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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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165/180

東京都葛飾区。レストランのミックスフライセット。

「風が強い」

 そして、空気が生暖かい。

 と、タスッタさんは思う。

 もうそんな季節なんだな、と。

 それはともかく、この日のタスッタさんは半端な郊外に来ていた。

 住所からいえば一応まだ都内だが、私鉄沿線にありがちな、全般が小さくまとまっているような町で、明らかに地方都市のような覇気を欠いた空気がある。

 そしてざっと散策をしてみたところ、その私鉄に沿った一画の敷地が細長く確保されているエリアを確認できた。

「再開発、かな?」

 と、タスッタさんは推測する。

 こうした、時代の流れに取り残されたような場所では、ありがちなことでもあった。

 工事用のフェンスがずっと続く一画を歩いているとき、タスッタさんは、

「高架化」

 の文字が入ったポスターを見つけて、

「なるほど」

 と得心する。

 線路を高架化するのなら、線路沿いの土地が細長く確保されているのにも頷ける。

 鉄道を一本、まるごと高く持ち上げる工事というのは、長くかかるんでしょうね。

 他人事ながら、タスッタさんはそんな風に思う。

 何年か、あるいは十年以上はかかるような、そんな長期戦になるのではないか。

 凄いなあ。

 と、タスッタさんは素直に思う。


 駅前の商店街は、なんだか飲み屋さんがやたら目についた。

 当然、昼間は空いていないわけだが、普通の商店をさしおいてそうしたお店ばかりが目立つ町というのも、なかなか独特な雰囲気ではある。

 道行く人たちは、この人たちにとってはごく日常的な場所だからか、そんなことを気にとめている様子はないようだったが。

 なんだか、独特の雰囲気がある場所ですね。

 と、ざっと周辺を散策してみたタスッタさんは、そんな風に思う。

 実は、タスッタさんもかなり以前にこの辺に来たことがあるのだが、その時はたまたま深夜であったため、ほとんど人通りがないこの町の表情しか見ていない。

 明るい時間に改めて見てみると、かなり印象が違いますね。

 などと、タスッタさんは思った。

 少し大通りから外れると、曲がりくねった細い道が多く、時間をかけて散策するのには向いている場所なのかも知れない。

 そうして散策をしていても、民家がずっと並んでいるだけだから、散歩をする場所としてはあまり趣向をそそられるわけでもないのだが。

 道を歩いている人もほとんどが年齢高めで、ある意味ではこの周辺は、目下衰退中のこの国をそのまま体現しているのではないか。

 この日はたまたま時間が空いていたため、時間をかけて周辺を歩き回ってみた結果、タスッタさんはそんな風に様々なことを考える。

 その正否はともかく、そうして時間をかけて歩き回った結果、タスッタさんは空腹をおぼえた。

「なんか、がっつりと来るものを食べたいですねえ」

 カロリー度外視、というか、お腹にしっかりずしんと来るものが食べたい気分だった。

 とはいえ。

「昼間の時間に開いている、きちんとした食べ物屋さん、って」

 この周辺では、あまり多くはないような。

 駅前の商店街では、チェーン店展開をしているお店ばかりが目立っている。

 そして今のタスッタさんは、そうしたお店以外を求めたい気持ちが強かった。

「もうちょっと、歩いてみますか」

 幸い、この日のタスッタさんは他に予定がなく時間と体が空いていた。

 こういう日は、適当に歩いて足でよさそうなお店を見つけるのがいい。


「ん」

 大きな公園のすぐ近く、駅からそれなりに近いのだが、ひっそりと目につかない場所にそのお店はあった。

 そのまま通り過ぎてしまいそうな、目立たない、さりげないたたずまいだが、タスッタさん的には、なぜか気を引かれた。

「洋食屋さん、ですか」

 と、タスッタさんは小さく呟く。

 表の看板に表示されている値段は、ちょっとお高め。

 この気さくな店構えてこの値段設定、ということは、ちゃんとしたお店なんでしょうね。

 と、タスッタさんは予想をする。

 しっかりとした修行をしたオーナーシェフが開店し、多くはないがしっかりとした固定客がいるような。

 ちょっと入ってみますか。

 と、タスッタさんは思う。

 こういうお店に当たりが多いことを、タスッタさんは経験上理解していた。


 小さいけど、清潔で機能的。

 店内の印象は、そんな感じ。

 タスッタさんが店内に入ると、すぐに店員さんが対応して、

