表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風に恋して  作者: 皐月もも
After Stories
35/37

Not Only You

短め。レオだけじゃないのよ、というリアのお話です。

『ぱー!う、うー』


レオのおこす小さな風がお気に入りのルカは、今日も嬉しそうにくるくるとレオの右手に渦巻く小さな風と戯れている。

レオの寝室、大きなベッドに横になるリアの隣に座っているレオは、風を小さくしたり大きくしたり、風速をいじってみたり、とても楽しそうだ。

そんなレオの優しい笑顔を見ていたリアは、なんだかよくわからない気持ちになった。小さくため息をついて身体をゆっくりと動かし、レオに背を向ける。


『まー?』


リアの変化に逸早く気づいたのは、彼女のお腹の中にいるルカ。


「リア?どうした?」

「……ううん」


囁くような声で返事をして目を閉じる。

どうしてなのだろう。とても、悲しいような、寂しいような気持ちになって。


「リア」


けれど、レオがそっと髪を梳いてくれるとスッと心が軽くなって。

リアはもぞもぞと身体の位置を元に戻した。レオが先ほどと同じ優しい顔でリアを見つめてくれている。

違うのは……ルカじゃなくて、リアを見てくれていること。


「先が思いやられるな?」


クスッと笑って言うレオはさっきとは違う楽しそうな表情をした。

リアはムッとしてレオを睨む。


「もう、知らない」

『んうぅー』


リアがまたレオに背を向けると、ルカも唸るような声を出してリアの髪にまとわりつくように吹いた。


「ルカ、リアが拗ねた。また明日だ」


笑いを耐えるような声にまたムッとして、リアはレオから少し離れる。


「お前もそんなに端っこに行ったら落ちるだろ」


レオがそっとリアの身体を元の位置に戻すのを、リアは抵抗せずに受け入れた。レオはもう1度クスッと笑って、後ろからリアを抱きしめてくれる。


「ルカ、お前はもう寝る時間だ」

『きゃはっ!ぱー、まー!う、うー!』


2人が寄り添ったのが嬉しかったらしいルカの笑い声が響いて、パチンと風が消えた。レオの温もりが更に近くなる。


「俺がルカに構う理由、わかってないだろ?」


耳元で囁くレオ。リアはお腹を優しく撫でるレオの手に自分の手を重ねた。

本当は、わかっている。

最近リアのお腹の中が窮屈になってきたらしいルカは、頻繁にぐずって機嫌がよろしくない。大きなお腹で大変なリアの負担を少しでも軽くしてくれようと、レオはルカと遊んでくれる。


「わかってるよ。ルカは早く出てきたくてうずうずしてるから……」

「わかってないよ」


レオがリアの身体を仰向けにして、瞳を覗き込んでくる。

漆黒の瞳の奥の情熱にリアはドキッとした。いつになっても慣れないレオの熱。レオはそれをストレートに伝えてくるから……嬉しいのと同時に恥ずかしいと思ってしまう。

ゆっくりと近づいてくる端正なレオの顔。リアはそっと目を閉じた。すぐに唇が重なって、レオが優しく舌を絡めてくる。穏やかな口付けがしばらく続いて、唇が離れると2人は熱い吐息を吐き出した。


「ルカの相手はお前のためでもあるけど……」


レオがフッと笑ってリアの頬を撫でた。


「あんまり触れると止まらなくなるんだ。それは、お前も知っていると思っていたが?」


そう言ったレオはリアの額や頬へ口付けを落としていく。


「お前に触れられないのはつらいけど、ヤキモチを焼いてくれるならルカにはまだしばらくお前のお腹の中にいてもらってもいい」

「も……バカ」


リアが小さく言うと、レオはやっぱり笑ってリアの頭を撫でる。


「ヤキモチを焼くのは俺だけかと思っていたな」


レオはリアの隣に仰向けに寝転んだ。どちらからともなく手をつないだら、リアのもやもやしていた気持ちも静かになっていった。

レオは、リアがなかなか彼の気持ちを受け止められなかったせいか……リアの気持ちがレオより小さく感じているように思う。

けれど、それは間違いで。


「レオだけじゃないんだよ?私だって、レオに構ってもらいたいんだもん」


ギュッてして欲しい。

優しく見つめて、頭を撫でて、キスをして……触れて欲しい。

そのすべてでリアを包んで欲しい。


「今日は素直だな?」


珍しくストレートに自分の気持ちを口にしたリアに少し驚いたような表情をしたレオは、すぐに嬉しそうな表情へと頬を緩ませた。


「嫌?」

「まさか。逆だ。嬉しい」


レオはチュッと頬に口付けを落としてくれた。


「もっと聞きたいけど、それはまたお前に好きなだけ触れられるようになってから、聞かせてくれ」

「うん……」


恥ずかしかったけれど、頷いたらレオは唇にキスをくれた。

「約束、忘れるなよ?」


レオはまた笑ってリアの身体をそっと引き寄せてくれた。後ろから、温かい腕が回されてお腹にそっと添えられる。


「ルカ。もうそろそろ、出てこいよ」


さっきは「まだしばらくお前のお腹の中にいてもらってもいい」なんて言っていたのに、今度は「出てこい」と言うレオにリアは思わず笑った。

それがリアに触れたいという理由だけではなくて、ルカに会いたいという気持ちが1番だということもわかるから。そして、リアも同じだから。

2人とも同じ気持ちだと、改めてわかったことが嬉しい。


「もうすぐだよ」


もうすぐ、会える。

最愛の人と同じくらい愛しい存在のルカに――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