番外編13【正月特別編・堕落】
正月から彼らは堕落していた。
机の上にはみかんが置かれており、視線の先にはバラエティ番組がつけられている。そしてその四辺には男女が寝転がったり座っていたりする。
それもこれも、レイルが持ち出してきた魔導具コタツによるものである。
大学生になっても集まれるようにとそれぞれが近い大学へと進学したどころか、二人一組でルームシェアしようぜなどと言い出したレイル、アイラ、カグヤ、ロウの幼馴染四人組は忘年会をしていた。
焼肉屋でぐだぐだと肉を焼きながら喋り、騒いでいた。そのあとそれぞれの部屋に帰って寝て、起きてまた集まったのだ。
もともとレイルの部屋にはコタツ布団は出ていなかった。だがせっかくだからと出したところ予想以上にその魔性のこたつにとらわれてしまったのである。初詣行こうぜとか、初日の出とかそれらすべての計画がおじゃんである。
「あー、誰かアイス買ってこいよ」
「嫌よ。こんな寒い中でていくのー」
「俺に瞬間移動が使えたら……」
「レイルくん……ご褒美くれるなら」
そんな彼らのもとへ救世主とも呼べる者が訪れた。
「おーい、鍵開けっぱなしじゃねえか! 不用心な奴らだな。いつもきちんと閉めとけって……」
「レイル様ー! アイスクリームを手土産にお持ちいたしましたわ。もしよければ……」
大財閥の跡取り息子レオンとその双子の妹レオナがやってきた。
二人も四人同士よりは少し出会ったのは後だが、長い付き合いになる。
「げっ……なんだよこれ」
「入ってもよろしいですか?」
「おいレオナ、はしたないからやめとけって――」
双子の兄の制止も聞かず、レオナは四辺しかないコタツのレイルと同じ辺に割り込んだ。それを見てアイラも「あー、それありなの?」と顔色一つ変えずに割り込んだ。
「おいお前ら……俺としては役得だからやめろとは言わんが……狭くないか?」
「レイルくんと一緒の方があったかいよ?」
「それにお兄様の入るスペースを空ける必要もありましたしね」
「お、俺は入らないからな! お前らみたいにはならないからな!」
そう言ってコタツの影響の少ない部屋の隅に座り、壁に背を預けた。
「ところでレオンはお見合いとかの件、解決したのか?」
「父上が何度言ってもなかなかなあ…-レオナがお前に入れ込んでるせいで余計にな」
「おいレオナ言われてるぞ」
「お前に言ってんだよレイル!」
そのやりとりの間もレイルはコタツで寝転んでいる。
「好きな人と結ばれるのが幸せだよなーアイラ」
「うん。レイルくん」
そう言いながらレイルはむいたミカンを一つアイラの口に放り込む。その横からレオナがミカンを差し出す。レイルはそれをパクリと食べた後、レオナの口元にもミカンを差し出した。
外を見ると雪がチラついていた。
「げっ、雪かよ」
「洗濯物取り入れなきゃ」
「ちっ……俺もいくよ」
そう言ってカグヤとロウが渋々ながらコタツを抜け出した。
二人の部屋は隣である。普通、男女四人が部屋を分けるとなると男二人女二人になりそうなものを、この四人はレイルとアイラ、カグヤとロウに分けてしまった。そこに加えてカグヤとロウは既に籍を入れており、事実上の夫婦である。もはやルームシェアではなく同棲と言うべきだろう。
「お前らは、なんていうか相変わらずだな」
「人がそうそう変わってたまるか」
「三つ子の魂百までなんておっしゃるじゃありませんか」
「つーか俺たち何しにきたんだっけ」
「そうですわ! レイル様、初詣に参りませんか? 素敵な着物も用意いたしましたわ。是非きていただきたいのです」
レイルは隣にいる美少女二人を見て、彼女たちならさぞかし着物も似合うだろうと想像した。そしてその晴れ姿を見るための条件が自分が着物で初詣に向かうことならばそれもいいか、とコタツからのそりと抜け出した。
「あー、いくか」
むいたミカンの皮を片付けてコタツの電源を落とした。甘えて手を伸ばすアイラを引きずり出して両脇を抱えて立たせてやる。レオナには片手を差し出して跪いた。
「んー、私だけ扱いが雑ー」
「でもお前はそっちの方がいいんだろう?」
「まあね」
「まあ。アイラったら。私に甘えてくださってもよろしいのですよ」
「考えとく」
仲の良い三人を見て複雑な感情のレオンは一つ深いため息をつくのであった。




