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いつもお読みいただきありがとうございます!
徹底してコメディになってしまった。
私は今、藁の上に正座して叱られています。じっとしとけって言われたので。藁あるのはいいんだけど、チクチクするね。本日のお高いワンピースが藁だらけ。
借金取りのケンさんとゼンさんも一緒です。二人は縛られています。
なぜか怒ってるのは護衛さんです。「荷馬車で帰ろう」って言っただけなのに……。
護衛さんは荷馬車の中を調べ、今は気絶している男を縛り上げつつ持ち物を調べてます。そんなことをしながら怒ってます。
「いいですか、あなた俺が公爵家の護衛だって気付いていたわけですよね?」
「はい」
「なのになぜ疑うんですか! しかもピンク頭の足に噛みついてまでこいつら逃がすとか! アホでしょう! 誘拐犯なんですよ? こいつらほっといても罪に問われるんですよ!?」
ピンク頭って誰でも言うよね。すでに共通語の予感。
それにしてもアホとはなんだ、アホとは。私、一応、ほんとに一応ユージーン様の婚約者っていう肩書なんだけど。
「外を包囲されている気配がしなかったのでいけるかなと。それに飴ちゃんのご恩は――」
「素人が気配を語るんじゃない!」
いいこと言ったはずなのに怒られた。しかもいいところで遮られた。飴ちゃんのご恩はウィロウ・バートラムの名にかけて返すんですよ。言わせてくれよ、決めゼリフ。
「気配には敏感なんです。借金取りに追われていたので」
「そんなマウント要りませんから!」
うぅ、マウントじゃないのに。紛れもない事実で現実。
「なぁ、お兄ちゃん。あんたが怒るのはよく分かるんだが……これからどうする?」
助けてくれたのはゼンさんだ。共感って大事よね! 幸い浅く切られただけだったようで止血して元気だ。
「えぇ、えぇ。そうですよねぇ。あんたらのせいで予定がパーですよ」
「すんません……」
「ほら、お嬢ちゃんも謝ろう」
「え、嫌です。そもそも誘拐されたのは私のせいじゃありません」
「あ、それは確かに……」
「いや、そもそもなんで嬢ちゃん誘拐されたんだ? フッキンってなんだ? 腹筋?」
「それをこいつらから聞くんでしょーが! あんたらが勝手なことするから予定が狂ってるって言ってるだろ! 何人他に仲間がいるかも分からないのにぃ!」
この護衛さん、キャパ狭いな。ストレス耐性が弱いのかしら。平和ボケ?
「あ、はい」
「俺ら、依頼されただけなんで。なんも知らなくてすんません」
大柄なのにしょぼんと小さくなる二人。
そんな二人を見ながら、私は気付いた。よく考えたら怒られている暇はない。
「私はおそらく巻き添えで誘拐されただけです。完全なるとばっちりです!」
「お嬢ちゃん、元気だな」
「そもそも、ピンク頭の情報を掴んでいなかったのは公爵家の失態ですよね? 私を誘拐から守り切れなかったのも護衛さん達の失態です。ピンク頭が公爵領にいるなら辺境にいるはずの第一王子殿下も怪しいですね。つまり私は悪くないのに、王家とオールドリッチ公爵家のせいで誘拐されてるんですよ!?」
公爵家から高い給料もらってるはずなのに、みすみす誘拐されるとか許さん。なのに私をアホ呼ばわり。ウィロウ・バートラム。無駄に根に持つタイプ。
「お嬢ちゃん。かわいそうに」
「まだ若いのに借金の次は誘拐って」
「まだ全然情報がないんですってば! 何勝手に合いの手入れて三人で盛り上がってるんですか! ふざけないでください! そもそもあんたら誘拐犯で借金取りだろ!」
「うるさい!」
「え、お嬢ちゃん。ここでキレない方がいいんじゃ……」
「お黙り!」
「はい!」
「護衛さん、いいですか。あなたにキレられる筋合いはありません。私は自分で最善と思えることをします。私がやすやすと誘拐されてしまった時点で、いやそもそも最初から公爵家の護衛さんのことなど信用してません!」
「お嬢ちゃん、それはちょっと酷い」
「うん、酷い」
「大体、試着室の鏡が開いて誘拐されるなんて普通思いませんから! 私は被害者ですから!」
私はムカついていた。なんで誘拐阻止できなかった護衛さんに怒られなければいけないのだ。
ムカついたついでに私は縛られて猿轡されているピンク頭に蹴りを入れる。
「ちょっ!」
慌てる護衛さん。
「尋問するならさっさとする! 第一王子の復権のためになんで私が誘拐される必要があるんだ! 公爵家でも脅すつもり!? あ、それはいいわ! ユージーン様っていっつも上から目線だから! ナチュラルに上からだから! これだからボンボンは! 脅迫くらい一回されたらいいんだよ! そうしたら私みたいな貧乏弱小貴族のことだって少しは理解できるでしょーよ!」
「お嬢ちゃん、あんた婚約者のことそんな風に思ってたのか……」
「上から目線の男って嫌われるよな……」
「もうなんなの、この人。やだぁ……みんな早く助けに来てよ」




