第40話 三枝の誓い
※
〇1組の攻略班メンバー
・第一班
1:九重勇希
2:宮真大翔
3:三枝勇希
4:此花彩華
5:野島 猛
・第二班
1:大弥 秀
2:久我直人
3:榎原 奏
4:白川 進志
5:堤 萌果
・第三班
1:上野和樹
2:七瀬奈々果
3:伊野瀬舞《 いのせまい》
4:源 達樹
5:丹村 泉
・第四班
1:但馬凛久
2:河嶋早苗
3:真壁 友
4:曽我部心
5:大田原竜
第五班
1:宮田 司
2:氷室 透
3:春日野颯太
4:間島 幸
※
『5組の生徒が3階層に繋がる扉を発見しました。
よって5組は第2階層攻略完了となります』
放送が響いたのは、会議を終えた後だった。
2階層の2位は5組だった。
これに関しては想定通りの結果だ。
残すは三クラス。
次の階層攻略は他のクラスが攻略を終えてからだろうか?
それとも……。
(……いや、今は考えても仕方ない。
先にやるべきことを済ませよう)
俺は部屋に戻りベッドに腰掛ける。
そして、スキルツリーを開いた。
画面にはマジックポイントとスキルポイントが500と表示されている。
この大量のポイントはオリジナルスキルの効果で得た物だ。
1組の方針では生徒ごとに役割を決め、それに応じて力を獲得していくことになっている。
だが、これだけポイントがあれば、気にする必要はないだろう。
全ての役割を自分でこなせるなら、それが理想なのだから。
(……最優先事項は生き抜くこと。
……そして勇希と三枝を守れるだけの力を得ることだ)
俺は自分の中の方針を改めて確認し……それを実行する為の力を獲得していった。
※
○ステータス
名前:宮真 大翔
年齢:15歳
レベル:18
体力:220/220
魔力:198/198
攻撃:181
速さ:169
守備:140
魔攻:178
魔防:138
・魔法:炎の矢
:治癒3
:雷撃3
:土爪3
:水撃3
:風刃3
:氷槍3
:閃光3
:炎爆2
:魔法解除1
:攻撃強化3
:魔法強化3
:速度強化3
:物理防御3
:魔法防御3
:炎耐性付与3
:水耐性付与3
:土耐性付与2
:氷耐性付与2
:風耐性付与2
:光耐性付与2
:闇耐性付与2
・オリジナルスキル:一匹狼1
・スキル:気配遮断4
:気配察知4
:自己回復3
:罠察知1
:格闘技能3
:急所攻撃3
:体力向上4
:魔力向上4
:攻撃向上3
:魔攻向上3
:速さ向上3
:守備向上4
:魔防向上3
:運向上3
:集中力向上3
:麻痺耐性1
※
獲得したスキルの確認を終えて、ステータス画面を閉じた――その時だった。
――コンコンコン。
控えめなノックの音が室内に響いた。
「宮真くん、いる?」
「……三枝?」
「うん。……ちょっと、いいかな?」
何か用事だろうか?
丁度いい。
俺も彼女に確認しておきたいことがあった。
ベッドから立ち上がり、扉を開く。
「どうした?」
「あの、さ……」
問い掛けると、三枝は俺の目を真っ直ぐに見つめた。
「まだ、ちゃんとお礼を言えてなかったから……」
「お礼?」
「このクラスに引き抜いてくれた――あたしを救うって約束を守ってくれた、そのお礼。
あ、あの時は気付いたら突然1組に転移してて、あたし動揺しちゃって……だから、ちゃんと言いたかったの」
「その為に、わざわざ部屋まで来たのか?」
「だ、ダメだった?」
「ダメではないが……」
律儀というか、なんというか。
「俺にはもう、感謝の気持ちは十分に伝わってるよ」
「え? どうして?」
「だって……そうじゃなかったら、あんな泣き笑いできないだろ?」
「っ……!?」
言葉はなくとも――引き抜きの後の、あの嬉し涙を見ているから。
俺にはもう、感謝の気持ちは十分に伝わっている
「だ、だだだとしても、あたし、本当に感謝してるから言葉にたかったの。
すごく嬉しかった。
ダンジョンの中で一人になっちゃって心細かったときも……宮真くんの言葉だから、自然と信じられたし……」
言って三枝は、心から安心しているような、柔和な笑みを見せた。
それは信頼の証なのだろう。
「宮真くんを待ってる間……何が起こるんだろうってずっと考えてたんだけど……まさか1組の生徒になるなんて、思いもしなかったよ」
「約束したからな。
お前を取り巻く環境を変えてやるって」
「だからって、普通は思わないんじゃない? 他のクラスから生徒をポイントで引き抜こうなんて」
「……できるんじゃないかと思っただけだ。
仮にできなくても、別の方法を考えていたからな」
「別の方法……?」
首を傾げる三枝だが、それについて話しても仕方ないだろう。
もう三枝は一組の生徒になれたのだから。
「それよりも三枝、俺との約束、忘れてないよな?」
「……うん。
絶対、忘れない。
あたしは、宮真くんと――自分自身に誓ったから」
俺と三枝がした約束。
それは――【強くなることを諦めない】こと。
「お前がどう変わっていくのか、見守らせてもらからな」
「そ、そう言われると、ちょっとだけプレッシャーだけど」
不安そうに、自信なさげに視線を下げる。
「少しずつでいい。
生きてる限り、自分との【戦い】はずっと続くんだ。
そんな中、途中で辛くて逃げてしまっても俺は責めたりしない」
