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エリクサーの泉の水を飲んで育った村人  作者: ぷにちゃん
第二章 世界の異変と魔女の村
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19:ルピカのお仕置きタイム

 呪いの件から翌日になり――シーラとピアは、怒り心頭になったルピカに正座をさせられていた。

 食堂のすみで正座をする二人は、足がプルプル震えている。


 その前で仁王立ちしているルピカは、にっこり微笑んでいる。


「わたくしがどれほど心配したか、わかりますか? 二人とも、あまりにも短絡的ではありませんか?」

「「は、はい……っ」」


 びくっと体を許しながらも、シーラとピアは素直に返事をする。

 ちなみに、アルフ、クラースは普段は温厚なルピカの姿を若干恐ろしいと思いながら無言で朝食をとっている。

 その横ではマギが苦笑しながら、ルピカの様子を見ている。


「確かにお二人は、わたくしたちとは比べられないほど強いです。けれど、それでも心配はするんですよ」

「ご、ごめんなさいルピカ……」

「私も、一応は謝るわよ!」


 ピアとしては、知り合った自分がなぜここまで言われないといけないのか……という心境だろうか。

 けれど、誰かに心配されることなんてなかったので、少しだけ嬉しいと思ってしまったり。


 ルピカはぴっと指を立てて、順番に二人がどれだけの人に心配をかけたのかを告げる。


「ここへ来る道中で出会った、シャクア様。それから、山の守り神様。もちろん、この村の長であるマギ様も。これだけでもう、三人ですね」

「うぅ、そうだ……ね……」

「ハク様、シルフ様、精霊たちだってシーラの心配をしていましたよ?」


 これだけでも、ルピカの片手分の指がすべて立ってしまった。


「パルだって、心配していました。もちろん、アルフとクラースも。あとは、わたくしです」


 どんどん人数が増えて、これで九人になってしまった。

 両手の指すべてが立たなくてよかったと安堵するべきなのか、それとも無条件降伏のごとく謝ってしまった方がいいのか。

 シーラがそう考え、謝ろうと決めたときに――さらに一人が追加された。


「それに、お互いが心配していましたよ。シーラのことは、ピア様が。ピア様のことは、シーラが」

「ピアが……」

「シーラが……」


 ルピカの話を聞き、確かにその通りだと二人は頷く。

 そして食堂にいる全員を見て、深々と頭を下げた。喧嘩していたことが嘘のように、二人の声がピッタリと重なった。


「「ごめんなさい!!」」


 もうしないと誓うように、シーラとピアは何度も謝罪の言葉を口にする。

 ルピカはふうと息をついて、わかってくれたのであればよかったと微笑む。


「これからは、一人で突っ走らないでくださいね。……わたくしの心臓がいくつあっても足りませんから……」

「うん、今度からはちゃんと何かするときに相談するよ!」

「わ、私だって告げるわよ! あまり心配させては、可哀相だからね!」


 シーラが高速で首を縦に振り、ピアはどこか嬉しそうに告げる。よほど心配されたことが嬉しかったのだろう。



 ひとまず落ち着いたところで、マギが口を開いた。


「今回のこと、シーラさんにはとても感謝しています。ピア様がずっと悩んでたことが、こんな風に解決されてしまうなんて」


 怒涛の展開で、ついていくのが大変だったのだとマギが言う。


「この村に入るときも、条件を付けてしまってごめんなさいね。光の精霊の情報をどこからか聞きつけて、たまに人がやってくるから……」

「そうだったんだ。それだと、心配だね」


 怪し人を入れることはできないというマギに、シーラは気分を害することなく「当然だよ」と笑顔を返す。


「自分たちを守ることは大切だもん。精霊のことを狙う人が、なおさら警戒しちゃうよね」

「ご理解いただけて、嬉しいです。ですが、シーラさんたちには姉がご迷惑をおかけし、私たちは救っていただいたかたちですから……感謝してもしきれませんね」

「いいよ、精霊を助けたいのは私の意思だし。自然がなければ、精霊たちも魔力を供給できなくなって苦しくなっちゃうから」


