第23話 接触・1
主の秘密を聞いた翌日、俺と主はここ最近の成果を見て、少し上の報酬が良い依頼を受ける事にした。
今回受けるのは、最近避けていた森の中での依頼。
木に偽装する魔物、トレントの素材を持ってくるという依頼だ。
この依頼を受ける際、以前の場所から距離が離れている等を確認して受けた。
彼奴との戦闘は、絶対に避けたい。
「主は、まだ感知系のスキルが発現していないので、俺が指示を出しますね」
「うん、お願い」
そう森に入る前に話し合いをして、俺が前に立ち主は後ろを歩く形で森の中を進んだ。
トレントは何度か見た事があるので、特徴も知っている。
なので割と簡単に、森に入って数分してトレントを見つける事が出来た。
「主、あの木はトレントです」
「えっ、本当に? ……あっ、本当だ。ゴブタ君、よく直ぐに分かったね」
「何度か目にした事があるので、特徴を分かってました。主、素材が燃えない様にお願いしますね」
そう言って、俺は主にトレントだけを狙うように火の魔法を放ってもらった。
トレントは、木の魔物なので火属性の攻撃にかなり弱い。
火の攻撃を持っている冒険者なら、トレントは簡単に討伐する事は出来るだろう。
それから少し、森の中をトレントを探しながら移動した。
トレントは一体居れば、近くに何体も居るので気づかれない様に一体ずつ仕留めて行った。
主の感覚的に、トレントは〝可愛い〟部類には入らないみたいで、攻撃に躊躇いが無くサクサクと倒して行った。
そして数体倒したところで、俺はバッグから主用にと買っておいた〝魔力回復薬〟を取り出した。
「主、これをどうぞ」
「これって、魔力回復薬?」
「はい、今日は主が頼りですので薬を飲みながら倒しましょう。いざ、他の魔物が出た時に対処できませんから」
そう言うと、主は「そうだね。ありがとう」と言って薬を飲んで魔力を回復させた。
主の魔力が戻った後、また森の中を歩きトレント狩りを続行した。
「さて、この辺にしておきましょうか。主も流石に薬飲みながらでしたが、疲れましたよね?」
「うん、そうだね。流石に疲れたかな、トレントの素材も大分集まったし、今日は帰ろうか」
そう俺と主が話し合っていると、森の奥から強いオーラを感じた。
そのオーラは、以前感じたオーラと似ており、俺はそのオーラが放たれている方を凝視した。
「ゴブタ君……」
「静かに帰りましょう。まだ、気づかれていないと思うので……」
主もそのオーラに気付き、小声で俺の名前を言い、俺はそんな主と共に足音を立てずにその場から離れる事にした。
しかし、魔物には俺達の状況等考えない者も居る。
その強いオーラを感じながらも、俺達に襲い掛かろうと数体のゴブリンが目の前に現れた。
「ッ、こんな時に」
既に向こうは臨戦態勢、こんな状態で逃走は不可能だと考え、直ぐに倒して逃げようと考えた。
俺は、利き手に棍棒を持ち、襲い掛かろうとしているゴブリン達に先に攻撃を仕掛けた。
「ゴッ」
「ガッ」
「ガフッ」
3体を一気に倒した俺に、残りゴブリンは騒ぎ始めた。
その音で後方のオーラが若干こちらを向いた気がするが、俺はそのオーラを考えない様にゴブリン達を倒して行った。
そして1分も掛からず、ゴブリン達を倒し切った俺は主の手を取り、早く森から離れようとした。
しかし、既にこちらの気配に気づいて居たオーラの持ち主は、森の奥から爆音を立てながらこちらへと接近して来た。
「主、来ますッ」
「ゴブタ君ッ!」
俺は背中に主を隠し、オーラの持ち主と対面した。
オーラの持ち主、そいつはこの変では見ないミノタウロスの亜種形態だった。
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