第12話 資金不足・2
「エレナさん、主はギルドの銀行にいくら入れてますか?」
「ギルドに登録してから、アイナちゃんが銀行を使った所は見た事無いわ」
「という事は、これが全財産ですね。主、ここは俺だけが依頼に行くのが最善です」
「だ、駄目だよ!」
そう言うが主は、頑なに俺だけを行かせたくないと言い張る。
しかし、俺はそんな主に対して、今の状況を説明した。
「主、今の主は疲労しています。その状態で外に行けば危険な目に合うのは、ほぼほぼ確定でしょう。しかし、お金もまた必要です。緊急時にお金が使えないとなると、そのまま悪い方向へ流されてしまいます」
「で、でも私だけ宿に居てゴブタ君だけ仕事に行かせるのは……それに、ゴブタ君だって一人じゃ危険だよ?」
「主、一応言っておきますが。これでも、3年間従魔としてやってきた身ですよ? 下位の冒険者依頼位なら、一人でも出来ますよ」
「そうよ。ゴブタ君は、こう見えてギルドでも相当評価が高い従魔なのよ? 扱いが酷くて、ギルド側が動こうか思っていたほどにね」
俺の言葉に、エレナさんがそう援護してくれた。
「って、エレナさん。俺って、ギルドから評価高かったんですか?」
「知らなかったの? 貴方、上位の冒険者やギルドからは優秀な従魔って認識されてるのよ? 人語も喋れて、本も読めて、雑用もこなせる。更に、知識も相当あって優秀な従魔だって、皆言ってるわよ? 偶に冒険者から魔物について聞かれる事無かったかしら?」
「……そう言えば、偶に聞かれる事ありましたね」
「上位の冒険者も態々大量の本の中から、目当ての魔物について調べるのは難しいのよ。でも、貴方は殆どの本を読んで頭の中に入れてるでしょ? それを知ってる一部の冒険者は、貴方に知恵を借りて冒険に役立ててたのよ」
エレナさんにそう言われた俺は、知らない内に冒険者を助けていたと知って驚いた。
「ご、ゴブタ君って本当に凄いんだね……」
「いや、これに関しては知りませんでしたよ。ただ相談に乗っていただけだと思っていたので……」
「まあ、そんなゴブタ君だからこそ、ギルド側も今回の事は重く見ているのよ」
そう締めくくったエレナさん、主もここまで言われて自分の思いだけで止めようとはしてこなかった。
結局、主は宿で休みその間俺はお金を稼ぎに行く事が決まった。
「ゴブタ君、絶対に絶対に戻って来てね? 戦闘もしても良いけど、死んじゃったりしたら駄目だよ?」
「はい、分かっていますよ。危険だと判断したら、即離脱して逃げます。逃走技術にはこの数日間で嫌という程、磨かれたので安心してください」
そう言って、主をギルドの外へと見送った。
それから俺は、ギルドの掲示板で良さげな依頼を探した。
常設依頼の採取系依頼は、勿論依頼を進行しながらやるつもりだ。
「エレナさん、この依頼受けても良いですか?」
そう言って渡したのは、慣れて来た冒険者がパーティーを組んで行う依頼。
ゴブリンパーティーの討伐依頼だ。
「〝ゴブリンパーティーの討伐〟ね。確かにゴブタ君の力なら大丈夫だけど、良いの? 同族よ?」
「構いませんよ。既に、このゴブリン達が冒険者を襲っています。という事は知能が低い普通の魔物です。ならば狩られる対象ですよ」
知能がある魔物は、まず人間を襲わない。
それは俺もそうだったが、その場で魔物のが数が多くても後から襲ってくる人間は数も力も自分達より上だ。
ならば、人間に対して友好的に接して、自分達は無害だと訴えるのが賢い選択だ。
現に、いくつか人間側にも認められた魔物の村等も存在している。
「分かったわ、それじゃ頑張って来てね。アイナちゃんを悲しませない様に気を付けるのよ」
「はい」
俺はそう返事をして、目撃情報のあった場所へと向かった。
その場所は、ちょっと開けた森の中で道中、売れる薬草等を見つけながら目的の場所へと辿り着いた。
「ギャッ、ギャッ」
「ギャ、ギャ」
「ギャッギャッギャ」
目的地に着いて辺りを探索すると、依頼の通り4匹の武器持ちのゴブリンが居た。
それぞれ、近接用の武器を身につけており、遠距離の武器を使う者は一匹も居なかった。
これなら、簡単だな。
「ギャッ……」
「ギャギャ!?」
「ギャッ!?」
そう思った俺は、道中拾っていた石を手に握り、長物を持っている一匹のゴブリンの頭部へと石をぶつけて気絶させた。
仲間がやられた事に、慌て始めたゴブリン達。
俺はそんな奴等を期の上から見下ろし、残りの3匹に対しても石を当てて気絶させた。
「気配消してたから楽に終わったな……」
辺りに他の魔物が居ないか確認して、ゴブリン達の所へと降りた俺はそう呟いた。
気絶しているゴブリン達を一匹ずつ息の根を止め、持っていた剥ぎ取りナイフで討伐部位である耳を剥ぎ取って行った。
討伐部位を回収した後、死んだ魔物をそのままにしておいたら後々面倒な事になる。
なので俺は、ギルドから依頼の報酬から天引きで〝火の魔石〟を買っていたので、それを使って火葬した。
「さてと、帰りも売れる素材を回収しながら帰るか」
そう言って俺は、来た道とは別の道で王都へと戻った。
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