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謎の占い師

 相手にすることはせずにシャルを連れて宿屋に向かう。性的な興奮で逸る気持ちを抑えてシャルの歩幅に合わせようとはするが、どうしても歩調は速いものになってしまう。


 必死で自制をしながらシャルを連れて歩き、宿屋の前で脚が止まる。

 開いている雰囲気はなく……扉の前に張り紙がしてあることに気がつく。


 耳まで真っ赤にして俯きながら俺に手を引かれていたシャルは俺の脚が止まったことを不思議に思ったのか顔をあげる。


 これから俺に全てを晒して捧げるのだという事実に対する羞恥に潤んだ瞳が俺を向く。


「え、えっと、つ、着きましたか?」

「……着いたが……これは」


 シャルは顔を真っ赤にしながら俺の見ている張り紙を見ようとして、俺を支えにしながら背伸びをする。


「…………臨時休業?」

「そうみたいだな。前の災害で店の一部が破損して、まだ建材が足りていないから……と」


 俺はその事実を前に、冷静ぶった表情を浮かべながら……内心ブチギレる。


 ッッッ!! シルガァァァァアア!! てめえふざけんじゃねえ!! 俺がどれだけこの時を楽しみに、人生の目標として頑張ってきたと思っているんだ!!

 シャルの肌を見たいし触りたいんだ!! 許せねえ!! シルガ、貴様のせいで!!


 いや、落ち着け、取り乱すなランドロス。

 シャルの手は俺の手を握ったままで気が離れたりしたわけではないので、別の宿に行けばいいだけだ。


 シャルの、俺の嫁との蜜月の時はまだ終わっていない。

 別の宿、そう別の宿にすればいいだけだ。


 金ならある。そうだ。

 金ならあるのだから、拒否されようと金で黙らせれば……。いや、しかしそういうところをシャルに見せたら印象が悪いか。


 揉めたりしたらそういう雰囲気ではなくなるだろうし、そもそもシャルはそういうのを好きじゃない筈だ。

 しかし、こんな小さな女の子を連れて性行為をするための宿をハシゴするのは流石に目撃されたらマズイ気がする。


 正直なところ俺がロリコンなのはもう否定のしようがない純然たる事実なので広まっても問題ない。

 むしろこんな幼い女の子とするために必死になっているのにロリコンじゃないと主張しても信じる奴はまずいないだろう。


 ……それに、ロリコンと広まってクウカとか先程の女性達のような人が寄ってこないなら俺にとって都合は悪くない。

 多分、俺が小さい女の子が好きと聞いても子供が寄ってくることはないだろう。というか普通に親が止める筈だ。


 だが……俺はまぁ妙な噂が立とうが一向に構わないがシャルはそうではなく気にするだろう。


 ……どうする? あまり立ち惚けているような時間はない。

 焦りを誤魔化すためにシャルの頭を軽く撫でる。亜人が多い場所だったら俺でも問題ない可能性の高い宿が多いか? いや、でもそこまで地理に詳しいわけではなく、特にそういう宿を探したりしたこともないので場所が分からない。


 疲れているシャルをあまりうろちょろとさせるわけにはいかないし……帰るか。うん。

 まぁカルアやクルルやネネとも会いたいしな。


「……仕方ないから今日は」


 と口にすると、シャルは「えっ」と口にして、長いまつ毛を揺らしながら残念そうにパチリパチリと瞬かせる。


「……そ、その……他のところ、いかないんですか?」


 シャルのその様子は明らかに落ち込んでいて、俺の意見に従う様子を見せてはいるが……なんというか、したそうである。可愛い。


 ちょんと甘えるように服を摘まれて、上目遣いで見つめられる。あまりこういう宿の前で立ち止まるのは良くないと思い少し離れながらシャルを見る。


「……意外と、積極的なんだな」

「えっ、あっ、ち、違いますっ! え、エッチじゃないですから、僕は」

「そういうところも可愛いと思うが」

「そ、それなら……え、エッチでもいいです」


 顔を真っ赤にしているシャルに見惚れ、それからどうにかシャルと行為が出来そうな場所を考える。


 一番手っ取り早いのはギルドの自室だろうか。今の時間ならあの階には誰もいないだろうし……しかし、低確率ながら三人が帰ってくる可能性やクウカが侵入してくる可能性がある。

 シャルに夢中になって抱きしめている姿を目撃されたら最悪である。


 宿屋に限らずボロボロの店は亜人を受け入れてくれることが多めではあるが、シャルの初体験をあまり汚いところではしたくない。


 シャルはお姫様に憧れていたりするのだから、やはりいいところの方が喜ぶだろう。


 などと考えていると、ふと先程の占い師の男のことを思い出す。確か亜人の差別とここらの周辺について詳しいと言っていた。

 あまりにも都合が良すぎるというか、こうなることが分かっていたかのような口ぶりだったが……。


 シャルもしたそうなので、情報を得に行く方がいいな。流石に自室でやることをやって他の人にバレたら目も当てられないし、そもそも自室にたどり着く前に見つかりそうだ。


 金ならあるんだし、多少ぼったくられても構わないか。それよりも何でもいいからシャルとやれる場所がほしいと思い、少し引き返して占い師のところに戻ると、言葉の通りまだ怪しげな風貌の男がそこにいた。


「ああ、また会いましたね」

「……あー、何で知っていたんだ?」

「宿の前に張り紙がしてあったので」

「いや、そうではなく……」


 何故、俺とシャルが性行為をしようとしていたことがバレていたのかということだ。

 俺がロリコンでロリを嫁にもらっているというのはそこまで広まっている話でもないだろうし、そもそも今まで手を出していないのに初めて挑もうとしたときにバレているのは妙である。


 俺が尋ねると、男は「ああ、なるほど」と口にする。


「実はですね。ある理由から門の前で貴方方を待っていたのですが、とても急いでいるご様子でしたから後日改めようとしたのですが、どうやらギルドに戻る様子でもなかったので妙に思いましてね。何か用事があるとしても普通なら奥方はギルドに置いていくでしょう? つまり奥方と何かをするつもりで、尚且つギルドの仲間内にもバレたくないこと、そして向かう先の方向からおおよそ見当はつきますね」

「……なるほど。ある理由?」

「ああ、後日でも構いませんよ。またギルドの方に尋ねさせていただきますので。これ、そのお望みの情報です」


 そう言って紙を手渡される。

 後日でいいなら早速今すぐに行こうと思ってシャルの方を見ると、シャルは顔から火が出ていそうなほど真っ赤になってショートしていた。


 ……どうやら、今から俺と性的な交わりをしようとしていたことが他の人にバレるのがあまりにも恥ずかしくて動きが停止してしまったようだ。


 …………これ、もしかして出来なくなった?

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