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「高熱があったのに授業を受けて生徒会にまで出て、サロンに行ったのか?」
「本人は熱があることに気付いていませんでしたね」
「さすがっすね。お腹壊す以外は体調不良になったことないって言ってただけある」
「あの……私は彼女に嫌われてるみたいなんですが、部屋には入らない方がいいんじゃないでしょうか?」
「あと、自分の持ってる書類って要りました?」
王子を筆頭に生徒会メンバーは見舞いのために女子寮にいた。
ユージーンの前でぶっ倒れたウィロウ・バートラムはその後、速やかに保健室に運ばれた。保健室にいたのはマクドネア先生の後任である。
そして高熱を出していることが分かり、寮までユージーンが運んだ。入口では女子寮の寮母が颯爽と現れて「まったく。仕方ないねぇ」とウィロウ・バートラムを担いでいってしまったので、ユージーンは部屋にまで入っていない。
アーロンに「いいとこを寮母さんに全部持って行かれるとか不憫だな」なんて言われたユージーンは全力でスルーした。
「女性がいないと女子寮に入れない。嫌われているというか警戒されているだけだろう。それに、書類があった方が生徒会の用事で来たと分かってバートラム嬢に迷惑がかからないからな」
今日は学園が休みなのだ。しかし、生徒会メンバーは生徒会活動のついでと称して見舞いに集結している。
「アーロン、なんでフライドチキンを持ってきたんだ? かなり臭うぞ」
「あいつ肉好きっすからね。それに熱出た時、俺よくフライドチキン食べるんで! 肉食べたら元気になるっしょ!」
「アーロン様、体調不良の女性にフライドチキンはあり得ません……せめて果物とか……」
そう言いながらネメック侯爵令嬢は持参したカゴ入りの果物を見せる。
「果物じゃあ腹にたまらないだろ? 傷むしな」
「体調不良なら食欲がないと思いますけど……」
「体調悪いのに果物剥く労力ないだろ?」
「二人ともそろそろバートラム嬢の部屋だ。静かにしろ」
フライドチキンか果物か論争を繰り広げる二人を王子が制す。
ユージーンは二人が静かになったところでノックした。
***
「フライドチキン! おいひすぎますぅ! 昨日からなにも食べてなくて! アーロン様様です!!」
「だろだろ! 食べやすいように一口大にしてあるぞ! 味付けも薄くした!」
「神ですか!!? 神ですね!!」
珍しく部屋がノックされたので寮母さんかと出てみたら生徒会メンバーが勢ぞろいしていた。緊急の用事なのかと部屋に入ってもらう。悲しいほど何もない部屋なので問題ない。
「昨日倒れたそうだから見舞いだ」
「ほら、フライドチキン!」
「いえ、果物です」
アーロン様とネメック侯爵令嬢が二人してグイグイ押し付けてきたのにはびっくりしたが、私はしんどい時ほど肉なのだ。そして今に至る。
ちょぉっと頭が痛いかな?くらいなので勉強していたが、机の上に広げていた本を見てユージーン様が「あの高熱の翌日にもう勉強だと!?」とびっくりしながら栞をはさんで本を閉じていっている。
しかし、アーロン様マジで神。今、頭が痛いから語彙力が全くないけど……チャラいけどデキル男である。そしてこのフライドチキン、うますぎる……。
アーロン様はフライドチキンが選ばれて満足そうで、ネメック侯爵令嬢は分かりやすく落ち込んでいる。果物も高いから手が出ないのだけど、私にとって果物って水分だからね。でも、持ってきていただいたのはとても嬉しいです! 私、貰える物は全部貰う主義なんで!!
「じゃあ俺はこれから婚約者とデートなんで! 失礼しまっす!」
爽やかに立ち上がるアーロン様。
「「え?」」
「じゃなきゃ休みの日に学園来ないっすよ」
呆然とするネメック侯爵令嬢と眼鏡令息を置いて「それ全部食べていいから!」とアーロン様は去っていく。私はひとまず親指を立てておく。チャラいけど気を遣わせない男である。私が男だったらきっと惚れてたよ! いや、違うか。
「アー、ソウイエバ。あの書類で大至急確認したいことができた。ちょっと来てくれ。一階のソファで話そう」
王子が困惑するネメック侯爵令嬢と眼鏡令息を連れて出ていく。
残されたのは私とユージーン様だ。
ウィロウは高熱でも普通に食事取れる人でした。
さぁ、次回。ユージーンはどうする?の巻。
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