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童話と詩作と物語

少年と太った男

作者: 辻堂安古市
掲載日:2025/10/10

もし君たちに


魂が宿っていたのだとしたら


あの日 あの時


本当はどう思っていたのだろうか







少しだけ昔のお話です。

多くの国が話し合いではなく、

力で物事を解決しようとしていた、

そんな悲しい時代がありました。


力を示さなければ国が亡びる。

生き残るためには他の国を奪い、

他の国の言葉や文化も奪う、

それが「正しいこと」だった時代がありました。


どの国も生き延びるために戦うことを選びました。

そんな「戦争の時代」を終わらせるために、

ある国で「秘密兵器」が造られました。



すごい威力を持ったその「秘密兵器」は、


「少年」

「太った男」


と、名付けられました。


みんなは口々に言いました。


「こんなすごい兵器には、どこもかないっこない」

「この威力を見たら、この戦争もすぐ終わるだろう」


そうなんです。

最初はだれも本当に使うなんて思ってなかったのです。




「少年」は聞きました。

ねぇおじさん おじさん

ぼくたちは平和のために作られたんだよね?



「太った男」は答えました。

ああ少年よ 少年よ

私たちは平和のために作られたんだよ。

これ以上多くの人が死なないためにね。





でも。






おじさん おじさん


ぼくは ぼくはね

あんなことはしたくなかったんだよ

あんなことになるって思わなかったんだよ





少年よ 少年よ


私は 私はね

知っていたんだ 知っていたんだよ

あんなことになることは 分かっていたんだよ






8月6日。

ぼくは飛行機に乗せられた。

日本のHIROSHIMAという街の上空で

ぼくは落とされた。



ぼくのせいで熱と光と暴風が街を粉々になった。

そしてそこにいる人たちを焼きつくしてしまったんだ。

それからしばらくして降った「黒い雨」は

さらに多くの人を苦しめてしまったんだ。




8月9日。

私もまた飛行機に乗せられた。

日本のKOKURAという街の上空では

落とされずにほっとしていたのだが

そのままNAGASAKIへ向かい

私もまた落とされた。


私もまた、熱と光と暴風で町を破壊し

そこにいる人たちを焼け爛れさせガラス片でハリネズミの様にしてしまった。



私たちはこの世に「地獄」を作る、「原子爆弾」という殺戮兵器だったのだ。






我々は、「平和をもたらすもの」ではなかった。

我々の名は、永遠に「地獄をもたらしたもの」として人々の間に語り継がれるのだろう。




ならばせめて。



「リトルボーイ」

「ファットマン」


この名に続くものが今後永久に現れないことを我々は願う。





お互いの正義を振りかざし憎しみをぶつけ合う戦争の蔓延る世の中ではなく


人々が手を取り合ってお互いを祝福できる世の中を



そして我々の兄弟が永遠に使われないことを


ぼくは心から願っている。


私は切に願っている。









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