夢の中の暗示
誰だろう.......。視界には殺風景で周りには濃い霧が立ちこめており、前を見るのもやっとな状態となっていた。
その中で僕の視線の先にはゆらゆらと靡く黒い人影のようなものが見えるのがわかった。
その人影は僕の何倍もの大きさがあり、その場に立ち止まったまま、いつ消えるかもわからないようなほどに微かにたなびきながらも僕は何故かしっかりとその人影を捉えることができた。
「ハァ.....ハァ.....」
その人影が現れてから数分が経つと何か僕の中に色々な感情が駆け巡るようなそんな奇妙な感覚に襲われた。
ただ、そこに立ち尽くしながらも異様な雰囲気を漂わせる人影への恐怖感と逃げたくてもどうにも体が動かないことへの焦りや動揺などをまず感じ取った。
ただ、それ以上に心の中にはなにか激しい怒りのようなものが沸々と湧きながらもその人影を見つめているとどこか
それに哀しみを覚えてもいた。
自分でもこの混沌とした複雑怪奇な感情がなぜ起こるのか
なぜ、怒りの中に哀しみさえも伴うのか。
全くわからない......どうすればいいんだ.......
「......ト.....」
少し遠くから微かに声が聞こえた。優しい声が....
「....ナト......ミナト......!」
その声は段々と近くに聞こえるようになり、導かれるようにして僕の視界はすっかり明るくなり、目の前にはマイが
立ち、僕のことを揺すっており、おそらく僕を起こそうとしていたのだろう。
「どうしたの?少しうなされてたけど」
「大丈夫.....少し悪い夢でも見たみたい」
「そっか。あと1時間ぐらいしたら朝ごはん食べに行くからミナトも着替えとか準備しときなよ」
ニコッと笑った後にマイは再び自分の荷物の整理などを始め、ケイとサクも慌ただしく準備を進めていた。
それにしても妙にハッキリとした夢だった.....
一体何だったんだろ........
そんな疑問を抱えながらも僕は寝ていたベッドから降り
自分の荷物の準備をするために少し勇み足で室内を歩いて行った。
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