第7話 見知らぬ少女
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「ちょ、マジふざけんな! あっち行け!」
通路の先で、一角兎に睨まれ後退る派手な見た目の女子生徒が見えた。
動物を扱うように、しっしっと追い払おうとしているが、
「シャアアアアア!!」
「ひっ!?」
モンスターが毛を逆立て威嚇すると、ビックリしたのか少女は尻餅をついてしまう。
「や、やだ……こ、こないで、こないでよぅ……」
さっきの強気な態度はどこへやら。
泣きそうな顔で、ビクビクと震えている。
俺は周囲の様子を窺う。
他の生徒はいない。
あの女子生徒は一人でここまで来たのだろうか?
それともクラスメイトとはぐれたか?
(……まさか別のクラスの生徒と遭遇するなんてな)
可能性は考えていた。
あのスピーカーの声――俺たちの担任を名乗るクマは、【ビリのクラスにはペナルティがある】と言っていた。
つまり、クラスが複数ある可能性を示唆していたのだ。
(……さて、どうする?)
他のクラスと関わるデメリットはあるか?
現在の情報だけで言うのなら、おそらくはほぼない。
強いて上げるなら、最下位に課せられるペナルティの存在だ。
現時点では内容は不明だが――たとえば生死に関わることなら、他クラスの生徒は敵同然と言っていい。
競争相手の戦力は少しでも減らしておくべきだが……。
現段階で最も驚異的なのはモンスターの存在だ。
内容不明のペナルティを気にして、ダンジョンから生還する為の戦力を減らすのは得策ではないだろう。
「シャアアアアアア!!」
ダンッ――と一角兎が地面を蹴った。
鋭い角を向け、少女に向かい突撃する。
「ひっ!?」
グサ――と、ギャルの身体が貫かれたかに見えた。
が、角が突き刺さったのは、真後ろの石壁だった。
その衝撃で石壁が崩れる。
すると、その先は道が広がっていた。
(……壁の後ろに通路が!?)
しかも、ちゃんとこの先に進めるようだ。
「う、うぅ……なんで、こんな……や、やだ……やだよぅ……誰か、たす、けてぇ……」
せめて逃げればいいものを……。
少女はただ泣いて、震えているだけだった。
しかしそのお陰で、一角兎の注意は彼女に向いている。
「――炎の矢」
焔を纏いし一矢をモンスターに放った。
突然の不意打ちに、一角兎は動くこともできず――
「っ!?」
その身体に炎の矢が突き刺さった。
ぐだり……と、一角兎は倒れると、光の粒子がふわっと上がり、その身体がゆっくりと消滅した。
『ドロップ:ホーンラビットの角』
『ドロップ:ホーンラビットの肉』
突然、システム音が頭に響く。
モンスターを倒したことで、アイテムを手に入れたらしい。
「無事か?」
確認するのを後回しにして、俺は俺は泣いている女の子に声を掛けた。
「ぁ……」
ギャルは呆然としていたが、次第に助かったことを理解したらしい。
倒れる少女に駆け寄り、手を差し出す。
「え……ぁ――」
「立てるか?」
「……ぁ……ぅ……っ――ぐすっ……こ、怖かった。
怖かったよぅ……!」
助かった安堵感からか、畏縮していた少女は大泣きした。
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。
(……これじゃ、直ぐに話を聞けそうにないな)
俺は彼女が落ち着くのを待つことにした。




