66話 キラキラ
部屋に戻ると、2人が折り紙をして遊んでいる。小4(10歳)にしては幼稚な趣味って思う人もいるだろうが、何事も道を究めれば、とんでもない事になるのだ。
「小桜お兄さん、どうでしょう?」
月山さんが差し出したのは、鶴・犬・蛙という初歩な品々だが、美羽ちゃんはというと、
カンガルー(子持ち)
孔雀(立派な飾り羽)
ドラゴン(超立体的)
「うわぁ……、相変わらず凄いね。因みにそれは?」
「ハシビロコウですけど、似てませんか?」
「いや、驚異の再現率だよ」
きっとノリの良い外国人が見たら、嬉々として踊り出すレベルだ。折り紙は日本の超ローカル伝統工芸だけど、奥深いなぁ。そんな感慨?に浸っていると、美羽ちゃんが近寄ってきてから小さな声で、
「お兄ちゃん、これから謝るので、傍にいて下さい」
うん、自分から謝ると言ってくれて、兄っぽい立場としては嬉しい限りだ。それにこういう恥を晒す場面で頼られるって、信頼されている証だよね。
……………恨むぜ、母さん。
この要望に、小桜さんっぽく首をフルフルと横に振ってから、
「月山さん、良かったら今日ウチで夕食どう? 母さんが食べながら美羽ちゃんの話をしたいってお誘いがあるんだけど。勿論、その後に車で送るから」
この問いかけに美羽ちゃんが「えっ?」って感じで硬直。うん、確かにこのタイミングでこんなお誘い出たら、邪推しちゃうよね。
「親に確認しても?」
そう言って月山さんが自分の携帯を取り出し、家族に連絡を取っている時、美羽ちゃんが小声なのに妙に響く声で、
「おおおおおお、お兄ちゃん! どういう事ですか!?」
「ごめん。謝るのはちょっと待って! 悪いようにはしないから!」
「怒ってます? もしかして怒ってますか?」
「いや、俺も母さん怒ってない。これは本当」
「じゃあ何で?」
ごめん、ネタバレ禁止です。このダンマリに美羽ちゃんが俺の体を揺さぶり続けていると、
「うふふ、夕食OKです」
「よし、じゃあ歓迎するね」
「お誘い、ありがとうございます」
この展開に美羽ちゃんは不服そうで、俺のお兄ちゃん株も暴落したに違いない。だがもう後には引けない訳で、次の行動に移らねば。だけどその前に、
「あと月山さん。家で小桜さん・小桜お兄さんはややこしいから、名前で呼んでね」
それに実際、我が家は小桜じゃないからね。
この要望に月山さんが思案してから、
「お兄様?」
「そこまで改まらなくていいです」
「ニーサン?」
「う、うーん。もうちょっと可愛い呼び方で」
「にぃにぃ」
「それは可愛過ぎ」
そんな議論の末、とりあえず「お兄さん」で落ち着き、そして美羽ちゃんも呼び捨てでいいと伝えてから、
「そういえば、月山さんの名前は?」
この問いに、月山さんが顔を背ける。
あれ? 何で?
「ごめん。馴れ馴れしかった?」
「いえ、私の名前は変なので」
「あっ…(察し)」
まぁ、うん。確かに本人にとっては死活問題だろうけど、このままじゃやりづらいな。そう思っていると、美羽ちゃんが
「月山さん。クラスの皆も、変じゃないって思ってますよ?」
「信じない」
「でも私を美羽って呼ぶなら、月山さんも」
「……お兄さんに騙された」
「えっ? いや、何かごめんなさい」
そういう意図は全くなかったんだけどなぁ。それから月山さんが観念するかの様に、渋々という感じで
「萌香、月山萌香です」
折り紙が気になった方はググってみて下さい。匠の技でした。




