交流戦、はじまります!
バァンッ!!バァンッッ!!!
「きゃぁっ!!な、なに!?」
穏やかな時間が流れる学園に、突如として二発の発砲音が鳴り響いた。
ゆっくりと目を開け周りを見回すと、何故か私以外は誰も驚いている様子もない。
それどころか隣と楽しそうに顔を合わせている子もいる。
どうしてみんなはこんなに落ち着いていられるのか。学園内で発砲があったというのに……。
そうだ、ケイは!
私は教室を見回しケイの姿を探した。
……ケイが……いない!?
まさか、もう音が鳴った場所に向かって……!
教室の窓から身を乗り出すように音が聞こえた方角を見た。
しかし、他の建物で隠れていて、ここからではとても確認が出来そうにない。
状況の把握とケイのいる場所に向かうべく私は教室の扉に手を掛けた。
すると私が開くよりも先に扉が勝手に開いた。
「ユリア?どうしたのそんなに思い詰めた顔して?」
「え、ケイ!!どうしてっ!?」
「どうしてって…………あぁ、なるほど、そういうことか……」
なんとケイはこの状況下にもかかわらず、真面目な顔をした私を見てクスッと微笑を零した。
僅かとはいえ私が本気で心配したのにコイツは……!
「ふふっ、ユリアの愛が乗ったかわいい拳はあとでもらうよ。それより今はこれを配らないと」
ケイと後ろにいた先生の両手は積まれた紙で塞がっていた。
先生だけではここまで運ぶのが難しかったため、ケイに手伝ってもらったのだそうだ。
「それでは皆さん、先日お話した合同競技会の説明をしますね~」
合同、競技会……?初耳なんですけど……。
「その顔、やっぱりユリアは先生の話聞いてなかったみたいだね。あの時のユリアの大丈夫って言葉を信じてしまった私にも非があるね……」
「ユリアさん、今度はちゃんと先生の話聞いてくださいね」
先生にも注意を受けてしまった……。
思いだした。私、説明されていた時に午後の陽だまりが心地よくて。うっかりうたた寝していたんだった。
みんなにもまた笑われてしまったし、うぅ……恥ずかしい……。
「合同競技会とは、我が学園と他校との交流を目的としたいわば親善試合のようなものです。これまで培った剣術や体術をはじめとした、総合的な実技能力を競います。ルールは各校から代表者が5名ずつ選ばれ、勝者が連続して戦うシンプルな勝ち残り戦です。代表者は自薦他薦は問いませんが、定員を超えた場合は模擬戦の勝敗で決められます。この行事は一年生のみの開催となるので、皆さんぜひ参加してくださいね!」
先生も楽しみにしているのがよく伝わる説明が終わると、ケイはすぐさまみんなに囲まれた。
それもそのはず。何といってもケイはクロエさんと学園の双璧と称されているのだから。
生徒の中にはケイが一番強いと主張するグループもあるそうだ。
今頃クロエさんのクラスも、私たちと同じような光景になっているはずだ。
……何だかさっきまでより周りが騒がしくなっている……。
今度は何が……と体の向きをケイのいる方向に変えようとすると、私が数人に囲まれていた。
「聞いてよユリアさん!ケイさん、競技会に参加しないって言うのよっ」
「ユリアさんからも何か言ってほしいです~っ!」
普段クラブの助っ人を頼まれても断らないあのケイが、こんなに推薦を受けても断るなんて……。
何か不都合でもあるのだろうか。
参加する流れだと思っていたこともあって、かなり意外だ。
「ケイ、どうして参加したくないの?」
理由を聞くと反対方向に目を逸らし、唇を小さく動かす。
しおらしいケイなんて珍しい、最後に見たのはいつだっただろう。
せっかくだしもう少し見ていたい気もするけど、今はみんなもいるし、解決を優先しよう。
「みんながケイの戦う姿を見たいと言ってるのよ?それに、私もケイのかっこいいところもう一度見てみたいわ。だめかしら……?」
「…………わかった。参加するよ……」
その一言が出ると教室が揺れるほどに喜びの声が湧きあがった。
私もケイの戦うところ見たいのは本心だったし、断られたらどうしようと思ったけど、とりあえず解決できてよかった。
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寮に戻る途中、なぜ最初みんなの推薦を断ったのか聞いてみた。
するとポニーテールを前に持ってきて、照れ臭いのを隠したいのか毛先でくるくると遊び始めた。
「だって……みんなの推薦よりもユリアからのお願いがほしかったから……」
「へぁっ!?な、ななな何を言ってるのよ!!!」
油断している時に出してくるこのギャップが……!!
~~~~~もうっっっっ!!!!!!




