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もう少しで完結です!
あの後、災害対策の部署はスピード感をもって設立された。補助金申請もひな形ができ、職員が片手間にやることもなくなった。財務部にはかなりテコ入れが入った模様。人員がほとんど入れ替わっていた。
え? もちろん殿下は三発殴ったというか叩きました。そう、もちろん往復ビンタは一発の計算ですよ。
ジャスミン様が「王家が第一王子の監視を怠り、処罰を甘くしたせいで危ない目にあったんだから、第二王子が学生の身分のうちに殴ってしまえ」と言ってくれたので安心してやっちゃいました。アーロン様の協力のもと、いい音がしました。
新しく第二王子の婚約者になるジャスミン様を誘拐する計画もあったらしいから、私はそれを未然に防いだわけだ。叩く権利は大いにある。
誘拐犯のケンさんとゼンさんは今日もオールドリッチ公爵領のダイヤモンド鉱山で働かされている。刑罰の一環である。
「お嬢ちゃんのためにピンクダイヤモンドっちゅうやつを採掘するぞ!」
「ピンクよりもレッドかブルーじゃないか?」
なんて楽しそうに二人で言っていたけど。犯罪行為をするよりも採掘作業の方が心に優しいらしい。
結局、あの後本当にカラーダイヤモンドが出てきたんだよね……しかもピンク。以前、うちの領地から採掘されたらいいなってピンク頭が首にしてたピンクダイヤを見て考えてたけど、まさかこうなるとは。
結婚式の時にピンクダイヤは身に着けることになっている。普通に怖い。あ、残念ながら結婚式はユージーン様との式です。公爵夫人が早々に日程を押さえていました。
第一王子はとある伯爵家に匿われていたところを発見された。クーデターを企てたことですぐに幽閉され表向きは病死となっているが……真相は推して知るべし。
隣国とのつながりを自白したらすぐ毒杯だっただろうなぁ。隣国の辺境貴族が資源狙いで勝手に手を貸した証拠しかなかったらしいから、現在国同士でお話合い中。戦争沙汰にはならないようだ。
「ピンク頭の処罰は一生モヒカンで!」
「それは管理が大変だから無理だろ……孤島の修道院とか」
「孤島っていいですよね、海が見えるんですかね。それはそれでムカつきます」
「海が見えても孤島の牢獄なんだが。鉱山の採掘に回すよう殿下に進言しようか」
というユージーン様とのやり取りで、ピンク頭はオールドリッチ公爵領にあるのとは別の鉱山に強制労働に送られた。めでたしめでたし。
「あなた達ってやっと婚約者らしくなったわね」
「そうですか?」
「危ない目に遭ったのが良かったのかしら?」
「雨降って地固まるってやつですかね」
明日はいよいよ卒業。生徒会室でジャスミン様と紅茶をいただく。次の役員たちに引継ぎはしているのだが、人目を避けて語らうには生徒会室が一番だ。サロンはまだ私には敷居が高い。
私の紅茶を淹れる腕はまぁまぁ上達したものの、ジャスミン様の合格ラインには達しなかった。
「ジャスミン様はどうなんですか?」
誘拐、第一王子そしてピンク頭などなどが捕まった後、ジャスミン様とボンボン王子の婚約が発表された。
高位貴族は「やっぱりね」という反応だったが、下位貴族は何を夢見ていたのか悔しがっている令嬢たちもいた。ピンク頭のこともあるのに学習しない人たちもいるものだ。
「どうって?」
「ボンボン王子のことを出来の悪い弟を見る目で見ていたので」
「あ、やっぱり分かっちゃった?」
「分かりますよ、それくらいは」
仕事の話の時は普通なのだが、それ以外の時はどう見てもボンボン王子の片思いだ。
ジャスミン様が誘拐されておいた方が良かったのでは?と不謹慎なことを思わなくもない。
「まだ婚約した実感ないのよね。アンネット様の代わりにされている気もするし」
「卒業したらハイキングでも行きますか?」
「え?」
「一緒にハイキングをしたら距離が縮まる可能性がありますから」
「ふふ。それも面白いかもね。学園と王城で会うだけではいつもと同じだものね」
そんなことを言いながらもジャスミン様の笑顔は以前より柔らかい。
「まずは明日の卒業パーティー楽しみですね」
ドレスは窮屈で動きづらいのであまり好きではないが、卒業を前に私はテンションが上がっていた。




