第9話 主の戦闘勉強・3
結局、夕方まで採取を続けた俺と主は、人が少ない時間を見計らって王都の中へと戻って来た。
採取の知識が殆ど無い主に、お金になる種類を押しえながら集めて居たので、今日の稼ぎは殆ど無い。
「ごめんね。ゴブタ君、私が無知のせいで……」
「まあ、そこは大丈夫ですよ。大抵の事は俺が知っているので、教えられる範囲は教えますから、これから頑張って行きましょう」
「うん、ありがとう」
元気が無い主は、微かに笑い俺達ギルドの建物へと戻って来た。
門は人が少なかったが、夕方のギルドは人が少し多かった。
目立つ行為はしないように受付の列に並び、順番を待つ事にした。
「あら、アイナちゃん達今まで外に居たの?」
「はい、ゴブタ君、博識なので今日は色々と教えて貰ってたんです」
「そう言えば、貴方ってギルドや図書館の本を読み漁ってたものね。アイナちゃんのサポートは、ギルド側がしなくても大丈夫のようね」
「そうですね。と言いたいのですが、主は予想以上に色々とアレなのでギルド側も手伝っていただけるとありがたいです」
俺がそう言うと、エレナさんは一瞬固まり「フフッ」と笑った。
主は主で、俺の言葉に「ひ、酷いよゴブタ君」と恥ずかしそうにしていた。
「ゴブタ君って、思った事は言う性格なのね。あの子の時は、そういう性格だとは思わなかったけど」
「前の主の時は、意見を言っても逆効果でしたが今の主は、俺の言葉を聞いてくれますので」
そう言うと、エレナさんは「確かに、あの子は人の話は聞かないものね」と納得してくれた。
その後、俺達は取って来た薬草や丸薬の素材を提出した。
「あれ、ゴブタ君。今更だけど、私達って依頼受けたりしてたっけ?」
「……主は、俺達が取って来たのは常設依頼の素材です。なので、別に依頼の受理はしなくても、決められた種類と数を提出すればお金になるんですよ」
「へ、へぇ……」
「……ゴブタ君が大変だって言った意味が分かったわ、アイナちゃん貴女暇があれば、この本を読みなさい」
エレナさんは主の情報の疎さを目の当たりにして、ギルドが新人冒険者等に貸すルールブックを棚から取り出して渡した。
「冒険者になる時に色々と説明したけど、アイナちゃん覚えてなかったのね」
「あ、あははは……」
「こういった場合、ギルド側で教育係を付けるのだけど……」
「俺の事もありますからね。基本的なルールは、俺が教えますので大丈夫ですよ」
「頼むわねゴブタ君」
早速、俺はエレナさんから信頼を得たようで、真顔でそう言われた。
その後、提出した素材のお金を受け取り、俺と主はギルドの建物を出た。
「主、今更ですけど昨日はギルドに泊りましたけど、今日は何処で寝泊まりするんですか?」
「そこは安心して! 流石の私でも、宿を取り忘れたりしてないから!」
主は自信満々にそう言って、俺の手を取り宿へ向かった。
それから数分後、俺の目の前で主は宿屋の女将から怒られていた。
「アイナちゃん、宿に帰れない日はどうするか最初に言ってたわよね?」
「は、はひぃ、ご、ごめんなさい!」
宿屋〝かまど亭〟は、王都の宿の中で有名な店だ。
宿泊料はそこまで高くないのに部屋は綺麗で、一室一室にトイレと洗面所が付いている。
それに加え、宿泊客は決められた時間内なら入り放題のお風呂も付いている。
しかし、かまど亭のいい所は宿の設備以上に、飯が美味いという点だ。
「はぁ、全くギルド側から連絡が無かったら追い出す所だったわよ」
宿の女将、ベルマさんは「ふ~」と怒りを鎮め、俺の方を振り向いた。
「貴方の事も聞いているわ、私等も協力するけどルールを破ったら追い出すからね?」
「はい、よろしくお願いします」
ベルマさんから睨まれる様に言われた俺は、背筋をピンっと伸ばしてそう言った。
その姿に満足してくれたのか、ベルマさんは「入りなさい」と言って宿の扉を開き俺と主は中に入った。
宿の中は、左側が階段と奥に風呂に繋がる道が有り、右側は食堂となっていた。
「アイナちゃん、まずはゴブタ君の分の宿泊費を貰えるかい?」
ベルマさんにそう言われた主は、従魔用の宿泊費を自分と同じ日数分支払った。
「そう言えば、ゴブタ君はどっちのご飯が食いたいかしら、人間用か従魔用のご飯」
「出来るのであれば、人間用が良いです。お米が俺の好物なので」
「あら、お米が好物なのね。良い味覚もっているわね」
ベルマさんはニカッと笑い、嬉しそうに食堂へと案内してくれた。
その後、ベルマさんがおススメと言って出してくれた。
卵と鳥の魔物の肉を使った〝親子丼〟は、俺が食べて来た米料理の中で一番美味しい料理だった。
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