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「ゴカイ??」
「そう。別にうちは影を統率していない。もちろん、公爵家に影はいるんだが……」
「んん? じゃあおじい様の勘違いですか?」
「おそらく、一時的に王家の影をおじいさま、つまり先代オールドリッチ公爵が指揮していたことを指しているんだと思う。当時の国王が病に倒れ、王妃は外国出身で子供達はまだ小さかった。その頃の話を拡大して解釈してるんじゃないか」
おぅ。まさかの誤解。
てっきりオールドリッチ公爵家が王家の影を統率してるのかと……。
「なるほど……でも公爵家も影は持っているということですよね」
「そうだな。侯爵家以上なら人数に差はあるものの持っている家は多いだろう」
ほぉ~。とりあえず、影を持てるほどボンボンだということは分かった。
うちの伯爵家は使用人さえなかなか雇えないもんね。影のお給料ってすごいんだろうなぁ。貴族は情報が命だ。情報戦を勝ち抜くにはそういう集団を召し抱えていないといけないものね。あ、公爵家なら襲撃や誘拐による命の危険なんかもあるか。
今度はラムチョップが美味しいお店に入る。
ユージーン様って私に食べさせとけばいいと思ってない? もちろん、あの肉の串焼きだけじゃ足りなかったんだけど。食い意地だけって思われてない??
「講習会は順調か?」
「順調? なわけないと思うんですけど……」
「何人か追い出したんだろう? やりやすくなるんじゃないか?」
「う~ん、まぁそうかもしれませんねぇ。ネメック侯爵令嬢の熱意が凄いですからね。なんであんなに庇ってくれるのか分からなくて怖いんですけど」
ワンピースにソースが飛ばないように細心の注意を払いながら肉を食べる。
「講習会に熱意があるだけなら、講習会からやる気のない生徒を追い出すだけでいいからな。陰口を言っていたリストを俺に渡す必要もないし、忠告まがいのことをする意味もない」
「そうなんですよ。だからなんか怖いなって。私、失礼な態度しかとってないのに」
過去を振り返れば振り返るほど怖い。めちゃくちゃ失礼な事しかしてないのに。なぜネメック侯爵令嬢は私をあんな風に庇うのか。中途半端な正論しか言わないお嬢様だと思ってたのに……。
「彼女は大人しい女子生徒としか認識していなかったが。おそらく、伯爵令息だった婚約者を病気で亡くしたことが大きいんだろうな」
亡くなってたのか。うちは自分の家のことで手いっぱいだからそんな情報知らなかった。情報弱者すぎる。というか、話が急に重くなりそう。ラムチョップよりお腹に重い。
「同じ伯爵家で、庇ったり守ったりできなかった婚約者のことを思い出してるのかもしれないな。あれ以来彼女は婚約していない」
うん、ネメック侯爵令嬢の個人的なことで庇って頂いてるだけなら別にいいか。
「ただ、殿下がネメック侯爵令嬢に惚れたようだからな……」
「殿下、アンネット様のことがお好きではなかったんですか? チョロすぎませんか?」
「彼女は公爵家の跡取りになったから王妃は無理だ。アプローチする前に失恋だったな。恋愛面ではチョロいかもしれない」
「ヘタレでチョロすぎる王子VSトラウマ持ち侯爵令嬢ってことですか?」
「なんでも男女の戦いに持ち込むんじゃない」
ラムチョップの後は屋台でデザートを食べてお腹がパンパンになった。食い倒れデートである。
後日、ネメック侯爵令嬢にデートの内容を聞かれて正直に答えたら、ユージーン様がめちゃくちゃ怒られていた。