 日ごろからお世話になっている精霊のためにしたことでもあるし、何よりマリアに頼まれていたというのも大きい。

 そういえばまだ結果の報告をしていないなと思い、しかし植物が育ち始めているだろうから、マリアも呪いが解けたということを知るのもすぐだろう。


「だからお礼とかそういうのは別に大丈夫」


 正座したままシーラがそう告げると、マギは不服そうな表情になる。どうあがいても何かお礼をしないと気が済みませんと、顔に書いてあるようだ。


 シーラはそれならと、一つお願いをしてみることにした。


「実は、召喚石の欠片がついてるものを探してるんです。剣とか杖とか。今は力がなくて、元気のない子が多いと思うから……」


 ハクが宿っていた召喚石の欠片の杖のように、魔力が足りず眠っている精霊がいるかもしれない。そういう子を助けてあげると、シーラはハクと約束をしたのだ。

 なので、魔女の村に何かあれば教えてもらえたら嬉しい。


 マギは少し考える素振りを見せて、手を叩いた。


「そういえば、杖があるわ。それをシーラさんにあげるわね」

「やった、ありがとうございます!」


 駄目元だったけれど、言ってみるものだとシーラは思う。


「喜んでもらえるなら、嬉しいわ。すぐに取ってくるから、少し待っていてくださいね」

「わかりました」


 マギが食堂から出ていったのを見て、シーラはほっと息をつくのと同時に――足の痺れが限界に達して、ふにゃりと前につっぷした。


「うぁぁぁ、我慢してたけど……もう限界だよー!!」

「実は私も……っ!!」


 シーラが叫ぶと、隣で星座をしていたピアも足を崩してつっぷした。

 そんな二人を見て、ルピカはくすりと笑う。ここまで耐えてくれたのだから、これくらいで許してあげようと思ったが――そうは問屋が卸さない。


 今まで様子を見ていたクラースがシーラの下へやってきた。


「クラース?」


 自分の前でしゃがみこんだ姿を見て、もしかして倒れた自分を起こしにきてくれたのだろうかと思う。

 シーラが笑顔で手を差し出してクラースの手を取ろうとしたが、しかしクラースの手はシーラのことを無視して伸ばされてしまった。


「え? ――ふぎゃっ!? し、しびれるるっ!!」

「あれだけ心配かけたんだから、これくらいは甘んじて受けろ」

「うぐぐぐぁ~っ!」


 そう。クラースがシーラの足を指で思い切りつついたのだ。

 そのままぐりぐりと親指で足の裏を押されて、シーラが悶絶する。叫びながら「ごめんなさい」と懇願する。


「やめて、謝るからやめてえぇぇごめんなさいいいぃぃぃっ!!」

「まったく、心配かけさせやがって! アルフなんて、ずっと青い顔してたんだぞ」


 シーラがシェイドの力を借りて上空に上がってから、クラースはアルフを連れてシャクアを捜しにいった。

 そのとき、ずっとアルフはシーラを心配していたのだと告げられた。


「アルフさん……ごめんなさいぃ」


 痺れたままで、シーラはアルフにも謝罪を口にする。


「いいよ、無事だったから。本当に、無事でよかったよ……さすがに二人の間に割り込むことはできなかったからね」


 アルフも勇者ではあるが、さすがにシーラとピアが睨みあっているところに割って入っていくことはできなかった。


「とりあえず無事でなによりだよ。今日からは夜も安眠できそうだ」

「そ、それはなによりぃ……」


 やっと痺れが収まってきたシーラは、アルフの言葉に頷きながらどうにか立ち上がる。ピアにも手を差し伸べて、立ち上がらせた。


「……楽しいわね、シーラの仲間って。よかった、シーラが村の外でも楽しそうにしていて」

「うん。みんな最高の仲間だからね!」


 羨ましがるようなピアの言葉に、シーラも同意する。

 村の外へでて初めて出会ったのがクラースで、そこからルピカたちと知り合うことができたのだ。


 ――私はいい縁に恵まれたんだろうなぁ。


 そう思うと、いつまでも笑顔でいられるような気がした。

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百年ほどで呪いが風化するって言ってたから、一日で呪いが解けたのはおかしいんじゃ……?
[気になる点] 隣で星座をしていたピアも足を崩してつっぷした
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