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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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163/180

佐賀県神埼市。創作厨房のハンバーグランチセット。

 国道三十四号線沿いに、ぽつんと建っている奇妙な外観のお店を見つけた。

 車道に向けた大きな立て看板に、

「創作厨房」

 と書かれているから、飲食店であることは間違いない。

 そのはずだったが、外見的には普通の民家、それも、かなり古い造りの民家にしか見えないお店だった。

 瓦屋根の平屋造りで、入口のところに「営業中」と書かれた木製の表示がなければそのまま見過ごしてしまいそうな、ひっそりと控えめな印象のお店だった。

「今日は、ここに入ってみますか」

 タスッタさんは、誰にともなく小さく呟いて、そのお店の入口へと進んでいく。

 入口は「営業中」の表示から少し奥まった場所にあり、庭の中を少し歩く形となる。

 よく手入れをされた庭木を両側に見ながら進む形だった。

 白くて長い布の暖簾をかき分け、木戸を引いて中に入ると、少し薄暗い感じの店内を一望できる。

 そしてタスッタさんは即座に、

「あれ?」

 と、疑問に感じた。

「ここ、飲食店、ですよね?」

 と。

 店内には、いい具合に古びた道具類がいっぱい展示されていた。

 古い形の、円筒形のポストのオブジェとか、なぞのLEDディスプレイとか。

 アンティークショップ、でもあるのかな。

 と、タスッタさんは思う。

 そういう雑貨屋と同じ店舗内で飲食ができるお店というのも、まるでないというわけでもない。

 このお店も、そうした異業種兼業のお店なんでしょうか。

 などと疑問について解釈しているところに、店員さんがやって来て席まで案内してくれる。

 まだお昼までに少し間があったからか、店内は閑散としていてお客さんの姿は見当たらなかった。

 案内されたテーブル席に座り、タスッタさんはメニューを手に取る。

 その中身を確認している最中に、店員さんがお冷やを持ってきてくれた。

 さて、なんにしましょうかね。

 メニューのページをめくりながら、タスッタさんはいつものように考える。

 メニュー的には、思ったよりも普通の洋食屋さんっぽい。

 無難というか、特徴がない内容、というか。

 お昼のランチセットは、パスタかハンバーグが選べるらしかった。

 こういう感じですか。

 と、タスッタさんは心の中で納得をする。

 特徴はないけど、その分、なにを頼んでも大きく失敗することなさそうな気がした。

 どちらかといえば、パスタよりもハンバーグな気分でしょうかね。

 セットにすると、サラダ、ライス、スープ、ドリンクがついて千円を少し下回るくらいの値段設定だった。

 高すぎず安すぎず、それなりに順当な設定かな。

 などと思いつつ、タスッタさんは店員さんを呼んで料理を注文する。

 ドリンクは無難にコーヒーにして、ソースはいくつか選べるというので、少し考えてからバジルクリームを選択する。

 注文した後、タスッタさんはお冷やを口に含みながらさりげなく周囲を見渡した。

 テーブルと椅子は木製で、テーブルにはビニール製のクロスが掛かっている。

 店内の照明は若干暗めで、有線だろうか、ジャズっぽいBGMが流れていた。

 建物の外観も古めな印象があったが、内装もなんだか古い、時代がかった喫茶店めいた雰囲気が漂っている。

 落ち着くお店、ではあるんでしょうかね。

 と、タスッタさんは想像する。

 そうしてタスッタさんが料理が出てくるのを待つ間にも、次々に新しいお客さんが入ってきて、店内はすぐに満席に近い状態になった。

 郊外店にありがちなことに、基本的に車で来客する人が多いので、そうしてやって来るお客さんたちもほとんどは二人以上であることが多いようだ。

 ふむ。

 と、タスッタさんはまた、想像する。

 どうやら、繁盛しているお店のようですね。

 タスッタさんがお店に入った時、店内にお客さんの姿が見えなかったのは、たまたまだったようだ。

 時刻的に考えて、ちょうど開店したばかりだったのではないか。

 平日からこれだけお客さんが来るお店ならば、味的にもそんなに失望することはないのではないか、とも、タスッタさんは思う。


 最初に注文を通したタスッタさんの料理が、他のお客さんたちの料理に先んじて出て来た。

 タスッタさんはテーブルの上に置かれた料理をざっと一瞥する。

 ああ、ハンバーグがちょっと大きい。

 二百グラム、はないかな。

 百八十グラムくらい、でしょうか。

 俵型で、なかなか存在感があった。

 サラダの野菜は新鮮であるらしく、みずみずしく見えた。

 メニューに書かれていた情報によると、近くの大学で採れた物をそのまま使用しているらしい。

 タスッタさんはまずスプーンを手にしてコンソメスープを一口啜り、その後にナイフとフォークに持ち替えて鉄板皿の上で音を立てているハンバーグにナイフを入れる。

 ハンバーグが予想していたよりも柔らかく、フォークで刺しただけでそのまま崩れそうだったので、フォークでハンバーグの下を支えながらどうにか口の中に運ぶ。

 一口大に切り分けて熱々のそれを口の中に入れると、舌先に熱量を感じた後、バジルの香りが鼻から抜けていった。

 ん。

 と、タスッタさんは思う。

 このソースを選んだのは、正解でしたね。

 クリームソースとハンバーグの相性もよかった。

 ハンバーグは、柔らかくて熱くて、そして切り分けた時に予想していたよりは肉っぽい味が強い。

 かなり粗めの挽肉を使っていて、食感もよかった。

 手ごね、でしょうね。

 と、タスッタさんは予測する。

 タネの工程からお店の中で作ったもの、だろうなと。

 続いてサラダも、フォークで刺して口の中に入れてみた。

 新鮮なのはもちろんだったが、野菜自体の味が濃い、ような気がする。

 ふらりと気まぐれに入ってみたお店だったが、想定外においしい気がした。

 タスッタさんにしても、いい方向に裏切られる分には文句はない。

 これは。

 と、タスッタさんはさりげなく周囲を見渡しながら、そんな風に思う。

 込むはずですね。

 多分、地元の人には人気のお店なのだろう。

 それも納得の味だった。

 この程度の値段設定で、このグレードの料理が出てくれば、誰でも通いたくなる。

 そんなことを考えつつ、タスッタさんは黙々と食事を続ける。

 これほどお客さんが多いと、ゆっくり落ち着いて、という楽しみ方は出来なさそうだったが、それもまた仕方がないと納得が出来た。

 外見は、地味なお店、だったんですけどね。


 そのまま手を休めずに完食すると、ほどなくして店員さんがやって来て、空いた皿を下げてくれた。

 店内はほぼ満席。

 タスッタさんはそのまま、食後に出てくるはずのコーヒーを待つ。

 いいお店だな、と、素直にそう思えた。

 立地から見て、お店の存在をすでに知っている人しか来ないような気もしたが。

 それでも、平日の昼間からこれほど混雑しているということは、すでに存在がかなり知られているんだろうな。

 お客さんが多いからか、コーヒーはなかなか出てこない。

 店員さんも、忙しく店内を歩き回っていた。

 急ぐ予定もないし、少し気長に待ちますかね。

 などと、タスッタさんは考える。



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