第14話 従魔達は頑張る・1《別視点:元従魔仲間達》
レイナの指示により、速度の速い者達は翌朝、バレない様に主達の下から離れて王都に向かった。
「で、どうするよ? 王都まで、走りっぱなしはきついぞ? 戦闘行為も禁止だし、なるべく魔物からも逃げないといけないだろ?」
ウルフの従魔がそう言うと、他の従魔達も「どうする」「どうする」と、走りながら考えた。
その結果、2つの班に分けて昼夜ずっと走り続けるようにした。
「しかし、主も馬鹿だよな。ゴブリンを捨てるなんて、真面な人間なら絶対にしないだろ?」
走りながら、夜組の従魔が主の行いについてそう自分の考えを言った。
その言葉に対して、同じく夜組の従魔が発言した。
「まあ、主はゴブリンの事を見て居なかったからな。自分の従魔の世話をさせてやってる使えない従魔、とでも思っていたんじゃないか?」
「それは、あるな。あの主、同じパーティーの女に入れ込んでて俺達下位の従魔の事、殆ど見てなかったもんな。そう言えば、あの女がゴブリンの事汚いって言ってるの聞いた事が有るが、それで追い出したんじゃないか?」
主が入れ込んでる女とは、少し前に主達のパーティーに新しく加入した回復職の冒険者の事だ。
見た目は、ピンクの髪色におっとりしていて、体の発育も良く主以外のメンバーからも気に入られていた。
「あ~、それあるな。主ならやりかねんだろう……」
そう反応する従魔達、主がゴブリンを追放した真の理由は知らないが。
その理由が打倒だろうと、従魔達は全員が思った。
そんなこんなで、従魔達は三日三晩交代して走り続け、ようやく自分達の拠点がある王都へと戻って来た。
10体近くの魔物の群れに、王都の門兵や出入りしていた者達は驚いたが。
その魔物達が全員従魔だと気付き、落ち着いた。
「んっ? なんだこの従魔?」
そこに、門兵の中でリーダー格の男リカルドが休憩室から出て来た。
ウルフの従魔は、その男が偉い者と知っていたので、レイナから預かっていた手紙を渡した。
「これは、竜姫の字だな……」
リカルドは、見た事のある文字に誰が差出人か気が付いて、その手紙を読み始めた。
そしてその手紙を読み終えたリカルドは、兵士に門の事を頼み従魔達を連れて冒険者ギルドへと向かった。
「お前らは、ゴブリンの事を嫌ってないって認識で良いのか?」
道中、リカルドからそう聞かれた従魔達は頷いた。
そもそも、ゴブリンの事を嫌う従魔は居なかったと、この場に居る従魔達は思った。
一番最初の従魔で、あの酷いランクシステムの最下位に居ながら、努力を惜しまない姿勢。
更に、自分達の身の世話までしてくれていたゴブリンを、下に見た事は無い。
この場にいる従魔達は、そうリカルドへと目線で送った。
「成程な、あいつも最悪って環境では無かったんだな。まあ、今の方が良い環境だろうが」
リカルドの言葉に、従魔達はこの男がゴブリンの今を知っていると気が付いて、驚き歩みを止めた。
その行動にリカルドは何かを察し、従魔達に「ギルドに行ったら、教えて貰える」と言い、従魔達は大人しくついて行った。
「エレナ、居るか」
ギルドに着くと、リカルドは入口から受付嬢の名前を呼んだ。
呼ばれた受付嬢は、自分が担当していた冒険者を他の受付嬢に頼み、入口までやって来た。
「どうしたんですか、リカルドさん?」
「あの件のお客さんを連れて来たんだよ」
リカルドはそう言って、ギルドの建物の外にいる従魔達を教えた。
エレナは従魔達の姿に一瞬驚いたが直ぐに平静を保ち、リカルドから従魔達を預かりギルドの建物の中へと入って行った。
そして、従魔達はとある一室に入れられ待たされる事になった。
「なあ、さっきの男がゴブリンの事を知ってそうだったけど、今王都に居るのかな?」
「どうだろうな、従魔の首輪が発見されたとかっていう可能性もあるだろうな。ゴブリンが逃走が上手くても、野生の魔物に囲まれたら難しいだろ?」
ゴブリンの事が気になる従魔の言葉に、別の従魔はそう告げた。
そんな従魔達が話し合っていると、部屋の扉が開き数人部屋の中に入って来た。
一人は、先程の受付嬢でもう二人の片一方は、ギルドの長だと従魔達は知っていた。
後一人の青年は、従魔使いのローブを着ている事から、自分達との意思の疎通をする為に連れて来たのだと、従魔達は判断した。
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