第10話 ゴブリンが追放された日《別視点:元従魔仲間達》
時は遡り、ゴブタが従魔契約を解かれた日。
ゴブタと同じく、【聖の戦士】の従魔使いに仕えている従魔の一匹が異変に気が付いた。
「なあ、ゴブリン居なくね?」
夕暮れ時、いつもなら自分達の状態を確認するゴブリンの姿に見えない事に、ウルフの従魔がそう仲間に話しかけた。
「確かに、そう言えば朝から姿見なかったな……また主に雑用をやらされてると思ってたけど、この時間に居ないのはおかしくないか?」
「だよな、だってゴブリンが俺達の世話をしてた事くらいは、あの主も理解してるだろ?」
馬鹿にするような目で、自分達の主の方を見る従魔達。
実を言うと【聖の戦士】の従魔使いに仕えている従魔達、ウルフやオーガ、ワイバーン達は主の事を良く思っていない。
その理由は、主の性格が〝強い奴のがカッコイイ〟という単純な性格で、自分が使役している従魔にランク付けをしている。
ランク付けは従魔を増やす事に変動して行き、今話し合っている従魔達はランクを落とされて行った者達だ。
「そう言えば、僕。ゴブリン君の悲鳴を朝聞いたよ。その時、主の声も聞こえて、無能なゴブリンはいらないって……それで、その時にゴブリン君の契約も破棄してたのも見えたんだ……本当は皆にも言おうと思ったんだけど、怖くて……」
プルプルと震えながら、まだ幼いワイバーンの子はそう仲間達に告げた。
その言葉を聞いた従魔達は、口々に主の文句を言った。
「マジかよ。あの主、ゴブリンを捨てたのかよ」
「ゴブリンが無能って、あの主何を考えているんだ?」
「それに外で従魔の契約を破棄って、確かギルドの違反行為だった筈だよ? これがギルドに知られたら、あの主どうなるんだろ……」
下位ランクの従魔達が集まって、そんな相談をしている所に一人の女性が近づいて行った。
その女性は、人型ではあるが人間ではない。
竜種の中で一番の戦闘能力を持つ炎竜。
彼女の名前は、レイナ。
【聖の戦士】の従魔使いが使役している従魔の中で、勿論最高ランクを付けられている従魔だ。
「ねぇ、貴方達さっきからゴブリンの姿が見えないけど、何か知ってるかしら?」
レイナの質問に対して、従魔達は言葉を失った。
というのも、ゴブリンはレイナのお気に入りの従魔だ。
何が彼女の気を引いたのか、従魔達も知らない。
しかし、彼女が【聖の戦士】の従魔使いに仕えている9割9分9厘がゴブリンの近くに居たいからという理由なのは、ゴブリン以外の従魔達は知っている。
「えっ、いやあの……」
「俺達もよく……」
彼女の怒りに触れたくない、その一心で従魔達は口を揃えて知らない振りをしようとした。
しかし、ここで最年少でありゴブリンの追放劇を見た幼きワイバーンの子が、口に出してしまった。
「ゴブリン君、主に従魔契約を破棄されて捨てられたの」
「「あッ」」
「……」
幼きワイバーンの子が口にした言葉に、従魔達は〝終わった〟と思いレイナの顔を確認したくない、そう思い逃げだそうとした。
しかし、その場に居た従魔達は全員、一ミリも動く事が出来なかった。
「へぇぇぇ、その話詳しく聞かせてくれないかしら?」
レイナの出す高圧力の威圧により、従魔達は抑えられ逃げだす事が出来なかった。
従魔達は、逃げ出す事を諦めレイナに対して、ゴブリンが消えた理由を伝えた。
「成程ね。それで朝から姿も魔力も感じ取れなかったわけね。ゴブリン、気配を消すのが上手いから邪魔にならないように、隠れているとばっかり思ってたけど、あの馬鹿な主に追い出されていたのね……」
レイナはそう口にすると、無表情になり楽しそうにパーティーの仲間と談笑する主の方を向いた。
一瞬、強い殺気を送られた主は身震いをした。
しかし、再び談笑を始める主に自分が危険な事をした自覚がないようだと、従魔達は思った。
更に従魔達は、主に対して殺気を送り反動を受けている筈のレイナが未だ無表情を貫いている。
「ゴブリンの事だから、野生の魔物と手を組むことは無い筈ね。だとすれば、魔物や人から逃げる生活をしてる可能性が高いわね」
無表情のままゴブリンの行動を考えるレイナの姿に、従魔達はこの場を去って良いのか分からないまま、レイナの独り言は続いた。
その日の夜、レイナの指示により下位ランクの従魔達は、ゴブリンの捜索及びギルドへの報告をするように命じられた。
下位ランクの従魔が居なくなったところで、あの主が気づく筈が無いと踏んでの計画だ。
「確かに気づく事は無いと思いますけど、俺達はレイナさんやゴブリンみたいに人の言葉を発せられませんよ」
「それなら大丈夫よ。報告隊には、私が書いた手紙を渡すから、それを王都の門兵に見せればいいわよ」
レイナはそう言って、下位ランクの従魔達を使い、ゴブリンの為に動いた。
そして彼女自身もゴブリンを危険な目に合わせて、主の破滅への計画へと動き始めた。
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