なりたい自分になる難しさを、俺はわかっているつもりだから。
これは、口にはしなかったけど。
「ちょっ! 逃げる前提なの? あたし、諦めないって約束したばかりなんだけど?」
「気を張り過ぎるなって心構えの話だ。
それにお前は、常に強くあろうとしなくてもいい」
「どうして? 普段、弱いままじゃ……また、イジメられちゃうじゃん」
「そうならないように、お前をこのクラスに引き抜いた」
「っ……」
三枝の頬に熱が帯び、瞳が涙で濡れる。
「もし何かあったら俺を頼れ。
できる限りのことはする」
「あ、あまり優しくしないでよね。
これであたしが、今より弱くなっちゃったらどうするつもり?」
なんだか不満そうだが、少し言葉が足りなかったかもしれない。
「今のは弱いままでいろって意味で言ったんじゃないからな。
常に強くあろうとすることは目標にはなっても目的ではないだろ? お前が強くたりたい願った先にあるものはなんだ?」
「願った先……?」
「強くなりたいのは、今の自分を変えたいと思ったからじゃないのか?」
「ぁ……」
三枝は、見失っていたものを見つけたみたいに、パッと目を開いた。
「お前がなりたいのは、どんな自分だ?」
「……あたしは……――自分に負けない自分になりたい。
どんなに怖くて、辛くても――本当に大切な時だけは立ち迎えるような、そんな自分に」
「なら、もしそうなれたなら――お前は、俺との約束を果たしたってことになるな」
三枝が求めるのは心の強さか。
それは困難な道ではあるけど、きっといつか――。
「うん。
あたし、がんばるから。
……カッコ悪くて、情けないとこいっぱい見られると思うけど、それでもあたし、なりたい自分になってみせるよ!」
三枝はぎゅっと両手を握る。
どうやら気合は十分のようだ。
「ま、無理のない程度にな」
「うん! ……長々と話しちゃってごめん。
そろろそろ、行くから」
部屋を出て行こうとする三枝。
「いや、待ってくれ」
だが、俺は彼女を引き止めた。
まだ大切な話が終わっていない。
「どうかしたの?」
不思議そうに首を傾げる三枝に、
「――柊友愛」
「っ……」
俺がその名を告げると、彼女は恐怖するように身を震わせる。
心の傷を抉りたかったわけではないが……俺にはどうして確認しておきたいことがあった。
「教室での話……聞こえてたよね」
「ああ。
七瀬が柊の名を口にした時、お前の様子が明らかにおかしくなったから気になっていた。
……三枝、そいつがお前を……?」
その質問に三枝は頷く。
「私は彼女から逃げる為に……実家から離れた、この高校に入学したの」
つまり、柊とは前の学校も同じだったのか。
だとしたら、入学したばかりのクラスで、三枝が差別的な扱いに受けていたのにも納得がいく。
「なのに……柊さんはこの高校にいた……」
それは偶然ではないのだろう。
どんな手段を使ったのかはわからないが……柊は三枝の入学する高校を調べた。
その目的は高校でも、三枝をイジメの標的としたいが為……なのだろうか?
(……だとしたら、あまりにも異常だ)
どれだけの悪意で心が満たされているのか……。
「なぜ柊はお前にそこまで執着する?」
「……わからないよ。
でも、始まりは些細なことだったような気がする。
最初は小さな嫌がらせだったけど、それが次第にエスカレートして……やめてって言っても、柊さん、あたしをイジメるのが楽しいって……すごく怖い顔で笑って……」
過去に恐怖するように、三枝は震えている。
自分の身体を抱きしめながら。
そこは、本来なら俺が踏み込んでいい場所ではなかった。
「……すまなかった」
俺が確かめたかったことは、柊友愛がどんな人物なのかだ。
2組には、1組が三枝を引き抜いたという情報が入っている。
つまり――このクラスに三枝がいるということを、柊は知っているのだ。
(……柊が異常な執着心を三枝に持っているなら――)
引き抜きを行った1組に対して、何らかの攻撃的な行動を取ってくる可能性は高いだろう。
それを計算に入れた上で、3階層以降は行動を取る必要がありそうだ。
「ごめん……宮真くん。
あたし……自分に負けないように、がんばるって言ったばかりなのに……」
落ち着きを取り戻した三枝だが、その表情は暗い。
「少しずつでいい。さっき、そう言ったろ?」
「……うん」
数年もの間……受けてきたトラウマがそう簡単に癒えるはずがない。
三枝が本当の意味で過去を乗り越えるには……柊に打ち勝たなければならないのかもしれない。
「七瀬は柊と幼馴染と言っていたが、学校は違ったんだよな?」
「親が友達同士らしくて、それで親しくなったみたい」
今後、七瀬と柊が接触を持った際……余計なこと話してくれなければいいのだが……。
「三枝……嫌な話をさせて悪かった。
これで、聞きたかったことは全部確認できた。あとは部屋に戻ってゆっくり休んでくれ」
「……うん。宮真くん……あの、あたしのことで無茶しないでね」
「最初からそのつもりだ」
俺の返事を聞くと、三枝は困ったような笑みを浮かべた。
彼女を救うと約束した以上――俺には最低限の責任がある。
だから、自分にできる範囲でそれを果たそう。




