッとした。


桜花からニマニマした視線を送られてきたので、顔に出していないつもりだったが長い付き合いの桜花にはバレているらしい。



「撮りますよー。はい、チーズ...これで撮れてるかな」


「「ありがとうございましたー!」」


「ありがとうございます...」


撮ってもらった写真を見ると観光雑誌に載せられそうなくらいめちゃくちゃ綺麗な映りではあるのだが...僕の顔が完全に硬直していて視線もカメラの方向とはずれている。これは流石にバレる。



そんなこんなで本殿で参拝も済ませ、少し早いがホテルへ向かうことにした。



「あ、ちょっと待って!」


「ん、どした?」


ホテルに向かう途中で道を歩いていると悠が急に立ち止まったので、何事かと僕たちは悠の指さす方向を向く。



「リッキー...あれ!!」


「はっ!!」


「え、何?」


悠の指さす方向にあったのはオタクカルチャーの発信地アニメイド京都店。そしてその外観に設置されているモニターにでかでかとエリカ組が映し出されていた。


そういえば全国の何か所かのアニメイドでフロムヒアコラボを実施しているという情報が出ていた。正直、今回は修学旅行だし僕だけの我儘で京都に関係ないところに寄るのもなんだしなぁ...と諦めていたのだが思いがけず通りかかるとは!



「時間は...」


「まだ余裕だよ!ちょっと寄ってこうよ!」


悠もちょっと興奮気味であるところを見るとこの半年ちょっとですっかりオタクに染まり切ったものだと感慨深い。



「桜花、いい?」


「いーよ!」


「じゃ、ちょっと寄ってこうか」


いつメンの中で唯一非オタクである桜花の了承も貰ったところで小走り気味にアニメイドへ向かう。



『フロムヒア、全国アニメイドコラボ実施中です!』


『アニメイド京都店に来てくれてありがとう』


『京都店でエルたちと握手!!』



「すげぇ...」


「京都店はエリカ組とコラボしてるんだね」


今日行った二条城や龍安寺、伏見稲荷には申し訳ないのだが正直言って今この瞬間が一番興奮している。

店内に入るとすぐ横にフロムヒアのコラボコーナーが設置されており各メンバーの等身大パメルの設置されてあるブースがあり、フロムヒアファンが推しと一緒に写真を撮って楽しんでいた。



「リッキー写真撮ってあげるよ!ほら横並んで!」


「え、いいの?じゃあ...」


写真や動画を取られるのはあまり好きじゃないけどリリカ様の隣なら話は別だ。記録に残しておかなければもったいない。



「はい、おっけー!」


「うわ...めっちゃうれしい」


撮ってもらった写真の中の僕は伏見稲荷での硬直した顔とは違って満面の笑みを浮かべていた。



「次、うちも撮って!」


「おっけおっけ」


悠も一目散にアリス様のところに向かって写真を撮る。せっかくなので桜花も写真をとってあげることになり、なんとなく桜花の直感でソラくんの隣に立たせた。



店内にはステッカーやファイルなどフロムヒアのグッズが所狭しと並べられている。



「待ってリッキー、アクスタあるよ!」


「め...っちゃほしい!」


フロムヒア公式から出ている通常の立ち絵のアクスタとは違い、アニメイドコラボ用に新たに描き下ろされた限定衣装バージョンだ。



「待ってリッキーこれ...」


「店舗限定...!」


アクスタやファイルそのものは通販で買っても同じなのだがアニメイドの店舗で買うと2000円ごとに店舗限定のポストカードが付いてくるのだ。フロムヒアメンバー8人の中から完全ランダムだが、ぜひともリリカ様を入手したい。



「買い、だな」


「もちろん」


お土産用の予算はちょっと多めに持ってきているが流石にそういくつも買えないのでエリカ組のアクスタだけ買うことにする。1つ1500円なのでポストカード2枚分...あとは運だ。



悠もアリス様と四季波のアクスタをもってレジに並ぶ。



会計を済ませ中が見えないようになっている封筒みたいなものに入っているポストカードを受け取り店の外に出た。



「リッキー、もしアリス様が出たら...」


「わかってる。悠もリリカ様出たら交換してね」


「がんばれー」


悠と僕はこくりとうなずいた。僕たちは緊張感のない桜花に見守られる中、覚悟を決めてゆっくりと封を開いた。



「でりゃー!」


「うおー!」


奇跡かもしれない。掲げた僕たちの手には見事にリリカ様とアリス様のポストカードが握られていた。



ただし僕の手にはアリス様が、悠の手にはリリカ様が。



そそくさと僕たちはお互いのカードを交換して熱い握手を交わした。なんとなくいい結果だったんだろうという雰囲気を察して桜花も拍手を送る。



なんだかんだあったが正直あとから今日のことを思いだしても一番のハイライトはここだと思う。



「帰るか...」


「帰ろ!満足満足!」


時間を忘れて楽しんでしまっていたので帰りはちょっと小走りでホテルに向かい、ギリギリ集合時間に間に合った。途中で悠を背負いながら息も切れずに走り切った桜花は流石陸上部なだけある。





ちなみにもう一枚のポストカードはソラくんが出たので写真を撮った桜花にあげた。今度時間があるときに見てみると言っていたのでこれが桜花をV沼に沈めるきっかけになるかもしれない。




清水寺→二条城→龍安寺→伏見稲荷大社→ホテルのルートですけど、多分実際は時間内には回れないと思う。

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