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異世界日本連邦  作者: YF-23
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第2話

 


 当初、日本政府もとい防衛庁は新海州の防衛に関してあまり力を入れていなかった。

 人口が殆どいなかった1970年代後半に防衛庁が新海州に置いていたのは陸上自衛隊第1師団から抽出した人員約350名の1個警備隊、海空自衛隊は無しであったのはともかく、人口が増え100万人を超えた1980年代前半でも陸上自衛隊は人員3000名程の1個混成団であり、海上自衛隊は護衛艦3隻からなる1個地方隊、空自は1個戦闘飛行隊のみであり、明らかに人口と防衛力が釣り合っていなかった。


 防衛庁としては島内に敵対勢力が無く、敵対国家も確認されないからというのが表向きな理由だが、もし門が消えてしまったら派遣した部隊が消失するのであまり大部隊を派遣したく無いという考えがあったのは容易に想像が付くだろう。

 そんな防衛庁の思惑も容易に想像がついた各国政府だが、確かに近隣に敵対勢力が無い現状では大部隊の配備は必要無いので特段日本政府に対し増派の要請はしてなかった、この頃までは。


 この世界に国家がある事は早くから判明しており、日本政府は多数の国家と接触、国交を結んでいた。

 どうやらこの世界の技術レベルは地球世界と対して変わらないらしく、言葉も英語に似た言葉があったので交渉も比較的容易に進んだ。

 この世界の地理としては新海州から西に大陸があり、日本が接触したのはその大陸、ラードシア大陸の国家群であった。

 この世界で先進国と呼ばれている国家もラードシア大陸に集中しており、先進国7ヵ国のうち5ヵ国がラードシア大陸に位置している。

 そのラードシア大陸の最南端に位置し日本が最初に接触し国交を結んだ立憲連邦君主制がスフィアナ連邦、そのスフィアナ連邦とは国境を接していないが、北東にあるのが共和制のフォルトナ共和国、その北東に位置する立憲君主制のエリノア連合王国、そして複数の小国家群を挟んで北西に位置する帝政のガルディア帝国、更に小国家群を挟んで大陸の最北端に位置する帝政のルーシア帝国が大まかなラードシア大陸の地理であり、日本はその全てと国交を結んでおり、スフィアナ連邦やエリノア連合王国とは接触してから2年後には貿易が始まった程である。

 ちなみに同じガルディア帝国とルーシア帝国は同じ帝政であるが、ガルディア帝国は立憲君主制寄りの帝政であり、議会により国家運営されてるので立憲君主制とも言える体制であるのに対しルーシア帝国はガチガチの帝政国家であり、全てが皇帝の物であり選挙なんて物は存在しない。


 そんな感じで異世界国家との交流も始まったが、現在ラードシア大陸の情勢は地球で言う所の冷戦状態であった。

 ここで問題になるのが何で陣営が分かれてるかである。

 地球の冷戦は国家体制であったが、この世界の冷戦は種族の扱いである。

 実はこの世界には人間だけで無くエルフやドワーフ、獣人などの種族がおり、その数も少なくない。

 この世界人口に対して人間が占める割合は辛うじて半分と言えばどれ程のものか分かるであろう。


 最も、その種族の扱い以外にも国家体制や宗教なども複雑に絡んでるので地球世界の冷戦程、明確な線引きは出来ないが、主に3つの陣営に分かれている。

 1つはガルディア帝国やエリノア連合王国などの多種族融和+立憲君主制の国家からなる陣営、2つ目はルーシア帝国やフォルトナ共和国などの人種至上主義の国家からなる陣営、そして3つ目は明確な立場を表明していないスフィアナ連邦などの中立の陣営。

