48話 ロリコン勇者
「おはよう、ござい、ます」
松葉杖でクラスに入場、小さな声で挨拶してみたけど、注目されてるな。
中間テスト初日は大遅刻で保健室送り、身を案じられて2日目も保健室で試験と宣告され、結局クラスの誰とも交流できずな有様で……、もういいや。とりあえず自席に座ろう。ええっと……
俺の席って、何処?
「お前の席は廊下側の一番前だ。入り口から近くていいだろ」
そう親切に教えてくれたクラスメイトを見てみると、
「久しぶりだな。織田」
「退院おめでとう。羽生」
こいつの名前は織田神奈。中2の時のクラスメイトで「俺が織田で、お前が羽生なら仲良くするしかないだろ」というアホな誘いで友達になり、ノリで一緒にスケート場に行ってしまった仲だ。小桜さんが届けてくれたクラスメイト一覧を調べたら、同中の知り合いはこいつだけで、中3は別クラスで疎遠だったから、こうして声を掛けてくれたのは嬉しい限りだ。
「入学前に名誉の負傷とは、随分と格好良いじゃないか」
「お前にそう言われても嫌味にしか聞こえない。この眼鏡イケメンめ」
「ははっ、褒めてもらえて光栄だよ」
そしてこの性格である。眼鏡イケメンなだけじゃなく、性格も気さくで馴染みやすいからモテまくりだったなぁ。そんな雑談を旧友と交わしたけど、それ以外の方々は遠巻きなままである。
「やっぱり距離を置かれちゃうかぁ」
もうクラス内のコミュニティは構築済みだろうし、暫くは謙虚な姿勢で少しずつ馴染んでいくしか…
「そりゃそうだ。何たってお前は『先輩彼女付き重役出勤ロリコン勇者』だからな」
「ちょっと待て! 設定盛られ過ぎだろその勇者!!」
話によると、小学生を助けて大怪我、先輩が毎日お見舞い、そして中間テストでタクシー登校と、ここまで色々やった以上、ずっと噂(ネタ話)になり続けて、慎重になってるらしい。
「しかもその先輩がお前に看病して美人に変貌なら、勘繰らない方が野暮ってもんだろ」
「いや、美容室に行って、眼鏡変えただけだよね?」
「そんな訳ないだろ。確か小桜先輩だったな。お前にべったりだろ?」
「えっと、説明が面倒だなぁ」
「兎に角、お前と小桜先輩は校内一有名なカップルって感じになってる。その辺の覚悟はしておいた方がいいぞ」
「校内一有名なカップルで相手は年上なのに、俺はロリコン勇者なのか?」
「ぶっ、……そ、そうだな。お前は間違いなく勇者だ」
必死に笑いを堪えてるけど、こっちは溜息しか出てこねぇよ畜生め。出遅れたせいで交友関係で苦労するとは思ったけど、ここまで難易度が高いとは夢にも思わなかった。
「まぁ、折角再会できた訳だし、仲良くしようぜ。そしてこれは俺からの退院祝いだ」
渡されたのは、ラノベである。
「やっぱお見舞い品でラノベ混入したのはお前か。相変わらずだな」
中2の頃は唐突にラノベ10冊を渡されて、読破後に朝まで激論バトルしたり、新作ゲームを織田が発売日に購入、そのまま一緒に徹夜クリアで翌日売却というアホな行動したっけなぁ。ちゃんとTPOは弁えた奴だが、きっとこれが残念イケメンなのだろう。
「これオススメだぞ! また激しく語り合おうぜ。俺は気付いたんだ。お前との感想会が一番楽しかったって」
「あのノーガード殴り合い討論がか?」
ラノベにも名作はあるけど、当たり外れが激しいというか、キャラ魅力と奇抜な展開が前のめり過ぎてストーリーが残念って部分を延々言い争った記憶ばっかりだけど?
「だってお前は何言ってもしっかり答えて、その後に険悪って感じにならないだろ」
「当たり前だ。感性は人それぞれで難癖は失礼だ」
この言葉に、織田が感極まった表情になってから抱き着いてきた。
「やっぱり俺にはお前が必要だ。これから宜しくな!」
「分かった! 分かったから離れろ! 気持ち悪いわ!」
織田の人柄は普通に好きだけど、面倒臭い事になりそうだなぁ。




