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第26話 クラス会議

               ※




 食堂は穏やかな空気に包まれていた。

 近くの席の生徒同士でコミュニケーションを取る生徒たち。

 こんな状況でも、クラス内でグループができつつあるのが人間らしい。

 特に大弥は男女問わず絶大な支持を受けていて、最大派閥を形成していた。

 疲れてるだろうに嫌な顔一つせずに他の生徒と話している大弥を見ていると、本気で感心する。

 人には適材適所、向き不向きがあるのは理解しているが、俺は大弥のようには一生懸けてもなれそうにない。


「みんな――食べながらでもいいから聞いてほしい」


 大弥は立ち上がると、全員の顔が見える位置に移動した。


「今の状況を不安に感じている人も多いだろうし、僕も正直全てを受け入れられてはいない。

 でも、今後についてしっかり話しておきたいんだ」

「今後っていうのは……ダンジョンの攻略について?」

「うん。それも考えなくちゃならないことだ。

 理不尽な話だけど、僕たちはダンジョンの攻略を強制されてしまっているからね」

「で、でも……モンスターと戦うのは、やっぱり怖いよ……」


 ツインテールの女子生徒が泣きそうな声を上げた。

 これは当然の反応だろう。

 恐怖に打ち勝てる生徒がどれだけいるだろうか?

 全ての生徒が戦えるとは到底思えないが、ダンジョンの攻略をしなければ生きていくことすらできない。

 クラスの方針次第では、役立たずを切り捨てる可能性すらあるだろう。


「男子でも女子でも、戦いがどうしても怖いという人がいると思う。

 だから僕は、そういう生徒に戦いを強制しようとは思わない」


 大弥の発言は予想の範囲内だった。

 まだ出会ったばかりで本質を掴めたわけではないが、彼は独善的なタイプではない。

 少なくとも表面上は平和主義。

 誰とでも仲良く接して、クラス内の調和を取る理想的なリーダータイプと言えるだろう。

 これが大弥の本質なら、1組に所属できた生徒は運がいい。

 余程のことがない限りは、大弥はクラスメイトを見捨てたりはしないだろう。

 だが……誰にも裏の顔は存在するはずだ。


「でもよ~。

 ダンジョンを攻略しないことには、次のポイントは入らないだろ?」

「できれば戦いたくないけど……モンスターが怖いとか言ってる場合じゃないよね」


 女子生徒からも勇ましい声が上がった。

 こんな意見も出るあたり、生徒たちも冷静になれたようだ。


「勿論、攻略にも力を入れるけど、戦いたくない生徒にそれを強制してもいい結果は生まないと思うんだ」

「言いたいことはわかるけど、それって不公平じゃね?」

「確かにな。

 なんもしないんじゃ、ニートみたいなもんじゃん。働かざる者食うべからずだろ?」

「だったら、働いてもらおう!」 

「え? でも無理強いはしないって……」

「生徒それぞれに役割を持ってもらえばいいんだよ」

「どういうことだよ?」


 生徒たちの不満が疑問と興味に変わるのを見計らい、大弥は自分の考えを口にした。


「たとえば今日作った料理――これだって仕事の一つじゃないかな? ダンジョンで戦えなくても、料理が得意な人もいるかもしれない」


 なるほど。

 この世界の仕事は何もダンジョンを攻略するだけじゃない。

 大弥は戦えない生徒に道を示そうとしているようだ。


「それならわたしもできる!」

「大弥くんのアイディア、すごくいいと思う!」

「タウンの中でできる仕事って何があるかな?」


 仕事――自分の持つべき役割についての話が進む。

 何が必要か、どんなことをすべきか。

 話し合いは進み、男子生徒五人と女子生徒十人が、戦い以外の役割を持つことになった。


(……意外と残ったな)


 正直、探索班は十人残らないと思っていた。

 俺の想定よりは今のところ順調に話が進んでいる。


「ダンジョンの探索に志願してくれた25名に聞いてほしい!

 僕たちは教室にいる間、ステータスや魔法、スキルというものがあることを知ったよね。

 でも、実際にぼくらはまだその力を使っていない。

 戦いに関して経験値がないんだ。だから――実際にダンジョンの攻略を達成した九重さんから、色々な情報を聞ければと思ってる」


 名前を呼ばれて、勇希が立ちあがった。


「それじゃあ……まずは魔法やスキルの獲得方法について話すね」


 勇希は自分が知る限りの知識を伝えた。

 途中、5組の話題も出たが……共闘中の彼らがボス戦で消えたことは伏せていた。


「それと、ステータスの項目を見て欲しいんだけど……。

 オリジナルスキルを持っている人っているかな?」


 続けて勇希が聞いた。

 だが、それに反応を示した者はいない。

 俺も除けば此花もオリジナルスキルを獲得しているが、他の生徒に教えるつもりはないようだ。


「いないみたいだね」

「九重さん、オリジナルスキルっていうのは?」


 勇希は、扇原の力について簡単に説明した。

 すると食堂にざわめきが生まれた。


「……そんな強力な力が……」

「5組が1位通過なのも頷けるな」

「でも、5組の扇原って奴とは協力関係なんだよね?」

「1階層は協力してたよ。今後も協力関係を維持できればいいんだけど……」

「そうだね。少なくとも敵対する理由はないと思う」


 1組は他のクラスと協力できれば……という方針で話が進んでいた。

 利益を得る為の協力なら構わない。

 だが、能天気に他者を信用するのは危険だ。

 またボス戦で裏切られでもしたら、今度こそ死ぬことになるだろう。


「それと、獲得できる魔法やスキルも個人差があるみたいなの」

「個人で獲得できる力が違うってことかい?」

「うん。

 だから気になる力があったら、みんなに情報を共有してほしいの。

 同じ魔法やスキルばかりを獲得するより役割を決めた方が戦いやすくなると思う。

 具体的には攻撃、補助、回復の三役に分けて――」


 勇希がレクチャーを続ける。

 そんな中、


「九重さん、質問がある」

「何かな?」

「鍛冶ってスキルがあるんだけど、こういうのも補助スキルになるのかな?」


 恰幅がよく優しそうな男子生徒が口を開いた。


「鍛冶じゃないけど、ミャーには装備生成っていうスキルがあるよ」


 続けて自らを【ミャー】と呼ぶ女子生徒が質問した。

 二つとも俺が獲得できないスキルだ。


「二人とも効果を聞いてもいいかな?」


 勇希が説明を求めた。

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