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シスター見習いは神様の敵を許しません 7

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 ややして、礼拝堂にフランシスが戻ってきた。

 そのころにはすっかり眠気の飛んだエルシーは、礼拝堂の外が気になって仕方がなくて、そわそわと意味もなく立ったり座ったりをくり返していた。

 そばにやってきたフランシスは、エルシーの頭を撫でて、短く「犯人は確保した」と言った。


「犯人?」

「捕まえたかったんだろう? 礼拝堂を汚した犯人を」

「え!?」


 まさか、さっきちらりと見えた男がそうだったのだろうか。

 驚愕して言葉も出ないエルシーに、フランシスは小さく笑う。


「残念ながら、お前が隠し持っている竹ぼうきの出番はなくなってしまったな」

「……ぅ」


 フランシスが礼拝堂に入って来たときに竹ぼうきを握りしめていたことをからかわれて、エルシーは赤くなった。それを言うのはちょっと意地悪だ。


「そ、それで……その人は、どうして礼拝堂に泥をまいたりしたんですか?」

「それについてはもうじきわかるだろうが、誰かの命令でやったことは確かだろうな」

「命令……」


 すると、先ほど見た人影のほかにも犯人がいるということだろうか。エルシーはムッとした。神聖な礼拝堂を汚させる人は、例え直接手を汚していなくても許せない。


「今すぐに捕まえましょう!」


 エルシーは息巻いて長椅子の下から竹ぼうきを取り出したが、フランシスが「待ちなさい」と取り上げてしまった。


「まったく、勇ましいのはいいが、人の話は最後まで聞くものだ。今、クライドが捕らえた男を尋問しているし、命令した人物にはある程度の目星がついている。エルシーが出る幕はない。それとも何か? 君はこの竹ぼうきで、犯人の頭を殴らないと気が済まないのか?」

「そういうわけじゃ……ないですけど」


 エルシーとて、犯人が反省して、もう二度と礼拝堂を汚さないというのならばそれでいい。

 エルシーがしゅんと俯くと、フランシスは竹ぼうきを長椅子に立てかけて、ふにっとエルシーの頬をつついた。


「あとはこちらで対処する。だからおとなしくしておくんだ」

「……はい」

「いい子だ」


 まるで子供扱いだ。

 外が落ち着くまでしばらく待っていようとフランシスに言われて、エルシーはしょんぼりと長椅子に座る。

 フランシスも隣に座って、籠からアップルケーキを取り出すと口に入れた。


 どちらも口を開かないから、自然と落ちた静寂に、エルシーはちょっぴり落ち着かなくなってくる。

 その時だった。

 背後の扉が開く微かな音に、エルシーはハッとした。

 振り返ると、薄暗い礼拝堂の中、僅かな蝋燭の光を反射して、長い金髪が浮かび上がる。

 エルシーは思わず立ち上がった。


(クラリアーナ様!)


 クラリアーナの存在を認めた瞬間、イレイズの言葉が脳裏をよぎった。


 ――礼拝堂を汚したのは、クラリアーナ様ではないかしら?


 エルシーが反射的にフランシスが立てかけた竹ぼうきに視線を向けると、それに気が付いたフランシスが、そっとそれを遠ざけつつ静かに言う。


「エルシー、違う。クラリアーナは犯人ではない。……むしろ彼女は、こちら側だ」


 エルシーは、きょとんとした。


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