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忘れていた夢
28歳の青年・悠人は、東京のIT企業で働く平凡なサラリーマンだった。
毎日同じ電車、同じオフィス、同じ会話。
心の奥では「このままでいいのか」と問い続けていたが、答えは出ないまま日々が過ぎていった。
ある日、通勤途中の駅で、古びたギターケースを抱えた老人に出会う。
ふとしたきっかけで話しかけると、老人はかつて世界を旅した音楽家だったという。
悠人はその話に心を揺さぶられ、忘れていた夢――高校時代に抱いていた「音楽で生きる」という想いが蘇る。
その夜、押し入れの奥から埃をかぶったギターを取り出した。
指は動かず、音も不格好だったが、心は確かに震えていた。
仕事の後、毎晩ギターを弾き、休日には路上ライブを始めた。
最初は誰も立ち止まらなかったが、少しずつ足を止める人が増え、SNSで動画が拡散されるようになる。
一年後、悠人は会社を辞め、音楽一本で生きる道を選んだ。
収入は不安定だが、心は満たされている。
あの老人に再会したとき、悠人は言った。
「あなたの話が僕の人生を変えました」
老人は微笑み、こう答えた。
「夢は、思い出すだけでなく、歩き出すことが大事なんだよ」




