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他の方々からの視線が厳しいのか、ネメック侯爵令嬢が怖すぎたのか。
「わ、分かったわよ! 元々こんな講習会出たくなかったし!」
陰口集団の一人が立ち上がって早足で出て行く。足と声震えてるし、そもそも捨て台詞がいただけない。出て行った一人を追いかけるようにもう一人も出て行くが、三名は震えているけれども出て行かない。
そんな陰口集団数名をネメック侯爵令嬢は黙って見つめた。うん、怖い。美人って無表情でも怖いし、笑顔でも迫力あって怖いね。
「あなた達は出て行かないの?」
「っ! 申し訳ありません。マナーを習いたいのは本当なんです!」
「授業だけじゃ全然分からないんです!」
「講習会に参加させてください!」
三人は涙ながらに懇願する。
「あなた達がいると講習会はスタートできないと言ったはずよ? 私、これだけの人数を前にした発言には責任を持つタイプなの」
うわぁ……。講習会スタートしない発言でまた周囲の目が厳しくなる。
うーん、これって初回から舐められないようにわざと厳しくしてるのかな。それにしても怖いけど、ネメック侯爵令嬢って生徒会ではネコ被ってたのかな……。
いたたまれない空気になってきたので、私は手を挙げた。
「バートラムさん、どうしました?」
「ええっと、文句を言われていたのは私なので……私としては別にこのお三方が参加されても問題ないです。時間も押していますし、始めませんか?」
食事に虫を入れられたり、食事のトレイをわざとぶつかってひっくり返されたりしない限り私にとっては大したことがない。というか、食べ物が絡まない限り私にとって彼女たちはどうでもいいのだ。陰口だって借金に比べたらそよ風みたいなものだし。
「この方たちはまだあなたに謝ってもいないのよ?」
ネメック侯爵令嬢の言葉に陰口集団の一人が腰を浮かした。謝るために立ち上がろうとしたのだろう。私はそれより先に発言する。
「別に謝ってもらわなくて大丈夫です。陰口をここまで言うくらいですから皆さま悪いと思っておられないのですし、覚悟がおありなのでしょう? 心のこもっていない謝罪ほど意味のないものはありませんし、謝ったから許さなければいけないわけではないでしょう? 今、一番問題なのは時間が押してしまって本来の講習会の内容ができないことです」
謝ったから許せって雰囲気になるのも嫌なのよね。この人数だし、いろいろめんどくさい。
ネメック侯爵令嬢は他の有志の令嬢達をささっと見渡した。何人か頷いている。
「バートラムさんがそうおっしゃるのでしたら……分かりました。では講習会をスタートします。皆さま、貴重な放課後にお集まりいただきありがとうございます。今回は初回ですからこの講習会の流れの説明と挨拶の練習です。『こんな内容をやって欲しい』という要望があれば随時取り入れていきますので講習会後にお知らせください」
ネメック侯爵令嬢は何事もなかったように講習会をスタートした。参加者たちが安堵したのが空気で分かる。
ただ、出て行かなかった三人の顔色は最後まで悪かった。




