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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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173/180

熊本県上益城郡。ホットドッグ屋のミックスドッグ。

 営業、しているんですよね?

 そのお店(?)を最初に見かけた時、タスッタさんの脳裏には真っ先にそんな疑問が浮かんだ。

 本来は、車での移動販売のお店、なのだと思う。

 いや、だったのだと、思う。

 しかしその車は、所々塗装がはげて赤さびが浮いていたりする、かなり年代物の代物だった。

 というか、廃車だろこれ、とか、思う。

 そんな廃車にしか見えない車の脇に、

「営業中」

 と書かれた看板が立てかけてあった。

 車自体は、到底、車としては機能していないように見えるが、お店としては機能しているらしい。

 近づいてよく見ると、車の内部に人がいる気配があり、どうやら看板の通り、営業はしているらしかった。

 車の上に、大きく「ホットドッグ」と描かれた看板が設えてあり、どうやらホットドッグを売るお店であるようだ。

 しかし。

 タスッタさんはその車をしげしげと眺める。

 初夏の青空を背景に、一見して廃車にしか見えない車がお店を存在している、という光景は。

 目が慣れてみると、実に絵になるのだ。

 青い空と、オレンジ色の錆がまだらに浮いている車両。

 なんか、映画の一シーン、みたい。

 などと、タスッタさんは思う。

 どうせ、時間に余裕もあることですし。

 タスッタさんは、すぐにそう決断する。


 さらに近づいてみると、まずパンを焼く香ばしい匂いに気づく。

 車の後部、ハッチバックの部分に、大きなアクリルのショーケースが置かれていた。

 そのショーケースの中には、調理前であるらしいホットドッグが並んでいる。

 最初は見本として置かれているのかと思ったが、そういうわけではないらしい。

 車の中に置いてあった黄色い、お店の車と同じくらい年季の入った厚紙に手書きで、

「ミックス

 ツナ

 ソーセージ……」

 などと書かれていて、それがこのお店のメニューらしい。

 ちなみに、メニューの最後の行は「ジュース」という文字列で締めくくられている。

 そのジュースの文字も、実物のジュースに半ば埋もれて、ようやく読めるような有様だった。

 そのメニューは、実物の缶ジュースが置かれたその上に、無造作に立てかけられていた。

 冷やしてもないんですか。

 と、タスッタさんは少し驚く。

 とことん、商売っ気とは無縁のお店のようだ。

 タスッタさんは車の中にいた人に声をかけ、ミックスとトマトジュースを注文する。

「はいよ」

 初老の店員さんは、愛想のない声でそう返事をしただけだった。

 どうやら、すぐに出てくるわけではなく、少し待たねばならないらしい。

 すぐそばにパイプ椅子がいくつか置かれていたので、タスッタさんはそこに腰掛けて待つことにする。


 十分くらい経っただろうか。

 店員さんから声をかけられ、タスッタさんは代金と引き換えに紙袋に入ったミックスとトマトジュースを受け取る。

 紙袋は、かなり熱い。

 再びパイプ椅子に腰掛けてから、その紙袋を開けると、その中にはビニール袋に入ったミックスが入っていた。

 ああ、これは。

 と、すぐにタスッタさんは悟る。

 ビニール袋、必要ですね。

 これほど大量のケチャップが使われているのなら、ビニール袋は必須。

 ビニール袋に包まれていないと、すぐに手がベタベタに汚れてしまうはずだ。

 タスッタさんは慎重な手振りで店名のロゴがプリントされたビニール袋を少しだけ剥がし、ホットドッグの露呈したにかぶりついた。

 熱々で、ケチャップがたっぷり。

 ええと、具は、ハムとウィンナー、チーズ、ゆで卵、かな。

 まさしく、ミックス。

 その名の通り、全部入りという感じだ。

 凝った作り方をしていないのか、なんというかありがちな、想像したままのホットドッグ的な味がする。

 新味や意外性こそないが、オーソドックスではあるんだろう。

 おいしくない、というわけではないですけど。

 と、タスッタさんは感じる。

 なんか、普通。

 たまにはこういうのもいいかなあ、といった印象だった。

 そもそも、こんな機会でもなければ、自分からホットドッグを求めるということもない気がする。

 前にホットドッグを食べたのは、さて、いつのことだったか。

 そもそもこのホットドッグは、極端にうまいというわけでも、気合いを入れて食べるような、そんな食べ物でもない。

 なんとなく売っているところを見かけたら、ふと気まぐれを起こして食べて見る、的な、やや非日常よりの、シチュエーションで食べる食べ物だった。

 ぬるいトマトジュースとホットドッグを交互に食べながら、タスッタさんは、そんなことを考える。

 そこへいくとこのお店は。

 そのシチュエーションを用意する、という前提の部分で、とてもよく演出されていますね、と。

 もっとも、それがお店の人の本意、期待するところであったのかどうか、その部分は定かではなかったが。

 タスッタさんがふと空を見上げると、抜けるような初夏の青色が広がっていた。



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