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第41話 変革

               ※




『2組の生徒が3階層に繋がる扉を発見しました。よって2組は第2階層攻略完了となります』


 意外なことに3位通過は2組だった。

 三枝が引き抜かれたことを知り、慌てて攻略を開始したのでは……と思っていたが、それにしては攻略が早過ぎる。

 だが放送があった以上、間違いはないのだろう。

 未だ攻略通知がこれで残り二クラス。


(……いつ三階層の攻略が始まるかもわからない。休める時に休んでおこう)


 俺は風呂に向かい身体の疲れを癒してから、直ぐに眠りについたのだった。




               ※




 2階層の攻略が終わった【2組】の教室では、大きな変革が起こっていた。


『今日からこのクラスは俺が支配する。逆らう奴は問答無用に殺す』


 そう口にしたのは羅刹修らせつしゅうという男だ。

 当然、こんな無茶苦茶な発言を受け入れる生徒はいない。

 頭のイかれた異常者の戯言だと、誰もが羅刹を嘲笑っていた。

 が、彼らは直ぐに理解することになった。

 既に自分たちに選択肢はないのだと。


「ぁ……ぁ……」


 羅刹に歯向かった生徒は皆、床に崩れ落ちている。

 大量に出血しており、治療しなければ間違いなく死ぬことになるだろう。

 致命傷を与えることに、羅刹は一切迷いがなかった。

 理性のない獣――いや、人を殺すことを楽しむ悪魔のように。


「他に……文句のある奴は?」


 現実を目の当たりにした今、笑い声を上げるものはいない。


「いないのか?」


 異様な威圧感を放ちながら、その男――羅刹修は周囲を見回す。

 その視線から逃れるように多くの者が顔を伏せる。

 声を上げれば自分も同じ目に合うのではないか?

 抗うことのできぬ恐怖に彼らは心を支配されていく。

 人間を人間とも思っていない。

 虫を殺すような感覚で人間を傷付ける彼の姿は――モンスター……いや担任を超えるほどの恐怖を生徒たちに与えていた。

 そんな中、


「きゃははははははははっ!」


 突如――支配者が君臨する世界に甲高い笑い声が響いた。


「最っ高~~~~~じゃん!」


 少女は羅刹を見ながら頬を恍惚に染めている。

 まるで運命の相手に出会った乙女のように。


「あんた最高に狂ってるよ! こんな簡単に人をぶっ殺せるなんてさ」


 同時に少女は理解する。

 羅刹は自分を遥かに上回る狂気であることを。


「アタシは柊友愛。

 あんたの支配を受け入れる。そのルールに従うよ」


 柊の目は憧憬に染まっていく。

 彼女だけではない。

 羅刹の暴力――限りなく純粋な狂気は、一部の者たちを虜にしていく。

 強者に従うということは、人間の根源にある生存本能なのだから。


「オレは無能を生かすつもりはねえ。

 力ある者が支配する――それが俺が定める、このクラスのルールだ。

 次の階層攻略の結果で、お前らの階級ランクを決める」


 絶対的支配者が君臨したことにより、無秩序であったクラスの制度が固まっていく。

「なんでもいい。

 力を、結果を見せてみろ。

 上位10人は支配階級――ポイントと自分以下の階級に対する命令権を与える」


 原始的ではあるが、自然の摂理でもある弱肉強食の世界を羅刹は生み出そうとしていた。


「真ん中の20人は一般階級――クラス内の最低限の権利をやる。

 だがそれ以下は人間としては扱ってもらえると思うなよ。

 一般階級以上は下位の生徒を好きに使え。

 嬲ろうが犯そうが何をしたって構わねえ。

 俺が許可する」


 それは事実上――下位生徒に対する奴隷宣告。

 2組の生徒は階層攻略を死ぬ気でこなす以外の道はなくなったのだ。


「ふふっ、ふふふふふふっ! あはははははっ!! もう最高、最高だよ! このクソみたいな世界に来て、初めて良かったと思ったかも」


 柊は愉悦を感じているか高らかに笑う。


「随分と余裕だな」

「結果を出せばいいんでしょ? 3階層を探索する上で、面白いアイディアがあるんだ。多分、羅刹も楽しんでくれると思うよ」

「……話してみろ」

「うん。

 その前にさ……引き抜きがあったこと、羅刹は知ってるよね?」

「ああ……1組か」


 柊の言葉を聞き、羅刹は微笑む。

 引き抜きの話は羅刹の耳に入っている。

 だからこそ、2階層の探索途中に――彼はあるゲームをしたのだ。

 その結果は既に出ている。


「そう。

 1組に三枝勇希が引き抜かれた。

 あいつはアタシが嬲って嬲って嬲りまくって、心も身体もぶっ壊してやるまで遊んでやるはずだったのに……!」


 おぞましい言葉を口にしながら、柊の表情が醜く歪む。

 その異常な執着心に羅刹は興味を示した。


「もし結果を出すことができたなら――それを相応の権利をお前に与えてやる。

 なんなら、三枝をぶっ壊す権利をくれてやったっていい」

「そっか……ふふっ、きゃははははははっ! 羅刹、あんたやっぱり最高だよ! 必ず結果は出す。

 だから、3階層の攻略の時に少しだけ人手を貸して」

「何に使う?」

「うん……それなんだけどさ。アタシには――」


 彼女の悪巧みを聞いた支配者の表情には、抑えきれない愉悦が浮かんでいた。

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