第15話 従魔達は頑張る・2《別視点:元従魔仲間達》
「えっと、それじゃ俺が間に入って、話し合いをしたら良いんですよね。ギルドマスター?」
従魔使いの青年は、不安そうに横に居るギルドマスターへと話しかけた。
「ああ、よろしく頼む。エレナ曰く、ゴブリンの様に人語は話せないみたいだからな、ほんとあのゴブリンの有能さを何故分からなかったのか、後で問いたださないとな……」
従魔使いの青年の言葉に、ギルドマスターがそう言葉にした。
その言葉に、従魔達はギルドマスターの方を見た。
「んっ、どうしたんだ?」
「ゴブリンの事を知ってるんですか?」
従魔達代表して、ウルフがそう口にした。
その言葉を従魔使いが翻訳して、ギルドマスターに伝えた。
「成程、確かに自分の仲間が今どうなっているのか知りたいか……今、あのゴブリンは新しい主を見つけて生活している」
「ッ!」
ギルドマスターの言葉に、従魔達は驚いた声を上げた。
ゴブリンは、生きて王都まで辿り着いた。
それだけでも凄い事なのに、新しい主まで見つけている事に更に驚かされた。
「詳しい事は本人の事情もあるし、言えはしないが。新しい主は、あいつの強さを認めて一緒に強くなろうとしているから、お前達の主の元に居た時より楽しそうにしている」
「……そうか、彼奴は新しい主を見つけられたのか」
ギルドマスターに自分達の主が貶されているのに反応せず、ゴブリンが生存して新たな道を歩いている事にホッとした従魔達。
それから従魔達は、従魔使いを介して話し合いを行った。
話し合いの内容は、これまでのゴブリンの待遇や主の従魔使いとしての行動だったりで従魔達は悩まず全てギルドマスター達に伝えた。
「あんなに沢山の従魔が居て、主であるあの従魔使いが疲れていないのに周りの従魔使いも不思議がっていたんだよ。まさか、従魔に面倒を見させていた何て……」
翻訳係をしている従魔使いは、従魔達の話を聞いて怒りを露わにそう口にした。
従魔使いによって、従魔となった魔物達は家族も同然の存在だ。
家族同士、従魔が従魔を気遣ったり多少なりとも面倒を見る事がある。
しかし、全てを任せる事は従魔使いの規則に反している。
「落ち着け、今はこいつらの情報を聞き出すのが大切だ」
「……はい」
ギルドマスターの言葉に従魔使いは、怒りを鎮めて話し合いを続けた。
話し合いは夕暮れ時まで続き、従魔達はその日ギルドに泊る事になった。
「……ゴブリン生きてて良かったな」
泊る部屋に移動して来た従魔達、スケルトンの従魔がそう口にすると周りの従魔達も安心した顔で「よかった」と呟いた。
「あいつが野垂れ死ぬ何て事は無いと思ってたが、まさか数日の間に新しい主を見つけるなんてな……」
「あいつの知識と技術は凄いからな、新しい主もそこに惹かれたんだろう」
従魔達は、ゴブリンの凄さを知っている。
だから、新しい主を見つけて楽しくやっている事に安心した。
そしてもう二度と、自分達と〝家族〟になれないと理解した。
嫌な主だが、問題が解決した後戻って来る可能性も考えていた。
しかし、既に新しい主を見つけたという事は、その主が手放すまでゴブリンは別の従魔使いの従魔。
「なんか心配してた気持ちが、全部悲しい気持ちになった気分だよ……」
一匹の従魔がそう口にすると、従魔達は涙を流して悲しい気持ちのまま、その日は眠りについた。
翌日、従魔達は主の元に戻ろうとギルドを出ようとした。
「えっ、お前達が何でここに居るんだ?」
鉄の鎧に身を包んでは居るが、その声に従魔達は気が付いた。
自分達とは、もう二度と〝家族〟に戻れない自分達の主から追放されたゴブリンだと、気づかされた。
「~!」
「ちょっ、ど、どうしたんだよ。お前ら!?」
従魔達は、ゴブリンに近づき一斉に泣き出した。
その光景に、まだ朝早く冒険者が少ないとは言え、徐々に人が集まって来た。
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