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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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大阪府大阪市中央区。東南アジア料理店の中華粥、点心4種盛り、蒸し鶏サラダセットとタピオカミルクティー。

 心斎橋付近にある通称アメリカ村は、若者相手のファッションの町という印象が強いのだが、人が集まるところらしく飲食店も充実している。

 その日、タスッタさんが選んだのは、緑色と赤を基調にした内装の、台湾料理店だった。

 店名などはアルファベットで表記されていて、いわゆる「町の中華屋」的なイメージからはほど遠い。

 外観から、おしゃれ、というよりは、ポップな印象を受けた。

 場所柄にふさわしいデザインにしているんでしょうね。

 と、タスッタさんは、内心でそんな風に思う。

 場所が大阪だからか、串焼きやイカ焼きなどいかにも大阪風の食べ物を扱っているお店もあったが、そのほとんどはやっぱり店名をアルファベットで表示したりカラフルな内装にしていたりと、その手の雰囲気を尊重しているお店が多いような気がする。

 お店の見た目よりも、大事なのは料理の方なんですけど。

 タスッタさんは、そんな風にも思う。

 東京あたりならばともかく、この食い倒れの町では実質が伴わないお店は早々に撤退することを余儀なくされるような気もするので、こんな場所で長く続いているお店は、それなりの内実を伴っているんだろうな、とも思ったが。

 とにかく、タスッタさんにとっては、今から入るお店がちゃんとした料理を出すのかどうか、その一点だけが重要だった。


 まだ十一時を少し過ぎたくらいと時間が早いせいか、お店の中にはほとんどお客さんがいなかった。

 朝食のお客さんが引けて、本格的なランチタイムにはまだ少し間がある。

 そんな、谷間の時間帯なのだろう。

 店内は予想していたよりも狭く、こぢんまりとしている。

 壁面がいくつか赤く塗装されて、壁に台湾語のポスターが張ってある以外は、どこか懐かしさを感じるような雰囲気だった。

 あまり広くない、ということも大きいのだろうが、年季が入ったテーブルなどの様子が、どこか日本の甘味屋など、古いお店の雰囲気を彷彿とさせる。

 こういう感じかあ。

 と、タスッタさんは内心で得心し、店員さんに勧められるままに空いていたテーブル席へと座る。

 店員さんは一度奥に引っ込み、お冷やとメニューを持ってすぐにタスッタさんの席へと戻って来た。

「この時間ですと、モーニングのメニューは注文できません」

 お冷やをテーブルの上に置きながら、そんな内容をタスッタさんに告げた。

「ランチは、あるんですよね?」

 念のため、タスッタさんはそう確認をしておく。

「ランチなら、大丈夫です。

 こちらから選べます」

 店員さんはタスッタさんにランチ用のメニューを示して、またすぐにお店の奥へと戻っていった。

 タスッタさんはランチメニューを自分の目で検める。

 中華粥と点心四点セットが最小構成で、それに蒸し鶏サラダとか角煮とか唐揚げとかの追加メニューをつけると値段の方も徐々に高くなっていく、というのが、このお店のランチらしい。