 最もスフィアナ連邦は明確な多種族融和+立憲君主制な国家なので1つ目の陣営に限りなく近いが、唯一どの国家とも国境を接していないので中立国である。

 そしてこれらの国々とその属国や影響下にある国々で分かれており、正直なところ冷戦というより第二次世界大戦前といった表現の方が正しい。


 つまるところこの世界の国際緊張度はかなり高いのである。

 そんな国際情勢を知った各国は自国民が多数居住している新海州の防衛を強化するように日本政府に要請もとい圧力を掛けた結果防衛庁も重い腰を上げ新海州の防衛力強化に乗り出した。


 そして他国からの圧力を受けた防衛庁の動きは早かった。

 前々から新海州政府からも防衛力強化の打診を受けていた事もあり、新基地建設の為の用地確保は順調に進み、1990年に陸上自衛隊は人員8000人規模の第19師団が新設された。

 海上自衛隊も港湾都市である瑞穂市に基地が設置され第6護衛隊群が新設されており、航空自衛隊も新たに2個戦闘飛行隊と1個警戒航空隊からなる第1混成航空団が新設され、後に第12航空団と改名された。

 ちなみに陸上自衛隊は史実では第15旅団までだが、この世界では千島列島に配備されている第16旅団と台湾に配備されている第17師団及び第18師団がおり、海上自衛隊も台湾の高雄に海上自衛隊の第5護衛隊群、航空自衛隊も台湾に第10航空団と第11航空団が配備されている。


 約6000人の被害者が出た阪神・淡路大震災が起きた1995年には新海州方面隊が新設され、更に州都新海市に新海州防衛局が設置された。

 これはただの地方防衛局では無く、陸海空三自衛隊の司令部機能を有する施設であり、もしも有事が発生した場合の現地司令部でもあった。

 別世界の有事における対応を東京の市ヶ谷にある防衛庁から行うという非現実性から設置された新海州防衛局だが、その要員は市ヶ谷の防衛庁から派遣されてるので有事の際には指揮命令系統が二重化するのでは?という危惧もあったが防衛庁は強行した。

 もしも門が閉じた場合を想定しての対応である事は言うまででも無い。


 当初は直ぐに消えてなくなると推測された門だが、1年経っても5年経っても10年経っても門は小笠原諸島西方100海里の地点に聳え立ち続けた。

 門の発見と別世界とのコンタクトから44年が経った2020年、新海州の人口は800万人を突破した。

 新海州から入ってくる資源やその他の多数の国家との貿易により日本のバブル景気は崩壊せずにソフトランディングする事に成功し、その後の日本の景気は安定成長を続けていた。

 そんな日本と同じように新海州開発に参加していた欧米各国の経済も安定しており、世界は平和であった。


 そんな地球世界とは違いラードシア大陸はもはや導火線に火のついた爆弾と化す程に緊張していた。

 逆にこの緊張状態が数十年間続いてきたので専門家の中には戦争など起こらないのでは?と楽観視する意見もあったが、各国が毎年のように軍拡競争をしてるのは日本政府を通じて各国も分かっていたので日本政府に対し更なる防衛力強化を要請しており、防衛省もそれに応えていた。


 2020年には陸上自衛隊は新海州方面隊隷下の第19師団に加え第20師団を新設し、第7地対艦ミサイル連隊を設置し地対空ミサイルを有する第10高射特科群も増強した。

 海上自衛隊は新たに航空基地を新設し、対潜哨戒機部隊を配備し、これまで旧式艦隊の集まりだった第6護衛隊群内の艦艇を次々と更新していった。

 航空自衛隊は陸自や海自と違い目に見える増強をしてないが、これまで全機『F-4J』戦闘機で構成される3個飛行隊を『F-15J』戦闘機部隊を2個飛行隊、『F-2』戦闘機を1個飛行隊に更新しており、目立たないが輸送機部隊も増強していた。


 そんなこんなで新海州の防衛力を強化していた日本だったが、2020年4月、ついに恐れていた事態が発生した。

 ラードシア大陸中央部においてエリノア連合王国とフォルトナ共和国が武力衝突したという報告が日本政府に届いたのだ。






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