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第11話 資金不足・1


 夕食後、風呂の時間が過ぎた後に風呂に入らせてもらった俺は、主と一緒の部屋に入った。

 流石に二部屋借りる事は、人気な宿なので出来ず従魔用の宿泊場もいっぱいだった。

 後からそれが分かって、ベルマさんも申し訳なさそうにしていた。

 なので、俺の分の宿代は半額となり俺は主と同じ部屋になった。

 寝具は従魔用の物を宿から貸して貰ったので、一緒の寝具に寝る事は無いのだが……


「本当に良いんですか主? 従魔と同じ部屋で」


「別に大丈夫だよ~」


 主は呑気にそう言いながら、ベッドに横になり寝る前の準備は既に終わっているので、直ぐに眠りについた。

 危機感とか無いのか、この主は……一応、人間の性別で言うと俺は男だぞ?


「まあ、主が良いなら良いか……」


 そう俺は色々と諦めて、自分用の寝具に横になった。

 翌日、昨日知った主の〝魔法が使えない〟を克服する為に、ギルドの訓練所へと訪れた。

 この場所は、ギルドの裏に作られていて冒険者登録している者なら、誰でも利用が出来る。

 しかし、殆どの冒険者は依頼を受けて外に出て行き、この場所を利用している者は少ない。

 今日だって俺と主以外誰も居なくて、練習するのには好都合だ。


「ゴブタ君、さっき借りてた本は何の本なの?」


「昨日も言いましたけど、俺は魔法が使えません。魔力の流れは分かりますが、魔法の基礎は自分には必要ないと勉強していなかったので、なので魔法を勉強する為の本を借りて来たんです」


 そう言って俺は、訓練所の脇にあるテーブルに10冊程の本をドンッと置いた。


「こ、これ全部、今から読むの?」


「そうですよ。ただ、全ページ読む訳では無いので、それほど多くは無いですよ」


「ほ、ほんとに?」


 怯える主は、そう言いながら本を手に取り、読む場所を指定しながら勉強を始めた。

 それから3時間程が経ち、覚えるべき所を読んだ主はテーブルにパタンッと倒れた。


「主、どうしたんですか?」


「ご、ゴブタ君の嘘つき~! 私、こんなに本読んだの生まれて初めてだよ!」


 バンバンとテーブルを叩きながら、主はそう訴えて来た。

 

「そんなに多かったですか? 結構、絞ったつもりでしたけど?」


「殆ど半分以上読んでたよ! 10冊の半分って5冊も、私一日で読んだ事ないもん!」


 若干涙を浮かべながら主は、テーブルに突っ伏した。

 それから俺は、荒れる主に「すみません」と謝罪をして背中をさすって落ち着かせた。


「それでは、主。先程、覚えた所を実践してみましょうか」


「ゴブタ君って、意外と鬼だよ……」


「何言ってるんですか、俺は元から鬼ですよ。種族が」


「……」


 俺の言葉にジト目で睨む主は、溜息をついて「よしっ」と気持ちを切り替えた。

 そして、本で覚えた通り魔力を持っている杖に集中させた。

 初めての魔法なので、上手く感覚が掴めない主に俺は「まだですよ」と言いながら、タイミングを合わせる補助をした。


「主、今です!」


「火の玉よ出ろ!」


 主は考えていた詠唱を叫び、訓練場に置いてある的に向かって魔法を放った。

 その魔法は上手く発動出来、数m離れた位置から放った魔法は綺麗に的に命中した。


「やった! やったよゴブタ君!」


「やりましたね主!」


 ピョンピョン跳ねて喜ぶ主に、俺は近寄り一緒に喜んだ。

 それから主は今の感覚を忘れない内に、何度か魔法を発動させた。

 10発程放ち、その内8発が成功、失敗した2回は魔力の溜め方が少し雑だったりしており、要練習が必要な感じだ。


「でも、良かったですね主。魔法が使えて」


「うん! これで、ゴブタ君に頼りっぱなしにならずに済むね!」


「はい、後は主がちゃんと戦えるかですね。戦う力を持っていても、戦う意思が無かったら意味は無いですから」


「うっ、そこはちゃんと頑張るよ。この前みたいにゴブタ君の戦闘を止めたりは、しないようにするね……」


「はい、どうしてもという時以外は、あんな事はしないで下さいね。普通に死にますので」


 その後、使っていた的の掃除をして、借りていた本を返す為に受付に向かった。

 まだ昼間なので、受付には殆ど並んでおらず、すんなりとエレナさんの受付に並ぶ事が出来た。


「あら、アイナちゃん達もう練習は良いのかしら?」


「はい! ちゃんと、魔法使えるようになりました!」


「えっ、もう使えるようになったの?」


 主の言葉に、驚くエレナさん。


「はい、まだ失敗はしますけど8割は成功してました」


「凄いわね。もしかして、アイナちゃんって凄い才能を持ってるんじゃないの? ああ、でも従魔魔法に属性魔法が使える時点で天才の域よね」


 主が凄い才能を持っていると言ったエレナさんは、俺の方を見て従魔魔法も使えるのを思い出しそう言った。

 主は、自分の事を褒められていると分かったのか、嬉しそうな顔をしている。

 まあ、俺も自分の主が褒められているので嬉しいと感じていた。


「アイナちゃん達、今日はこのまま依頼に行くのかしら?」


 エレナさんのその質問に主は「どうするんだっけ?」と言いながら、俺の方を振り向いた。

 意見を聞いてくれるのは嬉しいが、主には自分の意見もちゃんと言って欲しいな。


「……そうですね。今日は主も初めての魔法を使って、魔力をかなり消耗しています。今日は、このまま依頼をお休みにしようかと思うのですが、金銭面の事を考えるのでしたら俺だけ外に依頼を受けに行くのも良いと思いますよ」


 少し考えて俺は、主とエレナさんに向かってそう言った。

 エレナさんも主が疲れている事に気が付いているので、外に連れて行くと言えば止めるだろうと考えて、俺はそう言った。


「わ、私そんなに疲れてないよ? お、お金はちょっと心配だけどゴブタ君にだけ任せるのは、主として失格だよ」


「主、別にそこは普通の従魔使いでしたら普通ですよ」


「そうね。従魔が従魔使いの代わりに依頼を受けるのは、別に普通よアイナちゃん」


「で、でも……」


 渋る主に俺は、今の貯金を聞いた。

 すると、主はゆっくりとお金が入っている麻袋を取り出した。 

 そこには、銀貨と銅貨が数枚入っているだけだった。



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