第6話 話し合い・3
その後、主が出て行って10分程して主は戻って来た。
主の後ろには、エレナさんも居て料理を運んで来てくれた。
「エレナさん、料理を運んでくださりありがとうございます」
「いえ、ギルド側に協力してもらっていますから、この位は大丈夫ですよ」
ニコッと笑いながら、エレナさんは言い部屋を出て行った。
……あれ、主は部屋に戻らないのかな? って、テーブルに自分の料理も並べてないか!?
「あの、主。何で主の分も並べているのですか?」
「えっ、一緒に食べようと思ったんだけど、嫌だった?」
コテンッと首を傾げながら、主はそう言った。
「いや、あの嫌ではないですけど、主こそ良いんですか従魔と一緒に食べるって……」
「嫌じゃないよ? だって、大切な仲間だしね。それに、知り合ってまだ数時間だから、ゴブタ君の事をもっとよく知りたいから、ご飯食べながらお話したいなって」
主はそう言って、料理を並べ終わり「食べよう」と言って俺を椅子に座らせた。
そして、俺は久しぶりの〝真面な飯〟を前にして、涎が出てしまった。
「ふふ、ゴブタ君も我慢できそうにないし、食べようか。いただきます」
「い、いただきます……」
主に涎が出ていたのを見られ、恥ずかしいと思いながら箸を手に取り、肉を取り国の中に運んだ。
その瞬間、俺の国の中で肉は一瞬にして消えた。
何処かに消えたのではなく、美味しすぎて一瞬の内に飲み込んでしまった。
「美味しい、美味しい……」
俺は〝美味しい〟と連呼しながら、食べ進めて行った。
そんな俺を主は「良かったね」と優しい表情で言って、一緒に食事をした。
「主、すみませんッ!」
主に色んな話をしたいと言われていたのに、俺は飯に夢中になりすぎて会話をしなかった。
その事を食べ終えて気が付いて、主に向かって頭を下げて謝罪をした。
「そんなに謝らなくていいよ。ゴブタ君がお腹が空いていた事知ってたのに、ご飯に夢中になるなって難しい事を言ったからね。それに、お話はご飯の後でも沢山出来るから」
そう言った主は、俺の頭に手を置いてヨシヨシと撫でた。
その後、俺は主とお互いの事を話し合った。
何処で育ったのか、どんな事が得意なのか、得意な武器は、戦い方は……沢山の事を話し合った。
「ゴブタ君って、意外と物知りなんだね……」
その過程で、互いの知識を披露する事になった。
なので俺は、3年間の従魔生活の間に色々と知った知識を主に話すと、主は驚いていた。
「ゴブリンって最弱の魔物に位置するので、出来るだけ色んな事を知って役に立とうと思ったんです。それで、冒険に連れて行ってもらえない時は街の図書館やギルドで本を見せて貰って、知識を増やしていたんです」
「頑張り屋さんだね。私、本読もうとしたら直ぐに寝ちゃうんだ……」
「本は良いですよ。先人の残した知識を教えてくれますからね。それで、俺も色んな事が出来るようになりました。そのおかげで、戦闘行為が出来なくても魔物や人から逃げ続ける生活も出来ましたから」
逃亡生活で役だったのは、とあるサバイバル術の本。
その本では、人間は周囲の情報、魔物は匂いでの索敵を行うと書いてあった。
なので俺は、人間からも魔物からも逃げる為、二つの情報を消して上手く逃げ続けていた。
まあ、それでも油断していると見つかってしまうので、神経が磨り減る毎日だった。
「主こそ、複数の魔法を使えるのは凄いと思いますよ」
「えへへ~、凄いかな~」
俺の言葉に主は、嬉しそうに笑顔になった。
こんな主だが、才能は凄いと感じた。
従魔魔法自体、契約魔法系の魔法で難しい魔法とされていて、これだけでも凄い才能だと言われている。
主はそれ加えて〝火、水〟の属性魔法が使え、戦える能力を備えている。
「……でも、戦える能力があるのに戦いに関して疎いのは駄目ですよ。今日みたいに、魔物を殺せないのは冒険者として駄目ですから」
「うっ、だって私魔物殺した事無いから……」
「ですよね。今日一日、主と一緒に居てそんな感じに見えましたから」
そう主は、戦う能力があるのに魔物を倒した事が無い。
それを聞かされた時、俺は心の中で「やっぱり」と思った。
「主、明日俺の変装道具が届きましたら外に出て戦闘の勉強をしますからね」
「うぅ、はぁ~い……」
主は、気乗りしない感じの声でそう返事をした。
それから、夕食も昼食同様にギルドに注文して部屋に運んで来てもらった。
夜も、俺はご飯の恋しさは続いていたので、ご飯物を注文した。
美味しいご飯が食べられる幸せを十分に噛みしめた俺は、明日から始める主の教育を頑張ろうと思いながら眠りについた。
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