第5話 話し合い・2
そしてエレナさんは、その木箱の蓋を取り外した。
すると、そこには先程まで付けていた首輪より、豪華そうな首輪が入っていた。
「えっ、これって首輪の中でも最上級の首輪ですよね!?」
その首輪を見た主は、驚いた声を上げた。
確かに、その首輪は俺が付けていた首輪より豪華なつくりをしているけど、そんなに驚く事なのかな?
「主、その首輪ってそんなに凄いんですか?」
「凄いよ! この首輪は、ギルドに凄く貢献した従魔使いが貰える凄い首輪何だよ! 他の首輪を〝戦闘行為の禁止〟って制約が付いてるだけだけど、この首輪には〝疲労回復〟〝身体強化〟の魔法が付与されてて、付けた従魔が強くなるんだよ!」
主はこの首輪はが、どう凄いのかを熱弁した。
こんな首輪がある何て、3年間王都で暮らしてて知らなかった。
従魔使いとしての知識は、俺よりも凄いんだな……
「あの、本当にこんな凄い首輪を貰っても良いんですか!?」
「ええ、今回は私達の監督不行き届きでゴブタ君に対し、多大な迷惑を掛けた謝罪の誠意と受け取ってください」
エドウィンさんからそう言われた主は、ゴクッと喉を鳴らした。
そして、主は俺の方を向いて「ゴブタ君、良かったね」と言い、首輪を付けてくれた。
「って、主。こんな貴重な首輪を、ゴブリンの俺に付けても良いんですか!?」
「えっ? だって、それギルド側からゴブタ君に対しての物だよ? ゴブタ君に付けるに決まってたでしょ? それにゴブタ君に、この首輪が必要だと感じたの!」
コテンッと首を傾げて、主はそう言った。
いや、確かにエドウィンさん達はそう言ったけど、普通こんな良い首輪を貰ったら後から強い魔物を仲間にした時の為に取っとくでしょ!
「ふふ、アイナちゃんはゴブタ君が強くなる事を信じているんだね」
「はい! って、どうしたのゴブタ君!?」
主のその言葉、俺は胸を打たれ涙を流した。
以前の主には、そんな事一度も言われたことが無い。
そもそも、最初から以前の主は俺の事を〝強くなる〟とは、一欠けらも思っていなかっただろう。
でも、今の主は違う。
俺が強くなる事を、信じてくれているんだ!
「が、頑張ります。主……」
涙を流しながら俺は、立ち上がり主に向かって跪いた。
それから、今回の事はギルドが動くまでは、余り話さないで欲しいとエドウィンさんに言われた。
「……でも、それは難しいですよ。一応、3年間王都であの主の従魔をしていたので、俺の事を知る人も多いです。現に門番のリカルドさんと、若い兵士さんには俺が従魔の契約を破棄されて捨てられていた事は伝えてますし」
「確かにゴブタ君は王都では少し有名ですし、それは難しいですよマスター」
「ふむ、だったらゴブタ君。少しの間だけ、変装して貰っても構わないかな。姿さえ変えれば、君があのゴブリンだという事に気が付く者は少なくなると思うから」
「変装ですか……動きを制限されない様に変装でしたら、良いですよ。主と依頼を受ける際に、身動きが取れなくて主の足手まといにはなりたくないので」
「ええ、そこは分かっております。アイナちゃん、ゴブタ君。今日は、このままギルドの仮眠室で過ごしてください。その間に、変装用の道具は揃えておきますので」
エドウィンさんにそう言われた俺と主は、「分かりました」と返事をした。
そして部屋を退室した俺と主は、泊まらせてもらう部屋に案内された。
ギルド側の配慮で主とは別室を用意してもらい、俺は主の隣の部屋で過ごす事になった。
「ふぅ、久しぶりの固くない寝床だ……」
主に捨てられ、外で暮らす事になった俺は木の上で夜を過ごしていた。
戦闘行為が出来ない俺が地面で寝て居たら、いつ襲われてもおかしくない。
それが最善だと思い木の上、それも固くて太いの上で寝ていた。
捨てられる前は、なんだかんだ従魔用の寝床は用意されていたから、その違いに最初は寝るのに時間が掛かっていた。
「それにしても、こんな良い首輪を貰って良かったのかな……」
俺は自身の首に付けられた豪華な首輪に手をやり、そう呟いた。
主の言葉が本当であれば、この首輪には3つの魔法が付けられている。
〝制約の魔法:許可無しの戦闘行為〟〝疲労回復〟〝身体強化〟。
俺の知識が正しければ、2つ以上の魔法が付与されている道具は最低でも金貨10枚はする筈だ。
だとすれば、この首輪にはそれ以上の価値がある。
「……頑張ろう。そして、主の為に強くなろう」
「ゴブタ君、ちょっと良いかな?」
俺はそう心に誓っていると、部屋の扉をたたく音と共に主の声が聞こえた。
今の言葉が聞こえてなかったよな!? と焦りながら、部屋の扉を開けて主を部屋の中に案内した。
「さっきね私の所に、エレナさんが来てお昼ご飯何が良いか聞かれたんだけど、ゴブタ君って何か食べたい物とかある?」
「食べたい物ですか……」
主の質問に対して、俺は少し考えて「お米が食べたいです」と答えた。
すると、主は目を輝かせて「ゴブタ君、お米好きなの?」と聞いて来た。
「好きですよ。白米があれば大体の物は、一緒に食べて合いますからね」
「そうだよね! 私もお米大好きなんだ! 私が一番好きなのは、ご飯に新鮮な卵を乗せて醤油を掛けて食べる〝卵かけご飯〟がすきなの!」
「あっ、それ俺も好きです。何なら、久しぶりに食べたいので今日のお昼は〝卵かけご飯〟でも良いですよ」
そう言うと、主は「それじゃ、私もそうする!」と言って部屋を出て行った。
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