 品数を絞った方が調理する側も無駄がないし、時間限定のメニューならばそれなりに合理的かなあ、などとタスッタさんは思う。

 さて、どこまで頼みましょうか。

 と、タスッタさんは少し考え込む。

 その結果、すぐに、

「そんなにお腹が減っているわけでもないし、ここは蒸し鶏のサラダまでに留めておきましょうかね」

 と結論する。

 それと、なにか飲み物を。

 こういうお店だから、中国茶がいいですかね。

 などと思いつつ、タスッタさんは今度はドリンク類のメニューを見る。

 ああ、お酒とかカクテルとかいっぱい。

 ドリンクメニューに目を通したタスッタさんは、すぐにそんな風に思った。

 需要があるからか、利益率が高いから。

 おそらくは、その両方でしょうね。

 などと軽く思いながら、タスッタさんはソフトドリンクの項目にざっと視線を走らせる。

 お馴染みのウーロン茶をはじめとして、芒果緑茶とか百香果紅茶とか、見慣れない文字列がずらずら並んでいる。

 漢字で表記するとなんだかわからないが、それぞれグレープフルーツジャスミンティーとパッションフルーツティーのことらしい。

 想像するに、ジュースとお茶類をブレンドして飲むような文化があるんでしょうね。

 などとタスッタさんは想像した。

 カクテルのお茶版、というか。

 いずれにせよ、それらジュースとお茶のハイブリッドは字面から見てもかなり甘そうに思えて、単体で飲むのならばともかく、食事のおともにはふさわしくないような気がする。

 食後のデザート代わりに飲むにしても、もう少し甘くなさそうなのがいいかな。

 などと考えつつメニューを読むタスッタさんの目線が、ある箇所で止まった。

「タピオカ、ですか」

 いかにも東南アジアっぽい名詞が出て来た。

 タスッタさん自身は、このタピオカというのを数えるほどしか味わったことがない。

 じゃあ、飲み物はこれで。

 と、タスッタさんは、その場で即決をする。


 まだほとんどお客さんが入っていないこともあって、タスッタさんが注文した品はすぐに出て来た。

 料理といっても中華粥と点心などは、完成して保温していたものを盛りつけて出すだけだろうし。

 などと、タスッタさんは思う。

 少ない手間ですぐにおいしい料理を提供できるのだから、便利な料理だと思う。

 お粥の器とせいろに入っている点心の四点盛り、それに蒸し鶏のサラダの組み合わせは、その意味で合理的に思えた。

 タスッタさんはレンゲを手にして、まずは中華粥を一口、啜ってみる。

 あ、深い。

 と、タスッタさんは思った。

 お米の甘味と、それに複数な海産物の出汁が、複雑に深く染みこんでいる。

 なにより、熱いお粥を冷ましながら嚥下すると、ただそれだけでじんわりと食道付近が暖かくなった。

 味も深いけど、それ以上にこの暖かさが、今日のような日には染みますね。

 そんなことを思いながら、タスッタさんは今度は点心の方に箸を伸ばす。

 小籠包とかシュウマイもあったのだが、まずはあまり見慣れない、もち米の団子を箸で摘まみ、そのまま口の中に入れる。

 もっちりとした食感の中に、ときおり適度に歯ごたえがあるものが混ざっていて、いいアクセントになっていた。

 これ、細切れにしたタケノコ、ですかね。

 もち米にも、ほのかに紹興酒やごま油などの香りがついていて、単体でもかなりおいしい。

 ただこれは、味よりも食感を楽しむための料理、なんでしょうね。

 と、タスッタさんは、そんなことを思う。

 次にお馴染みの料理、小籠包。

 箸で摘まんでレンゲの上に乗せ、その上で、箸先で皮に少し切れ目を入れると、レンゲの上に熱々の汁があふれてくる。

 タスッタさんは、それを啜る。

 あ、熱い。

 と、まず思った。

 それから、お肉の旨味がたっぷりと染みこんだ汁の旨味を感じる。

 これもまた、濃厚な味だった。

 お肉の旨味がぎゅっと濃縮されている、ように思う。

 ときおりお粥を啜りながら、タスッタさんは点心と蒸し鶏のサラダを食べ進める。

 他の料理が熱いものばかりだったので、冷たい蒸し鶏のサラダを合間に食べると、いい箸休めになった。

 というか、想像していたよりも、これは。

 と、タスッタさんは、そんな風に思う。

 体が、暖まりますねえ。


 ゆっくりと出て来た料理をすべてたいらげると、最後に頼んでいたタピオカミルクティーが出て来た。

 グラスに入ったミルクティーの中に、ほぼ透明なぴちぴちがかなりぎっしりと入っている。

 タピオカの粒は、想像していたよりもかなり大きかった。

 これは、飲み応えがありそうな。

 などと思いつつ、タスッタさんはグラスを手に取り、ストローを口に咥える。

 そのまま吸い込むと、大粒のタピオカが口の中に入ってくる。

 一度ストローから口を離して、タスッタさんは感触を確かめるように、大粒のタピオカを噛んでみた。

 予想外にしっかりとした弾力があり、歯を押し返してくる感覚を無視して、さらに噛みしめる。

 すると強い弾力を持つタピオカは、タスッタさんの歯の間で潰れるのだった。




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