「空いている席、どこでもどうぞ」

 と勧めてくれた。

 このお店はテーブル席ばかりでカウンター席がない。

 それに、昼食の時間帯を少し外れているせいか、タスッタさん以外にお客さんは一組しかいなかった。

 タスッタさんは壁際の席を選んでそこに座ると、さっそくテーブル上に出ていたメニューを手に取る。

 そして、

「さて、どれにしますか」

 と、思案をはじめた。

 ポークジンジャー、なんかもよさそうですね。

 こういうお店では、豚の生姜焼きがどんな風になるのか。

 ちょっと興味を引かれたが、今のタスッタさんはもっとボリュームのある料理が食べたい気分だった。

 少し迷った末、タスッタさんはミックスフライのセットを選択する。

 単純に、一皿でいろいろな料理を楽しめると、そう思ったからだ。


 店員さんに声をかけて注文を通してから、十分ほど待たされた。

 もう一組のお客さんは、漏れ聞こえて来る会話の内容からすると、近くの銀行に勤めている方々であるらしい。

 比較的年配の女性、四人組だったが、勤め先でのよしなごとを楽しそうにしゃべっている。

 常連さん、なのかな。

 と、タスッタさんは想像をする。

 いい雰囲気のお店だ、とも思う。

 お客さんが他にいないから、静かだということはあるのだが。

 そうして出て来た料理をみて、タスッタさんは小さく驚いた。

「なんか、立ってる」

 フライ類が、直立していた。

 エビフライと、コロッケとメンチカツ、かな?

 つけ合わせのキャベツの千切りも、どーんと山盛りである。

 これは。

 と、タスッタさんは内心でたじろぐ。

 ボリュームのある料理を食べたかったけど、これはちょっとボリュームがありすぎるのでは?

 エビフライなど、長さが十センチを軽く越える立派なものだった。

 そこから類推するに、その他の揚げ物も素材を吟味して、しっかりと調理をされたものなのだろう。

 タスッタさんはまずスプーンを手に取り、コーンポタージュを一口啜る。

 既製品を温めただけではないですね、おそらく。

 なんか、タスッタさんがよく知るコーンポタージュよりも、味が濃い気がした。

 おそらくは、お店の中で作っている。

 そう、タスッタさんは推測する。

 なんか、目立たないけど凄いお店、なのかも。

 そんな風に思いながら、今度はナイフとフォークを手に取り平たい揚げ物を切り分けて口の中に運ぶ。

 じんわりと、熱いホワイトソースの味が口の中に広がる。

 熱くて甘くて、優しい味だった。

 クリームコロッケ、ですか。

 これ一品だけでも、かなりおいしい。

 一度キャベツを食べて口の中をリセットしてから、今度は俵型の揚げ物を切り分けてみた。

 それを割ると、中からじわっと透明な脂が染み出てくる。

 あ。

 と、タスッタさんは思う。

 これ、かなり上等なお肉を使っているのでは?

 なんか脂の見た目、質感からして、さらっとしていてかなり上質っぽい。

 切り分けた一片を口の中に入れてみる。

 と、予想したとおり、さらりとしてまったくくどさがない獣脂が口の中に広がる。

 なんか。

 と、タスッタさんは思う。

 揚げ物なのに、まったく重さを感じない。

 次にタスッタさんは、長いエビフライを切り分けて、口の中に入れる。

 プリップリ。

 このお皿にはデミグラスソースの他にタルタルソースもついていて、それをつけてから食べてみたわけだが。

 歯ごたえがあり、絶妙の揚げ加減だった。

 なにより、エビの味や風味が、ちゃんと衣の中に閉じ込められている。

 なんか、凄いな。

 と、タスッタさんは思う。

 一食分の値段としては、高めの値段設定に思えたのだが。

 だが、実際にこうして料理を食べてみると。

「これだけ上質の素材を、これだけきちんと調理していたら、この値段では安すぎるくらいではないのか」

 などと思ってしまう。

 なんか、満足感が凄いな。

 と、タスッタさんは思う。


 実際に食べ終わってみると、揚げ物もまったくくどさを感じず、さらっと完食することができた。

 かなりの満腹感を得て、なおかつ、胃にもたれていない状態。

 今のタスッタさんは、理想的な食後の時間を持っているといえる。

「なんか、凄いお店だったな」

 と、タスッタさんは思う。

 地味な外見や、こぢんまりとしたお店の中の印象とは裏腹に、料理はかなり本格的だった。

 こういうお店が、普通に存在している、営業を続けられているということは、意外に凄いことなのではないか。

 こういうちゃんとしたお店は、意外にどこでもありますからねえ。

 これまでの経験と照らし合わせて、タスッタさんはそんな風に思う。

 

 

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