第24話 接触・2
「グルォォォォ!」
ミノタウロスは、俺と主を見つけると雄叫びを上げた。
その声に俺と主は、体が震えて足が動かなくなった。
「ドンッドンッ」
一歩、また一歩と近づいてくるミノタウロス。
俺は、舌を噛んで硬直状態を解いて主を抱きかかえ、後方に走った。
「グルォォォォ!」
ミノタウロスは、逃げる俺を追いかけて来た。
俺は怖いと感じながらも、主を守る一心で後ろを振り向かず森の利点でを活かして逃げた。
しかし、ミノタウロスは俺が障害となるだろうと思った木を全て、薙ぎ払って一直線に俺に向かって来た。
「クソックソックソッ」
何で森に入った。
何で依頼を受けようと思った。
俺はそう自分に対して、怒り、腕の中でフルフルと震えている主を見た。
主は未だ混乱状態で、自分で動けるような状態ではない。
「グルォォォ!」
ミノタウロスはこちらの状況など関係なく、ただただ一直線に走って来る。
この状況、どう打開する!?
そう自問自答するが、現時点での策は全て効いていない。
「グルォッ!」
「グハッ!」
遂に俺はミノタウロスに追い付かれ、背中を俺の背丈ほどある拳で殴られ、吹き飛ばされた。
その際、俺は主が叩きつけられない様に庇い更に背中にダメージを負った。
「ご、ゴブタ君!?」
「あ、主。起きましたか、でしたら早く逃げてください。あいつは、俺が相手します」
叩きつけられた衝撃が主にも多少行き、主は混乱状態から目覚めた。
そして、今の現状から主だけでも逃がすと俺が判断してそう告げると、主は「だ、駄目だよ!」と反論した。
「その言葉はこの状況をよく見てから言ってください、このままだと主とも俺も命がありません。でしたら、どちらかが囮になるのが一番いいです。そして、俺は従魔です。従魔は主を守る生き物です。ですから、主逃げてください」
「い、いやッ!」
主は俺の言葉に、反対だと言った。
そんな俺と主のやり取りを黙って見守る程、野生の魔物は優しくない。
今のやり取り中に開いていた少しの距離を、ミノタウロスは接近して来た。
「グルォォォ!」
「主! お願いです。逃げてくださいッ!」
「ゴブタ君ッ!」
主に向かって攻撃を仕掛けたミノタウロスの攻撃を、俺は自身の体を使って防ぎ、衝撃で再び吹き飛ばされた。
この状況、自分の為を思って前の主なら逃げただろう。
しかし、今の主は従魔である俺を見捨てる事が出来ず、吹き飛ばされた俺の所に寄って来た。
「お願いです。お願いですから、主だけでも逃げてください」
「い、いやだよゴブタ君……」
「グルォ、グルォ」
ミノタウロスは、俺と主のやり取りに笑みを浮かべ一歩ずつ近づいて来た。
そしてミノタウロスは、俺と主の所に辿り着くと両手を上げて、叩きつけようと振り下ろしてきた。
絶体絶命、主が逃げる隙も無い。
そう思った瞬間、突風が吹き、目の前に居たミノタウロスがいなくなっていた。
「ハッ、情けないな小鬼。俺を後一歩の所まで追い詰めた癖に、こんな赤牛に負けそうになりやがって」
「お前、まさかあの時のウルフなのか?」
ミノタウロスの代わりに俺達の目の前に現れたのは、銀色の毛並みをした大きな狼が居た。




