第25話 接触・3
「何でお前ここに居るんだ!? それにその姿は!?」
姿が変わったウルフにそう俺は、混乱した頭でそう問いかけた。
ウルフはミノタウロスが倒れた方向から目を離さず、俺の問いかけに答えた。
「姿が変わったのは、お前達と別れた後に進化したからだ。今の俺は、銀狼だ。そして、ここに居るのはお前達が逃げているのも見つけたから、あの時の借りを返そうと思っただけだ」
ウルフの言葉に俺は、言葉が出なかった。
そんな俺達のやり取りに、倒れていたミノタウロスは起き上がると「グルォォ!」と叫んだ。
「とまあ、カッコよく登場したは良いけど、俺でもあの赤牛を一人で倒すのは厳しい。小鬼、お前も手伝え」
「あ、ああ、分かった。主、そう言う訳です。少し離れていてください、死ぬとはもう言いませんから、今度こそお願いします」
「は、はい!」
主はウルフから睨まれ、反論できないと判断して直ぐに後方に下がった。
「おい、小鬼。お前は、右から行け、俺は左から行く」
「分かった。それと、これから少し俺は攻撃的になるから、指示は的確に頼む」
「んっ? ああ、お前能力持ちか、分かった」
俺の言葉にウルフは直ぐに感づき、そう言って走り出した。
ウルフが行ったのを確認して、俺も走りながら【鬼狂化】を発動した。
この能力は、鬼種の魔物が稀に持っている能力で我を忘れ、身体能力が上がる能力だ。
本来であればこの能力を使えば、自我を忘れただ暴れる魔物になる。
しかし、持ち主が進化したり訓練で自我を忘れなくなる事も出来ると知り、俺は長い時間を掛けてこの能力を使えるようにした。
「ガァァ、覚悟しろッ!」
「グルォ!?」
先程まで逃げていた相手が、凶暴化して襲い掛かって来た事にミノタウロスは驚いた。
俺は両手で【魔物武器】の棍棒を持ち、ミノタウロスの左腕を叩きつけた。
それによって多少の隙が生まれ、反対方向から攻撃を仕掛けたウルフの牙がミノタウロスの右腕に深く刺さった。
「グルォォォォ! コノ、ナニシヤガルッ!」
「ハッ、勢いが足りんな赤牛」
先程まで叫ぶ事しかしなかったミノタウロスは、初めて言葉を発してウルフを木に叩きつけようとした。
しかし、ウルフはすんでの所でミノタウロスの腕から牙を取り、ヒョイッと飛んで避けた。
「下級生物が俺の邪魔をしやがって! 殺してやるッ!」
ミノタウロスはそう言いながら、【魔物武器】である背中に担いでいた戦斧を手に持った。
そしてブンブンと振り回して、俺達に向かってミノタウロスは突っ込んできた。
怒り状態のミノタウロスは、俺以上に自我を忘れているようだ。
「小鬼、俺の背に乗れ、一発の攻撃力は今のお前のが高い。いい所まで乗せて行ってやるよ」
「分かった」
ウルフの言葉に俺は、直ぐに返事をしてウルフの背に乗った。
ウルフは突っ込んできたミノタウロスを軽く回避し、後方に回ると後ろ脚で地面を蹴り上げてミノタウロスの真上に飛んだ。
「いけ、小鬼!」
ウルフの掛け声に俺は反応して、ウルフの背中を飛びミノタウロスの頭部目掛けて両手で持った棍棒に力を込めて振り下ろした。
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